
知らない間に口呼吸になっている方は多い一方で、口呼吸には特定の病気になりやすいといったリスクがあります。特にシニア世代は、口呼吸になりやすいだけでなく、命に関わる危険性もあるため、意識的に鼻呼吸へ切り替えることが健康維持には欠かせません。
本記事では、口呼吸による主な病気のリスクや、口呼吸を改善するためのエクササイズなど、健康的な呼吸法への切り替えに役立つ情報をお伝えします。
口呼吸でなりやすくなる病気

口呼吸を改善したほうが良い理由として、特定の病気になりやすいというリスクがあるからです。そこで、長期的に口呼吸をしているとなりやすい主な病気について解説します。
むし歯・歯周病
口呼吸は、口の中を空気が出入りするため、口内を乾燥させ、唾液の分泌量を低下させます。唾液には自浄効果や殺菌作用があり、口内の健康を維持する働きがあります。そのため、口呼吸を続けたことで唾液の分泌量が減少すると、口内トラブルが起きやすくなり、虫歯や歯周病の原因を引き起こすことがあります。
さらに、年齢を重ねるにつれて唾液の分泌量は、少しずつ低下していきます。もともと口呼吸になりやすいシニアだからこそ、若い世代よりも口呼吸への対策が重要です。
かぜ
鼻呼吸では、鼻毛がフィルターのような役割を果たし、呼吸を通して体内に入る雑菌などを減少させます。一方、口呼吸の場合、口内には鼻毛のようなフィルター機能を発揮するものがないため、空気中の雑菌などがそのまま体内へ入り込みます。その結果、喉のリンパ組織が雑菌に感染し、炎症などの症状が起こりやすくなります。
さらに、喉が炎症を起こすと免疫力が低下します。雑菌の侵入と免疫力の低下、この2つの作用によって風邪をひきやすくなり、咳や高熱といった症状に苦しむこともあります。
誤嚥(ごえん)性肺炎
口呼吸によって引き起こされる病気の中で、特に注意が必要なのが誤嚥性肺炎です。誤嚥性肺炎とは、口内の雑菌や汚れた唾液、食べ物が気管に入ることで発生する肺炎を指します。食事中の口呼吸は、食べ物が気管に入る誤嚥を招きやすいため、鼻呼吸をしているときよりも誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まります。
また、シニアの誤嚥性肺炎は、寝たきりになったり、命を落としたりする危険性があります。若い世代に比べてリスクが大きいため、安全に食事を楽しむためにも、口呼吸の改善が必要です。
筋肉を鍛えて口呼吸を改善!簡単エクササイズを紹介

口呼吸の改善には、口周りの筋肉を鍛えることが効果的です。そこで、筋肉を鍛えることが有効な理由と、簡単にできるエクササイズを紹介します。
口呼吸の要因は口周りの筋肉が衰えること
口呼吸の改善に筋肉を鍛えることが有効なのは、口呼吸になりやすい要因の1つに、口周りの筋肉の衰えが関係しているためです。口周りの筋肉が衰えると、口をしっかり閉じられなくなり、常に少し開いている状態になります。その結果、口呼吸をする機会が少しずつ増え、最終的に口呼吸が常態化してしまいます。
また、加齢や軟らかい食べ物が中心の食生活が原因となり、口周りの筋肉が衰えることがあります。つまり、シニアは若い世代よりも口呼吸になりやすいため、意識的に口周りの筋肉を鍛えることが重要です。
口呼吸の改善には「あいうべ体操」が効果的!
口周りの筋肉を鍛え、口呼吸を改善するためには、「あいうべ体操」というエクササイズが効果的です。あいうべ体操は、シニアでも簡単にできるエクササイズなので、以下の手順を参考に試してみてください。
- 口を大きく開いて「あー」と声を出す
- 口を横に伸ばして「いー」と声を出す
- 唇を前へ突き出して「うー」と声を出す
- 舌を伸ばして「べー」と声を出す

あいうべ体操のポイントは、できる限り口を大きく動かして声を出すことです。「あー」のときは限界まで口を開き、「いー」のときはしっかり横に伸ばす、といったことを意識して行いましょう。初めは、思うように口を大きく動かせないことが多いので、鏡で口の動きを確認しながら行うのがおすすめです。
あいうべ体操の目安回数は、1~4の発声を1日30セットです。口を大きく動かすだけと思うかもしれませんが、慣れるまでは疲労感があります。最初は少ない回数から始め、徐々に回数を増やしていきましょう。
高齢者でも今日からできる鼻呼吸練習法!

あいうべ体操は筋肉を動かすエクササイズのため、想像以上に疲れてしまうことがあります。そこで、ここではあいうべ体操よりも気軽にできる鼻呼吸の練習方法を紹介していくので、できそうなことから試してみてください。
唇を閉じて意識して鼻呼吸をする
口呼吸が習慣化している場合、鼻呼吸をしようと決めても、すぐに口呼吸に戻ってしまいます。そこで、1回2~3分程度、集中して鼻呼吸を行う時間を設けましょう。慣れてきたら、鼻呼吸をする時間を少しずつ長くしていくことで、無意識の呼吸も次第に鼻呼吸へと変わっていきます。
また、気付いたときに口を閉じるように意識することも有効です。口を閉じると自然に鼻呼吸へ切り替わるため、口の開閉を意識するだけでも口呼吸の改善につながります。
湯気を鼻で吸う
口呼吸になる要因の1つに、鼻づまりなどで鼻呼吸ができないことが挙げられます。鼻呼吸をしようとしても、鼻がつまって空気をきちんと吸えないため、口から空気を取り入れようとするためです。そこで、コーヒーやお茶などの温かい飲み物や食べ物を飲食するときに、鼻から湯気を吸い込んでみましょう。
温かい湯気が鼻の中に入ると、血行が改善され鼻腔が広がります。すると、空気が通りやすくなるため、鼻呼吸だけでも十分に空気を取り込めるようになります。このとき、鼻の中に溜まっていた鼻水が出てくることがあるので、タオルやティッシュをあらかじめ用意しておくのがおすすめです。
また、この湯気を吸い込む行為は、意識して鼻で空気を吸う練習にもなります。温かいものを摂取するタイミングは1日に何度もあるので、湯気を鼻で吸い込む習慣を続けることで、口呼吸から鼻呼吸への移行をスムーズに進められます。
なるべく硬いものを食べる
シニアになると、口周りの筋力低下に伴い噛む力が弱くなり、自然と軟らかい食べ物を好むようになります。しかし、軟らかい食べ物ばかりを摂取すると、口周りの筋力を維持できず、少しずつ衰えてしまい、結果的に口呼吸の頻度が増えてしまいます。そのため、無理のない範囲で硬いものを取り入れた食生活に変えてみましょう。
適度に硬いものを食べることは、口周りの筋力を維持・向上させるエクササイズと同様の効果が期待できます。また、硬い食べ物は何度も噛む必要があるため、食事中に口を閉じている時間が長くなります。その結果、食事中は自然と鼻呼吸になり、誤嚥性肺炎の予防にもつながるでしょう。
さらに、軟らかい食べ物に限定しないことで、幅広い栄養素を摂取できるため、免疫力の向上も期待できます。口呼吸を改善するまでの健康管理にも有効な方法なので、この機会に食生活を見直してみましょう。
ただし、歯の損失があったり、義歯が合わなかったりする状態で、硬いものを食べようとすると、口腔粘膜を傷つけてしまい別の口腔トラブルを引き起こす可能性があります。こうした理由で硬いものが食べられない・食べづらい場合は、一度歯科医へ相談してから、食生活を変えましょう。
口呼吸のリスクや簡単エクササイズを紹介 まとめ
口呼吸は、口内を乾燥させたり、雑菌をそのまま体内に取り入れたりすることで、歯周病や風邪を引き起こしやすい呼吸方法です。特にシニアの口呼吸は、誤嚥性肺炎を招くなど命に関わる危険があるため、意識的に改善法や練習法を実施して口呼吸を改善することが重要です。
口呼吸の改善には、口周りの筋肉を鍛えることや、鼻呼吸の習慣を身につけることが効果的です。今回ご紹介した改善方法を参考に、無理のない範囲で日常生活に取り入れてみましょう。
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