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料理で元気に!高齢者が笑顔になる新しい介護サービス”なないろクッキングスタジオ”とは?

新しい介護サービス”なないろクッキングスタジオ”とは?

高齢者の暮らしを支える介護サービスの中でも、日々の生活に彩りを添える「デイサービス」は、心身の健康維持と社会参加の場として重要な役割を果たしています。今回は、東京都目黒区にある「なないろクッキングスタジオ自由が丘」と、埼玉県さいたま市南区の「ツクイさいたま辻」の2施設を取材しました。
今回は、「なないろクッキングスタジオ自由が丘」の魅力に焦点を当て、そのユニークな取り組みをご紹介します。介護の枠を超えた“その先の暮らし”を感じられる、料理を通じた心と体のケアに注目です。

「料理」で心と体を元気にする、なないろクッキングスタジオ自由が丘

「なないろクッキングスタジオ自由が丘」は、株式会社SOYOKAZEが運営する料理特化型デイサービスです。施設名の通り、ここでは「料理」が主役。調理を通じて、お客様の心身機能の維持・向上を目指すユニークな取り組みが行われています。

施設の概要

施設は、東急東横線「都立大学駅」から徒歩8分、「自由が丘駅」から徒歩12分の好立地にあり、送迎サービスも完備。1日の定員は25名で、午前・午後の2単位制でサービスを提供しています。

料理を楽しむことに特化した、新しいデイサービスのかたち

「デイサービス」と聞くと、体操やレクリエーション、入浴や食事の介助などを思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろんそれも大切な役割ですが、なないろクッキングスタジオは、「料理を楽しむこと」に特化したデイサービスです。要介護1~5の介護認定を受け、車いすやマヒ、認知症の方も通っています。

明るく楽しい空間が、笑顔を引き出す工夫に

なないろクッキングスタジオに一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、白を基調とした明るく清潔感のある空間。壁や天井、床が白で統一されているので、広々とした印象を受けます。

そこに彩りを添えるのが、観葉植物や天井から吊るされたカラフルなランプシェード。まるで絵本の中にいるような、楽しく温かみのある雰囲気です。特に天井の装飾は、視線が自然と上に向くよう工夫されており、空間全体に開放感と遊び心を感じさせる設計になっています。

楽しい空間1
楽しい空間2

調理台やテーブルには、色とりどりの野菜やビタミンカラーを用いた調理器具が並び、見ているだけでワクワクしてきます。お客様からは「ここに来ると気持ちが明るくなる」といった声も実際に聞かれました。

1時間で5品!協力して作るからこそできるスピード調理

午前・午後のスケジュール表

なないろクッキングスタジオのスケジュールは、意外と盛りだくさん。到着後のバイタルチェックから始まり、食材やレシピの学びの時間、調理、そして食事まで、限られた時間の中で充実したプログラムが組まれています。

調理前も学びがいっぱい「なないろアカデミー」

送迎車に乗って施設に到着したら、バイタルチェックを行います。「なないろアカデミー」と呼ばれる食材やレシピの豆知識を学ぶ時間の後に軽いストレッチを行い、料理活動に入ります。

調理前の学び1

取材日のメニューはこちら

  • ごぼうと豚肉の出汁カレーすき煮
  • 魚の海苔巻き山河揚げ
  • 薩摩芋のレモン煮
  • いろいろキノコの混ぜご飯
  • あさりと舞茸の味噌汁
  • スイーツコース:ご長寿饅頭「福うさぎ」
調理前の学び2
調理前の学び3

キノコの混ぜご飯に「なめこ」を使うことについて、お客様から「え~、なめこを入れるの?!初めて!」と驚きの声が上がりました。カレー味のすき煮や、魚の海苔巻き山河揚げなども、「食べたことがない」「どんな味なの?」と、興味津々。

なないろクッキングスタジオのメニューの特徴は、「昔懐かしい料理」ではなく、郷土料理や外国の料理や流行りの料理など、食べたことのない・珍しい料理が多いこと。スパイスの利いた料理や揚げ物も登場し、毎回新鮮な驚きがあります。

みんなで協力!1時間で5品のスピード調理

なないろクッキングスタジオの特徴の1つは、調理のスピード感。なんと1時間で5品もの料理を、お客様同士が協力しながら手際よく作り上げます。施設スタッフは「危ないから」と手を出しすぎることなく、ほとんどの工程をお客様自身が担当します。

みんなで協力1
みんなで協力2
みんなで協力3

切る人、混ぜる人、こねる人――それぞれが慣れた手つきで次々と料理を仕上げていきます。
「手際いいですね」と話しかけると、「料理は何年もしていなくて不安でしたけど、こうやってできるとうれしいですね」と、笑顔で答えてくれました。

食事の時間も、笑顔と会話があふれるひととき

出来たての料理を、みんなで囲んでいただく食事の時間。「おいしい」「サクサクしてる!」と、口々に感想を伝え合いながら、会話が弾み、笑顔が広がります。

食事の時間1
食事の時間2

「立ちっぱなしで疲れませんでした?」と声をかけると、「あっという間でした」「真剣に料理していると時間なんて感じないわよね」など、余裕の表情。作る楽しさの延長に食べる喜びがあり、心地よい時間がここには流れています。

「できること」を引き出す、やさしいサポート体制

なないろクッキングスタジオでは、「できること」を大切にするサポートを心がけています。
スタッフは「危ないから」と手を出しすぎることなく、お客様が自分のペースで作業できるよう、そっと見守ります。

介護度に関係なく、誰もが参加できる工夫

調理スペースは車いすのままや、座って作業できる設計になっており、要介護度の高い方でも無理なく参加できるよう、細やかな配慮がされています。さらに、「10分だけ立ってみよう」といった小さなチャレンジを応援しながら、それぞれの体調や希望に合わせて支援しています。
体調や認知症の進行度にも配慮しながら、その人らしい参加の仕方を尊重しています。

誰もが参加できる1
誰もが参加できる2

料理を通じて、体も心も元気に

1時間の調理中は座ることがほとんどなく、自然と体を動かす時間が増えるため、体力の向上にもつながります。また、包丁で食材を切る、皮をむく、盛り付けのバランスを考える、数を数える、時間を見ながら配膳する――こうした一連の動作はすべて五感を刺激する活動であり、脳活性化に繋がり認知機能の改善にも効果があるとされています。

さらに、プロのシェフが考案したメニューは季節の食材を盛り込んで栄養バランスもしっかり考慮されており、「食べたいから作る」という明確な目的があることで、意欲の向上にもつながります。

なないろクッキングスタジオは体力・栄養・意欲、の向上を実現できるデイサービスになっています。

なないろクッキングスタジオ誕生の背景と想い

料理を楽しむ皆さん

なないろクッキングスタジオの一号店は自由が丘で、2015年の7月にオープンし、現在、都内に4か所あります。

はじめは不安。でも、料理が笑顔を引き出した

オープンした当初は、「本当に認知症の人が料理できるの?」「怪我しない?」といった不安の声が多くありました。そう振り返るのは、事業部長の神永美佐子さん。「最初の1年は“観察の1年”だった」と語り、当時はお客様の力や反応を見ながら、どんなサポートが必要か、どんなメニューが人気なのか、試行錯誤を重ねてきました。

事前に細かく計画するよりも、まずはやってみることを大切にし、現場の様子を見ながら内容を調整。認知症の方が包丁を使いこなしたり、スタッフよりも上手に調理したりする場面も多く、「できること」を引き出すことの大切さを実感したそうです。気づけば私たちの予想をはるかに超える力を発揮する方が続出し、積極的に自ら料理を楽しむ姿が見られるようになりました。

お客様の変化と、家族のよろこびの声

「家ではできないことができている」「母が元気になった」といった声や、「ここに来る日はおしゃれをして、ネイルまでしてくる」といったエピソードも。まるで習い事に通うような感覚で、デイサービスを楽しみにしている方が増えています。

お客様自身も何十年も料理をしていないと、不安を抱えて参加することもありますが、何十年も料理をし続けていたのだから何も心配ないと、今は自信を持って言えます。

まとめ|料理がもたらす、ちいさな幸せ

「食べることへの欲求」は、年齢を重ねてもずっと継続して残っています。料理は、人生の楽しみを呼び覚ます力があります。なないろクッキングスタジオは、その力を最大限に引き出す場所です。

「また来たい」「次は何を作ろうかな」と目を輝かせるお客様の姿が、この場所のすべてを物語っています。

今回ご紹介したなないろクッキングスタジオはこちら

SONOSAKI LIFEでは、健康づくりに役立つ情報や介護の「お悩み」に寄り添う情報をお届けしています。 ほかのコラムもぜひ、ご覧ください。

 記事監修 
  • 監修者写真
    若橋 綾
    株式会社DIGITALLIFE
    管理部
    介護支援専門員

     

  • 介護支援専門員や介護事業所の管理者として10年以上の現場経験があり、家族問題を抱える家族や虐待案件も含め様々なケースを担当。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、企業向けに介護離職予防を目的としたセミナーの開催や介護に関する記事作成を行うなど活躍は多岐にわたっている。