
親の介護を兄弟姉妹で行う際は、お互いの状況や得意なことを尊重しながら、無理のない形で役割を分け合うことがポイントです。
負担が一方に偏ると不満が生まれやすくなるため、まずはしっかりと話し合いの場を持ちましょう。また、介護の状況は時間とともに変化するため、その都度柔軟に見直していく姿勢も欠かせません。
この記事では、兄弟姉妹での親の介護におけるトラブルの回避や適切な役割分担のポイントについて解説します。
親の介護で兄弟姉妹間に生じやすい問題点

親の介護を兄弟姉妹で分担する際には、さまざまな問題が起こりやすいことを理解しておく必要があります。ここからは、どのような問題が生じやすいかについて詳しく見ていきましょう。
介護に関する役割の偏り
兄弟姉妹間で介護の役割が偏ることは、多くの家庭で見られる問題です。特に同居している人に介護が偏ることが多く、精神的なストレスや身体的な疲労が増大し、うつ病や不眠症、腰痛などの健康問題に発展するリスクが高まります。
さらに、介護を担う人が仕事を辞めたり、働く時間を減らしたりすることで家庭の収入が減少したり、介護に専念することで社会的に孤立してしまうこともあります。兄弟姉妹の中で「なぜ、自分だけ」と悩みを抱えてしまい、対立やコミュニケーションの減少を招くことも少なくありません。
金銭負担にまつわるトラブル
親の介護における金銭負担のトラブルは、一度こじれると解決が難しくなりやすい問題です。特に、誰がどれだけ費用を負担するのかが曖昧なまま進めると、不満や誤解が生じやすくなります。例えば、介護施設の利用料や医療費、介護用品の購入などにかかる費用は高額になることも多く、負担の割合が不公平に感じられると対立が生じます。
コミュニケーション不足による誤解
兄弟姉妹間で介護を進める際に、コミュニケーション不足が原因でトラブルが発生することがあります。例えば、介護の負担や意見の違いについて話さずにいると、それぞれの認識にズレが生じてしまいます。結果として、「自分だけが負担している」といった不満や「協力が足りない」と感じることが増え、関係が悪化していきます。
親の介護でトラブルを防ぐための対策

親の介護を兄弟姉妹で行う際に生じるトラブルは、できる限り避けたいものです。これらの問題を未然に防ぐためには、いくつかの対策を講じることが必要です。
介護のキーパーソンを決める
介護のキーパーソンを決めることは、家族間でスムーズかつ効率的に介護を進めるための重要なステップです。キーパーソンは専門職との連絡窓口を担い、兄弟姉妹間での情報共有や役割分担の調整役となります。具体的には、介護計画の進捗管理や家族内での意見調整を行い、混乱を防ぐ役割を果たします。
また、キーパーソンを選ぶ際には、家族それぞれの状況や負担感を考慮する必要があります。兄弟姉妹間でも、時間的・精神的余裕には差があり、生活環境や背景も異なります。皆が納得してキーパーソンを決められるように、話し合いや意見交換を行いましょう。お互いの立場や状況を理解し合う時間をつくることが、円滑な関係の維持につながります。
コミュニケーションを欠かさない
兄弟姉妹で協力して介護を進める際、定期的なコミュニケーションが不可欠です。介護の状況や悩みを共有するための場を適度に設けるようにしましょう。
例えば、月に1回程度、親の体調の変化や介護サービスの利用状況、問題点などを話し合うことで、互いの負担や疑問を把握しやすくなります。集まることが難しければ、オンラインで繋がるのも一つの方法です。日常的な連絡もSNSを使えば、緊急時の対応やちょっとした確認が速やかに行えます。
スケジュール管理を見える化する
介護スケジュールの見える化は、家族間の役割を明確にするために欠かせません。誰がいつどの時間帯に介護を担当するのかをカレンダーや専用アプリで共有し、全員が確認できる状態にすることで、介護状況が一目で分かるようになります。こうした仕組みを取り入れると、無理な負担や重複を避けられ、介護の質も安定します。
また、介護の負担が一人に集中している場合は、休息時間を計画的に確保することも重要です。スケジュールに介護から離れる時間を組み込むことで、負担が大きくなっている介護者の心理的な圧迫も軽減されます。
金銭負担のモヤモヤを常に解消する
介護にかかる金銭負担は、多くの兄弟姉妹にとって長期的なストレスの原因となる可能性が高いため、可能な限り透明性を持たせることが重要です。
介護費用は、できるだけ親本人の資産や年金で賄います。その上で、不足分や特別な支出を家族間で分担する仕組みを作り、家族が認識できるようにすることが重要です。共有できる表やオンラインツールを用いて、誰が何にいくら使ったかを記録し、定期的に兄弟姉妹間で確認・共有すると良いでしょう。これにより、金銭面での不満や誤解を未然に防ぐことができます。
介護費用の軽減策も積極的に調べましょう。例えば、高額介護サービス費支給制度などの公的制度を利用することで負担を軽減できます。また、医療費控除などの税金対策も役立ちます。これらの情報を集めたり、手続きを分担したりすることで、金銭面のストレスを軽減できます。
こうして継続的に介護費用の負担を減らし、金銭的なモヤモヤを常にクリアにすることが、介護生活を円滑に保つうえで欠かせないポイントとなります。
心理的なサポートにも配慮する
親の介護は、身体的な負担だけでなく、精神的な負担も大きくなります。そのため、兄弟姉妹間での心のサポートが非常に重要です。介護中に感じるストレスや不安を放置すると、感情の行き違いやコミュニケーションの断絶が生じ、関係の悪化につながります。
感情的なトラブルを避けるためには、お互いに辛さや困難を分かち合える関係づくりが必要です。率直に気持ちを言葉にして話すことで、理解を深めることができます。親の体調や介護環境の変化に対しても、理解し合う姿勢を持つことが、心の安心感につながります。
トラブルが解決できない場合の対応方法

介護に関するトラブルが解決できない場合は、第三者の専門家に相談することが有効です。ケアマネジャーや地域包括支援センターなどが間に入ることで、感情的な対立を和らげ、話し合いを円滑に進めることができます。
それでも解決が難しい場合は、家庭裁判所の調停委員に介入してもらい、法的な視点から問題を解決する方法もあります。調停委員は中立的な立場で双方の意見を聞き、公正な解決策を提案します。
ただし、基本的には兄弟姉妹で話し合いを重ねることが重要です。互いの意見や気持ちを丁寧に話し合い、冷静に対話を続けることで、問題解決の糸口を見つけることができます。
一人っ子が行う介護について

一人っ子の場合、親の介護は基本的にすべて自身が担うため、その負担は非常に大きくなります。兄弟姉妹で役割を分担することができず、一人で対応せざるを得ないため、時間的・精神的なストレスが重くのしかかります。一人っ子が介護を行う場合は意識的に抱え込まないようにし、ケアマネジャーを中心に介護関係者と相談し、介護保険サービスを積極的に活用しましょう。「他者に任せる介護」を行うことが重要です。
さらに、心身の健康管理も大切です。長時間の介護により疲労が蓄積すると、うつ状態や身体的な不調を招く危険が高まります。そのため、適度に休息を取り、リフレッシュする時間を確保することが求められます。
一人っ子が親の介護を行う場合、孤独感や重圧が大きい反面、ケア方針を一貫して決定しやすいという面もあります。介護計画を立てる際には、自分のライフスタイルや仕事状況も考慮し、持続可能な介護体制を作り上げるようにしましょう。
兄弟姉妹で行う親の介護|トラブル回避と役割分担のコツ まとめ
親の介護を兄弟姉妹で分担する際は、互いの状況や負担を理解し合うことが重要です。無理のない役割分担と定期的なコミュニケーションで、トラブルの発生を防ぎましょう。
また、実際に行う介護や介護費用、時間の管理などを見える化し、お互いの負担感を軽減することが大切です。さまざまな面からバランスを考慮し、兄弟姉妹で協力して介護に取り組むことで、良い関係性を維持した体制を作ることができます。