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【認知症悪化を招く低栄養】食事が重要である本当の理由

高齢になると食が細くなるとよく聞きますが、年齢を重ねても1日に1,500kcalのエネルギーを摂る必要があります。 特に認知症の人はしっかりとエネルギーを摂らないと、活動する力が低下して「ぼんやりした状態」が改善していきません。
さらにエネルギー不足は低栄養となる可能性を高め、体が衰弱していきます。低栄養は意欲や気力も低下させ、認知症であれば症状改善に必要な運動する力も確保できなくなってしまいます。今回は低栄養を防ぐコツについて、お伝えしていきます。


認知症を改善するには低栄養を防ぎましょう

体に必要なエネルギーが不足した状態である「低栄養」は高齢者に多く、活動量や運動能力が低下していきます。 食べ物が豊富な時代に低栄養?と意外に感じるかもしれませんが、食べていても「量が少ない」「偏りがある」などで低栄養になることがあります。


高齢者の低栄養

特に認知症を発症すると少食になりやすく、痩せている人が目立ちます。なぜ、認知症になると少食になる傾向があるのでしょうか。


食事の管理が難しくなる

認知症を発症すると、身の回りの管理が不十分になってきます。食事についても同様で、メニューを考えてから食材を揃え、調理するといった連続した作業を順序立てて考えることが苦手となり、結果として食事がおろそかになっていきます
一人暮らしで介護の援助を受けていなければ、規則正しい生活も難しくなっていくでしょう。1日3食の食事が摂れなかったり、好きなものしか食べなくなったりすることで、低栄養になってしまうのです。


料理で悩む高齢者

食事への関心が薄れる

高齢になると感覚機能の低下から味覚が鈍り、食事に興味や関心を示さなくなる場合があります。認知症であれば、食事の管理が十分できないことも重なり、ますます食事から遠ざかってしまいます。


介護者が食事を終わらせてしまう

認知症に限らず高齢者は、水分をしっかりと摂らないと意識がぼんやりしてきます。そのため食事のペースが遅くなり、なかなか食べ終わらないことがあります。
家族からすると「もうお腹いっぱいなのかな」と思ってしまい、食事を片付けてしまうかもしれません。認知症であれば「まだ食べる?」と聞いても、反応が判りにくいことで食事を切り上げてしまうこともあるでしょう。 そうなるとやはり、栄養やエネルギーは不足していきます。

1日1,500kcalとバランスの良い栄養素

食事はエネルギーとしても大切ですが、水分や栄養素が摂れるという意味でも欠かせないこととなります。
認知症であれば、カロリーや栄養に配慮した食事を摂れるようなメニューにすることが大切です。 ただ、毎回カロリーや栄養を考えたメニューとなると頭を悩ませてしまう…と、心配される方も多いでしょう。ここでは食事への配慮を3つの項目にしぼってお伝えしていきます。


低栄養を防ぐ食事

食事から摂れる水分

1日に必要な水分は飲水だけでなく、食事からも摂る必要があります。1日に食事から摂る水分量は700~1,000mlとなります。少食になると食事からの水分が不足し、意識がぼんやりしてきます。
日中にウトウトと居眠りすることが増えたり、興味や関心を示さなかったりと、活動量や意欲の低下にもつながります。動くことが減ればお腹も空かず、食欲は湧かなくなります。結果として「食事を摂らない「食べても少しだけ」となってしまうのです。
1日に体へ取りこむべき水分量を欠かさないためにも、3食の食事はしっかりと摂りましょう。



たんぱく質で筋力維持

認知症の人は活動性や運動量が減ると、ますます認知力が低下してしまいます。活動的な生活を過ごすためにも、適度な筋力を維持していくことは大切となります。
たんぱく質は筋肉を形成する材料となり、高齢者は少なくとも1.0g/kg 体重/日程度摂取することが望ましいとされています。つまり、体重50㎏であれば、1日50gのたんぱく質を摂るのが理想となります。
高齢者はたんぱく質を摂らないと筋力低下から体力がなくなり、寝たきりになる可能性も高まります。必要量のたんぱく質は意識していきたい栄養素です。

※認知力…状況を「認識・理解・判断」する力


植物性と動物性たんぱく質

たんぱく質には2種類あります。植物性で代表的なのが大豆ですが、豆腐100gに含まれるたんぱく質は4.9gとなります。動物性では豚肉100gだと14gとなり、たんぱく質が不足しているならば肉や魚、卵などからのほうが効率よく摂ることができます。
最近ではたんぱく質に特化した食品プロテインなども多く販売されているので、取り入れるのも良いでしょう。


食物繊維で便秘予防

認知症の人は下剤に頼らずに便秘を予防していくことをおすすめします。下剤は下痢を起こすこともあり、かえって腸内環境を乱してしまう可能性があります。


食物繊維を含む食材

イモや根菜、菜っ葉、穀物、海藻などに食物繊維は含まれています。
特におすすめは寒天です。寒天100gには食物繊維が79g含まれており(ごぼうは100gあたり5.7g)ほぼ食物繊維といっても過言ではありません。粉寒天でゼリーを作れば食物繊維と水分も同時に摂ることができます。 糸寒天であれば味噌汁やサラダに混ぜることで食物繊維が手軽に摂取できます。


栄養やカロリー計算のポイント

それでも、1日1,500kcalの食事はやはり難しい…と考えてしまう人は、次のような考えも参考にしてみてください。


元気なころの食事量や家族と同じものを

介護を要する前の、元気に活動していた時期の食事量はどのくらいだったでしょうか。その頃の食事量を基準とし、バランスやたんぱく質、食物繊維を意識した食事を考えてみましょう。 同居している家族がいれば、同じメニューにしていくのも良いでしょう。食べる量が少ないからと、おかずなどを減らしたりしないことです。
家族や友人などと食卓を囲むことも、食事量を増やしていくには良い方法です。孤食(独りで食べること)は食事量を減らし低栄養につながるので、複数人と食べる機会を増やすことも大切です。

認知症悪化を招く低栄養 まとめ

体を動かすために必要なエネルギーは、毎日食事から摂り続けなければなりません。「昨晩食べ過ぎたから、今日は食べなくても大丈夫」とならないのが人間の体です。
認知症であれば、エネルギーや栄養素を欠かすことで活動性が低くなり、症状悪化につながるため、1日3食の食事を欠かさないようにしていきましょう。3時のおやつも必要であれば栄養価の高い食べ物に置き換えるなど、工夫をしてみてください。


 記事監修 
  • 監修者写真
    若橋 綾
    株式会社DIGITALLIFE
    管理部
    介護支援専門員

     

  • 介護支援専門員や介護事業所の管理者として10年以上の現場経験があり、家族問題を抱える家族や虐待案件も含め様々なケースを担当。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、企業向けに介護離職予防を目的としたセミナーの開催や介護に関する記事作成を行うなど活躍は多岐にわたっている。