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退院した高齢の親、おむつ離れはできる?方法と家族のサポートの工夫

退院した高齢の親、おむつ離れはできる?

病気や怪我などで親が入院すると、自宅での生活とは関係なくおむつを履いて過ごしていることがあります。そのため、退院して帰ってきたときには、「お父さん(お母さん)、このままずっとおむつなのかな……。」と不安を抱えてしまうことがあります。
この記事では、退院後のおむつ離れの方法から、ご家族ができる具体的な支援まで、実践的なアドバイスをお伝えします。ご本人のペースに合わせて進めていき、不安なく過ごせる環境を実現していきましょう"

退院後におむつを外すメリット

おむつを両手で持っている様子

入院中におむつを着用することは、高齢患者の安静や転倒防止、看護の効率化といった理由があります。そのため、自宅での介護をするときには、おむつの着用は必要ないこともあります。そこで、退院後はおむつの着用をやめることで生まれる3つのメリットを解説します。

身体的なメリット

自分でトイレに行くという動作は、とても良い運動になります。立ち上がる、歩く、座るという一連の動作によって、足腰の筋力維持につながります。その結果、歩行の安定性が高まるため、長期的な視点で効果的です。使わない機能は衰えやすいため、トイレに行く習慣を取り戻すことで、全体的な身体機能の維持・向上が期待できるメリットがあります。

心理的なメリット

自分でトイレに行けるということは、高齢者の自尊心や自信につながります。排泄は人間の基本的な生理現象であり、それを自分でコントロールできることで、「まだまだ自分でできることがある」という前向きな気持ちを持てます。
また、おむつを外すことで外出への意欲も高まります。「もしもの時が心配で外に出られない」という不安が軽減され、社会参加や趣味の活動への積極的な参加にもつながりますよ。

健康面でのメリット

おむつは排泄を楽にしてくれる一方で、おむつを着け続けることで思わぬトラブルが起こる可能性があります。例えば、長時間おむつを使用していると、おむつかぶれや尿路感染症のリスクが高まることがあります。また、活動量が減ることで筋力低下や廃用症候群(使わないことで機能が衰えること)が進行するリスクもあります。自立した排泄を促すことで、こうしたリスクを軽減できます。

高齢者のおむつ離れを進める方法

シニアを励ます介護士

高齢者のおむつ離れは、一気に行うものではありません。ご本人の身体状況などに合わせて、段階的に進めていくことが大切です。そこで、高齢者のおむつ離れを効率よく進めていく方法を解説します。

生活リズムに合わせてトイレタイムを設ける

おむつ離れを試みるときは、まず本人の生活リズムを観察してみましょう。「食後30分後」「起床時」「就寝前」など、自然に排泄のタイミングが来やすい時間帯があるはずです。
そこで、その時間に合わせて、「トイレに行ってみませんか?」と優しく声をかけてみましょう。1日10分程度でも、便座に座ることで排泄機能を刺激し、自然な排泄を促すことができます。特に、排泄がなくても、便座に座る習慣を作ることから始めることが重要です。

安全で使いやすいトイレの環境づくり

トイレまでの道のりや、トイレ内の環境を見直して、ご本人が使いやすくなるような工夫をしてみましょう。安全で使いやすい排泄環境を実現するには、次のポイントを意識して実践してみましょう。

    トイレ内や導線の安全性確保

  • 廊下やトイレに手すりを設置する
  • 夜間の移動のために、人感センサーライトを設置する
  • 滑りにくいスリッパや靴下を用意する

    利便性の向上

  • トイレまでの距離が遠い場合は、ベッドサイドにポータブルトイレを設置する
  • トイレットペーパーやティッシュなど、必要なものを手の届く場所に配置する
  • 緊急時に押せるブザーやベルを設置する

段階的なアイテム活用

おむつの着用をやめる場合、いきなり普通のパンツを履いてもらうと、これまでのクセや身体機能の低下などで、失敗してしまうことも多いです。そこで、すぐにおむつを外すのではなく、段階的に布のパンツへ移行していくことが成功の秘訣です。

第1段階:リハビリパンツ

最初は、通常のおむつから、履くタイプのリハビリパンツに切り替えます。リハビリパンツは、トイレでの脱ぎ着がしやすくなり、布パンツ着用時のトイレ動作の練習をすることができます。

第2段階:布パンツ+尿とりパッド

布パンツに薄手の尿とりパッドを組み合わせることで、万が一の漏れに対する不安を軽減できます。間に合わなくても衣類などを汚す心配が無くなるため、焦る気持ちがなくなり、徐々に自立した排泄に慣れていくことができます。

第3段階:日中はトイレ、夜間のみリハビリパンツ

トイレで排泄がある程度できるようになったら、トイレに行くまでに時間がかかり、間に合わないことが多い夜間のみリハビリパンツを使用するなど、時間を区切った使い分けをしてみましょう。リハビリパンツを使用する時間を徐々に限定的にしていくことで、昼夜問わず布パンツで過ごせる状態を目指していきます。

トイレで排泄がある程度できるようになったら、トイレに行くまでに時間がかかり、間に合わないことが多い夜間のみリハビリパンツを使用するなど、時間を区切った使い分けをしてみましょう。リハビリパンツを使用する時間を徐々に限定的にしていくことで、昼夜問わず布パンツで過ごせる状態を目指していきます。

家族にできる声かけとサポートの工夫

おむつが心配な女性

高齢者のおむつ離れの成功には、家族の理解と適切なサポートが欠かせません。特に大切なのは、ご本人の尊厳を大切にしながら支援することです。そこで、おむつ離れを促すサポート方法や工夫について解説します。

失敗しても「大丈夫」という安心感を伝える

最初から完璧におむつ離れをできる人はいないので、移行中は失敗があるのは当たり前。だからこそ、「失敗しても大丈夫」「次は成功するから」と、温かい言葉をかけることが大切です。叱ったり、ため息をついたりして本人を責めるのではなく、「一緒に頑張ろう」という気持ちを伝えましょう。
もし、失敗が続くなど対処するのが難しいと思った時は一人で悩まず、医師や専門外来、ケアマネジャーといった専門家に相談しましょう。専門的な知見やサービスを活用することで、活路が開けますよ。

プライドを傷つけない声かけ

高齢の親世代は、これまで様々な経験を積んできたプライドもあり、介護されることに複雑な気持ちを抱えていることが多いものです。特に、排泄の介助はデリケートな問題のため、言葉遣いには十分に気をつけましょう。

声掛けの良い例

  • 「協力してくれてありがとう」
  • 「お疲れさま」
  • 「一緒にがんばろう」

声掛けの悪い例

  • 「また失敗したの?」
  • 「子供みたいに」
  • 「情けない」
  • 「迷惑をかけて」

よくある質問

悩む女性

最後に退院後のおむつ離れについて、多くの人が抱いている不安にお答えしていきます。


Q. 退院した高齢者でもおむつを外すことはできる?

A.はい、十分に可能です。実際に、90代の方でも退院後におむつを外せた例などが数多く報告されています。大切なのは、その人の残存能力を最大限に活かし、無理のない範囲で段階的に、おむつ離れに取り組むことです。年齢よりも、本人の意欲や家族のサポート、適切な方法で行うことが成功の鍵となります。


Q. 失敗が多くて介護が大変なときはどうする?

A. 失敗は、おむつ離れを目指す過程では自然なことです。そして、夜間は日中よりも成功率が下がります。そのため、まずは日中のトイレ排泄が安定してから、夜間のおむつ離れに取り組むという段階的なアプローチを行いましょう。
もし、排泄の失敗で介護の負担が大きくなってきたら、一時的におむつに戻すことも検討しましょう。その上で、ケアマネジャーや専門家に相談し、より良い方法を見つけることが大切です。家族だけで抱え込まず、利用できるサービスを活用して、おむつ離れを目指しましょう。


Q. 介護保険で排泄ケアの支援は受けられる?

A.はい、介護保険サービスを利用して、排泄ケアの支援を受けることはできます。具体的には、訪問介護で排泄介助を受ける、訪問看護で皮膚トラブルのケアや排便コントロールの相談をするなどが挙げられます。意外に受けられるサービスが多いため、一度ケアマネジャーなどに相談してみましょう。


まとめ|おむつ離れは焦らず一歩ずつ

退院後の高齢者のおむつ離れは、決して不可能なことではありません。適切な方法と家族の温かいサポートがあれば、年齢に関係なく自立した排泄を取り戻すことができます。
ただし、忘れてはいけないのは、おむつ離れの方法は一人ひとり異なるということです。特に、おむつ離れは単に排泄の問題を解決するだけでなく、ご本人の尊厳を守り、生活の質を向上させる大切な取り組みです。

そのため、焦らず、叱らず、無理強いしない という基本を大切にして根気強くサポートしましょう。また、家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーや医師、リハビリ専門職などの専門家と積極的に協力していくことが重要です。本人の尊厳を最大限尊重し、小さな成功体験を積み重ねることで、おむつに頼らない快適な生活環境を構築しましょう。
SONOSAKI LIFEでは、健康づくりに役立つ情報や介護の「お悩み」に寄り添う情報をお届けしております。 ほかのコラムもぜひ、ご覧ください。

 記事監修 
  • 監修者写真
    小林 修
    株式会社DIGITAL LIFE
    WEBサービス事業
    理学療法士
    社会福祉主事

     

  • 大学卒業後、理学療法士や介護事業所の管理者としてデイサービス、特別養護老人ホーム、ショートステイなど、10年以上の現場経験があり、介護サービスの運営、スタッフ教育に従事。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、健康増進サービスの企画、開発に携わっている。