こんなお悩みはありませんか?
「親はまだ元気そうだけど、介護の準備はいつから始めればいいの?」
「気づいたときには手遅れ、なんてことにならないか心配…」
実は、要支援・要介護になる人の割合や、日常生活に制限が出始める時期には、年齢による明確な傾向があります。公的データを見ると、75歳前後がひとつの分かれ目になっていることがわかります。
この記事では、健康寿命と平均寿命の差、年齢別の要介護認定率、介護が必要になるおもな原因といったデータをもとに、親の介護準備をいつから、何から始めればよいかを分かりやすく解説します。
この記事のポイント
- 健康寿命と平均寿命の差から、介護準備の必要な時期が見えてくる
- 何歳ごろから要支援・要介護になる人が増えるかが分かる
- 介護が必要になるおもな原因と、それぞれへの備え方が分かる
- 75歳が介護準備の目安とされる理由が分かる
- 親が75歳を迎えたときに確認しておきたいことが分かる
要支援・要介護とは
「要支援」「要介護」は、介護保険サービスを利用する際に必要な区分で、市区町村への申請と審査によって認定されます。軽い方から「要支援1・2」、その次に「要介護1〜5」と分かれており、支援や介護を必要としない場合は「自立」と判定されます。
要支援は、日常生活の一部にサポートがあれば自立した生活を続けられる状態です。地域包括支援センターが作成する介護予防ケアプランに沿って、体操教室などの介護予防サービスを利用できます。
要介護は、食事・排せつ・移動といった動作に継続的な介助が必要な状態を指します。要介護度が上がるにつれて、車いすや歩行器、手すりの設置、紙おむつの使用など、身体状況に合わせた住環境や介護用品の見直しが必要になっていきます。
なお、認定を受けるには市区町村の窓口への申請が必要で、結果が出るまでに1か月程度かかります。「親の様子が変わってきた」と感じてから申請しても、実際にサービスを使えるまでには時間がかかることは、あらかじめ知っておくとよいでしょう。
健康寿命と平均寿命の差はどれくらい?介護準備が必要な理由
平均寿命と「健康寿命」(日常生活に制限なく過ごせる期間)の間には、想像以上の開きがあります。
| 区分 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 平均寿命(令和4年) | 81.05歳 | 87.09歳 |
| 健康寿命(令和4年) | 72.57歳 | 75.45歳 |
| 差(不健康な期間) | 約8.5年 | 約11.6年 |
この表からうかがえるのは、多くの人が70代前半から半ばにかけて、何らかの理由で日常生活に制限が生じ始めるということです。この「不健康な期間」がそのまま介護が必要な期間と一致するわけではありませんが、通院や生活動作のサポートが必要になりやすい時期の目安として参考になります。
なお、この差は2010年以降、男女とも少しずつ縮小しており、健康寿命そのものを延ばす取り組みの効果もうかがえます。
何歳ごろから要介護認定を受ける人が増える?
年齢別の要介護認定率を見ると、70代前半までは比較的低い水準で推移し、75歳を境に上昇していく傾向があり、75歳前後は介護リスクが高まり始める目安の一つとなります。
| 年齢層 | 要介護認定率 |
|---|---|
| 65〜69歳 | 約2.9% |
| 70〜74歳 | 約5.8% |
| 75〜79歳 | 約11.8% |
| 80〜84歳 | 約26.7% |
| 85歳以上 | 約60.2% |
出典:介護や支援が必要な人の割合はどれくらい?|公益財団法人生命保険文化センター
65〜74歳の「前期高齢者」と75歳以上の「後期高齢者」を比べると、要介護認定率は75歳以降に大きく上昇します。70〜74歳では約5.8%ですが、75〜79歳では約11.8%と、ほぼ2倍になります。実際、要支援・要介護の認定を受けた65歳以上の高齢者のうち、約9割を後期高齢者が占めているというデータもあり、介護が必要になる時期は75歳を境に大きく前倒しされることが分かります。
さらに80歳を超えると認定率の伸び方も加速し、80〜84歳で4人に1人以上、85歳以上では半数を超える水準まで達します。「親が80代に入ったら、認定率はぐっと上がる」と考えておくと、心構えとしても現実的です。
出典:要介護認定で一番多いのは?年代別・要介護度別などでわかりやすく解説|ライフサポートナビ
介護が必要になるおもな原因
介護が必要になった理由を知っておくと、どんな備えが有効かが見えてきます。厚生労働省の調査によると、要支援・要介護になったおもな原因の上位は次のとおりです。
| 順位 | 原因 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 認知症 | 16.6% |
| 2位 | 脳血管疾患(脳卒中) | 16.1% |
| 3位 | 骨折・転倒 | 13.9% |
| 4位 | 高齢による衰弱 | 13.2% |
| 5位 | 関節疾患 | 10.2% |
出典:介護や支援が必要となった主な原因は?|公益財団法人生命保険文化センター
要介護度別に細かく見ると、要支援では「関節疾患」や「高齢による衰弱」が上位に入る一方、要介護では「認知症」が23.6%とさらに大きな割合を占めます。つまり、軽度のうちは加齢に伴う体力低下や関節の痛みが原因になりやすく、介護度が上がるほど認知症の影響が強くなる傾向があります。
原因ごとの備え方を整理すると、次のようになります。
- 認知症:早期の気づきが対応の選択肢を広げます。もの忘れの様子など、日ごろの変化に目を向けておきましょう。
- 脳血管疾患:高血圧や糖尿病など生活習慣病の管理、定期的な健診が予防につながります。
- 骨折・転倒:自宅内の段差解消や手すりの設置、筋力維持のための運動が効果的です。
- 高齢による衰弱・関節疾患:栄養バランスの取れた食事と、無理のない範囲での運動習慣が土台になります。
もの忘れと認知症の違いや、家族が気づきやすい初期サインをまとめた記事です。介護が必要になる原因の第1位である認知症について、基礎から予防のポイントまで解説しています。
75歳を超えると起こりやすい変化
75歳は、体・脳・生活の複数の面で変化が重なりやすい年齢です。何がどう変わりやすいのかを具体的に知っておくと、準備すべきことがより見えやすくなります。
| 変化内容 | 関連データ |
|---|---|
| 筋力低下 | 下肢の筋力が落ち、歩行が不安定になりやすい |
| 転倒リスク | 自宅内での転倒が増え、骨折につながりやすい(65歳以上の高齢者では約3人に1人が年1回以上転倒するとされています) |
| 認知機能 | 75歳以上で認知症有病率が顕著に上昇するとされる |
| 通院・体調 | 体の不調を感じる人や通院の頻度が上がる(外来受療率は75歳以降に高い水準となり、80〜84歳でピークを迎える) |
| 生活機能 | 後期高齢者は前期高齢者より「積極的に外出する」割合が低下し、家事動作に負担を感じやすくなる |
一つひとつは小さな変化でも、複数が同時期に重なることで、生活全体の負担が急に増えたと感じるケースが少なくありません。「最近、親の様子が少し変わったかも」と感じたときは、この5つの視点で振り返ってみると気づきやすくなります。
なぜ75歳が介護準備の目安なのか
ここまでのデータを重ねると、75歳が介護準備の目安とされる理由が見えてきます。
まず、健康寿命の平均は男性72.57歳・女性75.45歳であり、75歳前後は多くの人が何らかの生活上の制限を感じ始める年齢と重なります。加えて、要介護認定率も75歳を境に大きく上昇し、認知症の有病率も75歳以上で顕著に上昇するとされています。
つまり75歳という年齢は、「健康上の制限が出始める時期」「要介護認定率が上がり始める時期」「認知症リスクが高まる時期」がほぼ同時に訪れるタイミングなのです。だからこそ、この年齢を迎える前後は、介護保険の仕組みを知っておくことや、家族での話し合いを始める好機といえます。
一方で、これらはあくまで統計上の傾向であり、75歳を過ぎても介護を必要としない人も大勢います。数字を「いつか来る心配の種」としてではなく、「準備を始めるタイミングの目安」として捉えることが大切です。
親が75歳を迎えたら確認したい5つのこと
75歳は、本人がまだ元気なうちに介護の話をしやすいタイミングでもあります。次の5点を確認しておきましょう。
- 地域包括支援センターの場所と連絡先:介護に関する相談窓口として、要介護認定の申請前から利用できます。
- 本人の希望:どこで、誰に介護を受けたいか。元気なうちに話し合っておくと、選択肢を狭めずに済みます。
- かかりつけ医:要介護認定の申請時には主治医意見書が必要になるため、日ごろから相談できる医師を決めておくと安心です。
- 住環境:手すりの設置や段差の解消など、転倒予防につながる住まいの見直しを検討します。
- 介護保険証の保管場所:65歳になると交付される介護保険証は、申請時に必要になるため、家族で保管場所を共有しておきましょう。
これらは、要支援・要介護の認定を受ける前から取り組める準備です。早めに情報を共有しておくことで、実際に介護が必要になったときの家族の負担を大きく減らせます。
今日からできる介護予防
介護予防とは、加齢に伴う心身機能の低下(フレイル)をできるだけ防ぎ、自立した生活を長く続けるための取り組みです。前章で触れた原因の多くは、日々の生活習慣によって進行を緩やかにできる可能性があります。
- ウォーキングや軽い体操など、無理のない範囲での運動習慣を続ける
- たんぱく質を意識した食事で、筋肉量の低下を防ぐ
- 地域のサロンや趣味の集まりなど、社会とのつながりを保つ
- 定期的な健康診断や口こうケアで、体の変化を早めにキャッチする
実際に、全国の介護保険者が策定した第9期計画(令和6〜8年度)の集計では、令和7年度時点の要介護・要支援認定率の推計が、3年前の第8期計画時点の推計よりも下がっており、その要因の一つとして介護予防の取り組みの広がりが挙げられています。
出典:要介護・要支援717万人 25年度、認定率は19.9%|福祉新聞(厚生労働省集計より)
こうした取り組みは、要支援・要介護になる時期を遅らせるうえで役立つとされていますが、加齢や病気の状況によって効果には個人差があります。無理なく続けられる範囲から、親子で一緒に取り組んでみるのがおすすめです。
フレイル予防に役立つウォーキングの具体的な方法や、目安となる歩数について解説した記事です。今日から無理なく始められる運動習慣のヒントが見つかります。
介護準備チェックリスト【保存版】
親が75歳前後を迎えたら、次の項目を確認してみましょう。
情報の確認
- 地域包括支援センターの場所と連絡先を確認する
- かかりつけ医と持病・服薬状況を確認する
- 介護保険証の保管場所を家族で共有する
- 緊急連絡先を共有する
住まいと暮らしの確認
- 自宅の転倒リスクを確認する
- 手すり設置の必要性を確認する
本人との会話
- 介護に対する本人の希望を聞く
- 最近のもの忘れや体調変化について話す
生活習慣
- 運動・食事・社会参加の習慣を見直す
このリストは、要支援・要介護の認定を受ける前から取り組める内容ばかりです。すべてを一度にやろうとせず、できるところから少しずつ進めていくことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
- Q. 介護の準備は何歳から始めるのが理想ですか?
- A. 明確な正解はありませんが、健康寿命や要介護認定率のデータを踏まえると、75歳前後を一つの目安に考える家庭が多いです。親がまだ元気なうちに情報収集や話し合いを始めておくと、いざというときに慌てずに済みます。
- Q. 親がまだ元気でも、介護の話をしてもよいのでしょうか?
- A. むしろ元気なうちの方が話しやすいケースが多いです。本人の希望を聞いておくことは、将来の選択肢を広げることにつながります。
- Q. 要支援と要介護、どちらが軽い状態ですか?
- A. 要支援の方が軽い状態です。要支援は介護予防サービスの対象、要介護は日常生活動作への継続的な介助が必要な状態を指します。
- Q. 要介護認定は何歳から申請できますか?
- A. 原則65歳以上が対象です。ただし、末期がんや脳血管疾患など特定疾病に該当する場合は、40〜64歳でも申請できます。
- Q. できるだけ介護が必要にならないようにするために、家庭でできる対策はなんですか?
- A. 骨折・転倒や高齢による衰弱は、住環境の整備や運動習慣によって進行を緩やかにできる可能性があります。手すりの設置や段差の解消など、身近なところから始められます。
- Q. 認知症を予防することはできますか?
- A. 運動、食事、社会参加などの生活習慣が発症リスクに関わるとされていますが、加齢に伴う要因も大きく、確実に予防できるとは言い切れません。早期発見と早めの相談が、その後の対応の選択肢を広げます。
- Q. 地域包括支援センターには、要介護認定を受ける前でも相談できますか?
- A. 相談できます。介護保険サービスを利用していない段階でも、介護予防や生活上の心配ごとについて相談できる窓口です。
- Q. 介護予防に取り組めば、要介護状態を避けられますか?
- A. 運動や食事、社会参加などの取り組みは、要支援・要介護になる時期を遅らせることに役立つとされていますが、効果には個人差があり、絶対に避けられるわけではありません。
- Q. 親が75歳を超えても元気な場合は介護準備は不要ですか?
- A. 不要ではありません。介護が必要になる時期には個人差がありますが、元気なうちに情報共有や住環境の確認などの準備をしておくと、本人の希望を確認しやすくなり、将来の選択肢を広げることにもつながります。
まとめ|データから見える早めの準備の大切さ
健康寿命と平均寿命の差、そして年齢別の要介護認定率を見ると、75歳前後が介護準備の一つの目安になることが分かります。介護が必要になるおもな原因の上位には認知症・脳血管疾患・骨折転倒があり、それぞれに応じた備えが可能です。
親が元気なうちに地域包括支援センターの場所を確認したり、本人の希望を聞いておいたりすることが、将来の安心につながります。
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