シニアの入浴前・入浴中に気をつけること
入浴前の準備
入浴中にシニアの方が快適に過ごせるよう、入浴前の準備も重要です。
体調のチェック
入浴前には、体調をチェックしましょう。もし体調が悪いときは入浴をやめて、温かいタオルで身体を拭いたり、足だけをお湯につける「足浴」をすることもおすすめです。
入浴前の体調チェック
- 血圧は高すぎないか(参考値:上160mmHg、下100mmHg未満)
- 発熱していないか(参考値:37.5℃未満)
- 脈拍数は普段と比べ異常はないか
- 顔色、表情はいつも通りか
- 食欲はあるか
- その他、気になることはないか
入浴のタイミング
空腹時は水分が不足したり、血糖値が低下したりすることで、めまいや貧血などを引き起こす可能性があります。
また、食後すぐの入浴は血圧低下による失神や消化不良につながる可能性があるため、1時間程度は時間を置いて入浴することが理想的です。
適切な湯温
湯温は39度から40度のぬるめが理想的です。あまり熱いお湯は体への負担が大きくなるため、控えめに設定し、入浴前に手や肘で温度を確認しましょう。
ヒートショックに注意
寒い季節には、浴室全体を暖めてから入浴するのが良いでしょう。急激な温度変化は、血圧の変動を引き起こし、ヒートショックと呼ばれる危険な状態に繋がることがあるため、特に注意が必要です。
入浴中の介助
入浴介助を行う際は、シニアの方のプライバシーや尊厳を尊重しながら行うことが大切です。以下に介助のポイントを挙げます。
自立をサポートする
可能な限り、ご本人ができる範囲は動いてもらい、介助者はサポート役に徹します。自分でできることを奪うと、自尊心や自信を失わせることにつながりますので、本人ができることは尊重しましょう。
声かけと確認
介助の際は常に「次に何をするか」を優しく説明し、本人の意向を確認しながら進めます。急に動かしたりすると不安感を与えてしまうため、ゆっくりとしたペースで行いましょう。
基本的な介助の手順
絶対にこうしなければならないという厳密な手順はありませんが、洗う前に湯温を確認し、足元からお湯をかけていく、といった手順をふむことで、入浴中の事故を防ぎ、身体への負担を軽減することにつながります。
以下に全て介助する場合の基本的な手順をご紹介します。
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足元からお湯をかける
シャワーの温度が適温になっているか確認した後、身体に負担がかからないように心臓から遠い足元からかけお湯をかけていきます。
体が温まったことを確認してから頭や体を洗います。シャワーチェア等を使用する場合はお湯をかけ温めてから座ってもらうようにしましょう。
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頭を洗う
髪にシャワーのお湯をかける際は、ご本人からは見えない位置になるので声をかけてから行うことが大切です。
耳に水が入ってしまわないように注意しながら、頭部にまんべんなくお湯をかけて予洗いをします。このとき、自由に手が使える方には、耳をふさいでもらうと洗いやすくなります。
耳を自分でふさげない方の場合、介助者が片方ずつ耳をふさぎ、左側と右側に分けて洗います。
予洗いが済んだら、シャンプーを手にとり、手のひらで泡立ててから頭皮につけていきます。洗うときは指の腹を使って優しく丁寧に洗います。
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体を洗う
体を洗う順番は以下を参考にご本人の意向を確認しながら進めましょう。
上半身:顔・首→手先から腕→胸・背中
下半身:足先→ふくらはぎ→太もも→おしり→陰部・肛門
なお、陰部についてはご本人に前の部分を洗ってもらうように促し、後ろの部分は必要に応じて手伝います。
高齢になると肌が乾燥しやすくて弾力がないので、皮膚にダメージを与えないようにどの部分を洗うときも、強くこすらないよう注意しましょう。
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浴槽につかる
床面に石鹸の泡が残っていると、滑り止めマットを使用していたとしても滑りやすく転倒の危険性があるため、浴槽へ移動を始める前に床面の泡をシャワーで流しましょう。
また、浴槽をまたぐ瞬間は片足立ちとなり、転倒の危険性が高くなる為、必要に応じて身体を支えられるようにしておきましょう。
高齢になり心肺機能が低下していると、長湯は身体への負担となり、入浴後の疲労感や最悪の場合ヒートショックにつながってしまうため、お湯につかる時間は10分程度、長くても15分までを目安とすることがおすすめです。
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体をしっかりと拭く
入浴後はタオルで体をしっかりと拭き、水分を残さないようにします。濡れたままだと、体が冷えたり、風邪を引いたりするリスクが高まります。特に足元や背中などは丁寧に拭き取ります。
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保湿ケア
シニアの方は肌が乾燥しやすくなるため、入浴後には保湿クリームやローションを使って肌のケアを行いましょう。乾燥がひどい場合は、特にひじや膝などの関節部分を重点的にケアします。
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水分補給
入浴後は汗をかいて体内の水分が失われやすいため、しっかりと水分補給を行うことが大切です。ぬるめのお茶や水など、飲みやすいものを準備しておきましょう。
入浴介助におけるコミュニケーションの重要性
入浴介助は、身体的なケアだけでなく、心のケアも大切です。介助中にリラックスした会話や声かけを行うことで、シニアの方が安心して入浴できる環境を作ることができます。
また、入浴に関する不安や要望を確認する時間を持つことで、より個々に合った介助が行えるようになります。
在宅で行うシニアの入浴介助 | 安全で快適な入浴のためのポイント まとめ
シニアの入浴介助は、安全性と快適性を両立させることが重要です。環境を整え、適切な準備とサポートを行うことで、シニアの方が安心してリラックスできる入浴時間を提供することができます。
また、コミュニケーションを大切にし、個々の状態に応じた介助を心がけることで、より質の高い介助が実現できます。