腰痛をかかえている方は、腰痛改善のためにグッズを購入したりマッサージを行ったりしたことがあるかと思います。
そのような方法で症状の改善が見込めなかった方は、腰痛の原因が足裏にあるかもしれません。
足は、私たちの生活の『立ち上がる・立つ・立った状態で移動する』といった動作の中で、からだの全ての体重をうけており、足はからだを支える土台とも言える重要な役割を果たしています。
そのため、その土台がくずれることで腰痛を引き起こすなど、からだ全体に大きな影響を及ぼすのです。
この記事では、運動指導の専門家(理学療法士)が、なぜ足裏が腰痛の原因となるのかを解説し、さらにチェック方法やおすすめの運動もお伝えしていきます。
【その腰痛、足裏のせいかも?】理学療法士がセルフチェックとおすすめの運動を解説!

腰痛の原因はからだの各部位と関係がある
腰痛は腰に痛みが出現する症状ですが、実は痛みの原因が腰にあるとは限りません。
からだの各部位のトラブルが原因となっている可能性もあるのです。
ここで注目したいのが、からだを支える土台となっている足です。
立つ姿勢が多いヒトにとっては、足のトラブルは足だけの問題ではなく、からだの各部位へ影響します。
足裏と腰痛の関係性<その①>足裏にある3つのアーチとアーチの働き
足は26個の骨からなる繊細な構造から『アーチ』を形成しており、一般に土踏まずと呼ばれている内側縦アーチ以外に外側縦アーチ、横アーチの2本が存在します。

足裏にあるアーチは私たちの立つ・歩く・走る・ジャンプするという動作を、以下のような働きで支えています。
歩く・走る・ジャンプをする際の、着地の衝撃を和らげてくれるクッションの働き
歩く時のバネの働き
立つ時のバランスを保つ働き
このように、3本のアーチは普段の生活の中で重要な役割を担っているのです。
しかし、足の骨の並びがくずれたり、膝から下の筋力が低下したりすると、アーチがくずれ、偏平足やハイアーチとなり、外反母趾や足底腱膜炎などが引き起こされます。
アーチの働きが低下することで、足部での衝撃を緩和する本来の機能が失われ、腰部への衝撃が増大します。
そのため、腰に受ける衝撃が積み重なって腰痛が引き起こされてしまうのです。
足裏アーチのセルフチェック方法
次の症状がある場合は足裏アーチがくずれる可能性が高まっていると考えられます。
足裏での原因は特に思い当たらないという方も、隠れアーチくずれかもしれません。
『足裏アーチのセルフチェック』で、今のうちにアーチくずれを予防しましょう。
● 足裏が痛くなる
● 足裏が重だるくなる
● 魚の目・タコ・外反母趾などの足のトラブルがある
● 靴を変えると膝や腰に痛みを感じる
● 足指で「グー・チョキ・パー」ができない
\ 要注意! /
さっそくご自身の足裏アーチの状態を確認してみましょう。
「靴底のすり減り方」を見る!
① 普段使用している靴の『靴底の状態』を確認。② 図を参考に、『左右の靴底の減り方』をチェック。

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◎かかとは外側が、つま先は内側がすり減っている
正しい歩き方で出来ていてよい状態 -
×かかとの内側がすり減っている
偏平足に多い歩き方 -
×靴底の減り方が左右で異なる場合や、極端に靴底がすり減っている
アーチがくずれる危険度が高い
「土踏まずと床の隙間」を見る!
①立った状態で、その場で足踏みを2~3回行う。
②そのまま真っ直ぐ立った状態で、『左右の足裏(土踏まず)と床面にある隙間』を横から確認する。
(※ご家族の方に見ていただく・鏡を使用するなどがおすすめ)
③図を参考に、『隙間の状態のよい・よくない』をチェック!続けて『隙間の左右差』も確認する。
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◎隙間がある
アーチが保たれていて、よい状態。 -
×隙間がない、あるいは少ない場合
アーチがくずれている状態。 -
×隙間があっても、その隙間が左右で異なる場合
隙間がない側に負荷がかかり、アーチがくずれる可能性が高い。
いかがでしたか?ご自身の足裏アーチの状態について、確認はできましたか。
次に、足裏からくる腰痛の原因の1つとなりえる重心位置についての説明と、そのセルフチェック方法をご紹介します。
足裏と腰痛の関係性<その②>足裏の重心位置
重心と姿勢には深い関係性があり、姿勢から腰痛への影響はたくさんあります。
重心を整えることは腰痛を軽減するためにとても大切なことであり、立った時に足裏のどこに重心をかけるかが重要なポイントになってきます。
とはいえ、足裏に体重が均等にかかっているのかを、普段の生活の中で意識したり気付いたりすることは難しいかもしれません。
そこで、次に紹介する『足裏の重心位置のセルフチェック方法』で、ご自身の足裏にかかる重心位置を確認し、腰痛軽減と予防をしていきましょう。
足裏と腰痛の関係性<その①>足裏にある3つのアーチとアーチの働きで解説した通り、足裏には親指の付け根・小指の付け根・かかとの3点と3つのアーチがあります。
この3点に均等に体重がのることで3点の中心に重心がかかります。
このように足裏にかかる重心のバランスが取れる状態にしてアーチが保つことこそが腰痛軽減のポイントとなります。
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◎足の指と指の間に適切な間隔がある
足裏の3点にバランスよく体重がのっていてよい状態。 -
✖足の指全体に間隔がない、あるいは狭くなっている
足の前側に体重がかかり過ぎているため、ふくらはぎや腰に負担がかかりやすくなり、腰痛になる可能性が高い。
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✖足の中指と薬指と小指の間隔がない、あるいは狭くなっている
足の外側部分に体重がかかりすぎているため、下半身の外側の靭帯や筋肉に負担がかかって下半身の内側の筋肉が弱くなることで、O脚になりやすくなる。
また、下半身に負担がかかることで、それを補おうとお尻の筋肉が過剰に働き、疲労が蓄積して腰痛を引き起こす原因になる。
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✖足の親指と人差し指の間隔がない、あるいは狭くなっている
足の内側部分に体重がかかりすぎているため、偏平足や外反母趾の原因となる可能性が高い。
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✖足指が地面から離れている
かかとに体重がかかりすぎているため、足指が地面から離れる浮き指になりやすく、浮指で足指の力が弱まるとからだのバランスをかかとだけで取ろうとするため、反り腰や猫背になる可能性が高い。
また、歩き出しの遅延などが起こる。
「足裏の3点(親指の付け根・小指の付け根・かかと)と重心の状態」をチェック!
① 立った状態で、その場で足踏みを2~3回行う。
② そのままの状態で、図を参考にし、『足裏のどこに重心がかかっているか』を確認する。
いかがでしたでしょうか。
このように、足は体を支える土台であり、足裏アーチや重心位置には腰痛に深い関係があることから、足のトラブルは腰痛をも引き起こすということが分かったと思います。
足のトラブルから起こる腰痛は、くずれてしまったアーチや重心を整えることが改善への近道になります。
次は、どのようにして整えればよいのかについて、効果的な足裏エクササイズを紹介します。
【動画あり】腰痛を改善する!足裏エクササイズ
このような負担から腰痛を引き起こさないために、足裏エクササイズをして足裏の状態を整えていきましょう。くずれたアーチを整えるエクササイズ
テニスボールやゴルフボールなど硬めのボールを用意し、動画を見ながらエクササイズをしてみましょう。
足裏をほぐす運動 その①
② 膝に両手をおきボールに体重をかける。
気持ちよく感じるくらいの強さで15秒~30秒、かかとの前方を圧迫する。
③ ①~②を、1~3セット行う。
④ 反対側の足も、同じ手順で行う。
⑤ 次に、ボールに土踏まずをのせる。
⑥ 膝に両手をおきボールに体重をかける。
気持ちよく感じるくらいの強さで15秒~30秒、土踏まずを圧迫する。
⑦ ⑤~⑥を1~3セット行う。
⑧ 反対側の足も、同じ手順で行う。
足裏をほぐす運動 その②
② 膝に両手をおきボールに体重をかけ、足裏全体でボールを転がす。
気持ちよく感じるくらいの強さで15秒~30秒、足裏全体をマッサージする。
③ 反対側の足も、同じ手順で行う。
足の指を使った運動
② 床に散りばめたものを足の指先のみで拾っていく。
③ 10回1セットとし、3セット行う。
足の指でつかんだり拾ったりする動作はできましたか?
最初はなかなかうまくいかない場合でも、何度か繰り返すことでスムーズに行えるようになるかと思います。
練習もエクササイズの一環ですので、ゆっくりと続けていくことをお勧めします。
運動は毎日行うことが効果的です。一度に3セット行えない場合は、一日の中の隙間時間に、1セットずつわけて行うと良いでしょう。
足裏と腰痛 まとめ
足裏と腰はからだの場所としては離れているため、一見関係はなさそうにみえますが、実は足裏と腰痛には深い関係があることを解説してきました。
足はからだを支える土台となる重要な部分であることから、足裏アーチの機能が低下したり足裏にかかる重心のバランスがくずれたりすることで、腰部にも悪影響が生じて腰痛を引き起こします。
つまり、足裏のトラブルは、腰痛への直接的な原因となっている可能性もあるのです。
腰痛でお悩みの方には、足裏からの影響にも目を向けていただき、セルフチェックを試したりエクササイズを取り入れたりすることで、ぜひ腰痛の改善を実感していただきたいと思います。
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滝口 めぐみ
株式会社ツクイ
理学療法士- 専門学校卒業後、株式会社ツクイ入社。 従業員向けに機能訓練に関する教育研修に従事。
現在は、一般市民向けの介護予防教室の講師や健康増進サービスの企画、開発に携わっている。 - 専門学校卒業後、株式会社ツクイ入社。 従業員向けに機能訓練に関する教育研修に従事。