
今年も暑い夏がやってきました。ご高齢の家族を介護されている方にとって、夏場の体調管理は大きな悩みではないでしょうか。「最近食欲がなくて元気が出ない」「水分をあまり摂りたがらない」など、高齢者の夏バテに心当たりはありませんか?
高齢者は暑さに対する体の適応力が低下しており、夏場は脱水症や熱中症になりやすく注意が必要です。実際、夏の熱中症死亡者の約8割は65歳以上の高齢者が占めています。
こうしたリスクに備える解決策の一つとして注目したいのが「介護食品」です。介護食品とは、噛む力や飲み込む力が衰えた方向けに食べやすく工夫された食品や、不足しがちな栄養素を補給できる飲料・ゼリーなどの総称です。うまく活用すれば、ご家族の負担を減らしながら、高齢のご家族の夏の健康維持に大いに役立ちます。
本記事では、高齢者が夏に注意すべき健康リスクとその対策、そして夏を元気に過ごすために活用できる介護食品とその上手な使い方をご紹介します。
高齢者が夏に注意すべき健康リスク

夏場に高齢者の体調が崩れやすいのはなぜでしょうか。主な原因として、「脱水症状・熱中症」と「栄養不足(夏バテ)」のリスクが挙げられます。
脱水症状と熱中症のリスク
高齢者は体内の水分量が若い人より少ない上、暑さや喉の渇きを感じにくくなる傾向があります。そのため自分では気づかないうちに水分不足に陥りやすく、暑い室内にいるだけでも脱水症状を起こしやすいのです。
加齢に伴い体温調節機能も低下するため、夏場は体に熱がこもりやすく熱中症のリスクも高まります。事実、熱中症患者の約半数は高齢者が占めると言われ、とくに自宅で発生した致命的な熱中症の約9割はエアコンを使用していなかったケースでした。
こうした脱水や熱中症を防ぐには、エアコンや扇風機で室温を適切に保つとともに、のどが渇いていなくても意識的にこまめな水分補給をすることが大切です。環境省の熱中症予防情報サイトでも1日あたり約1.2リットルの水分補給を目安にするよう推奨されています。
また汗をかくことで塩分やミネラルも失われるため、水だけでなく適度に塩分を含む飲料(経口補水液※やスポーツドリンクなど)で補給すると効果的です。脱水を予防することは、高齢者の意識混濁やせん妄状態の予防にもつながります。高齢のご家族には、普段から飲み物を手元に置いて少量ずつでも頻繁に飲む習慣を促してあげましょう。
栄養不足による夏バテ・フレイル
猛暑が続くと食欲が落ち、「そうめんやスイカばかりで栄養が偏ってしまった」ということはないでしょうか。高齢者は暑さで食事量が減ると、ただでさえ低下しがちな栄養摂取がさらに不足し、体力の低下を招きます。
いわゆる夏バテによる倦怠感や食欲不振の背後には、ビタミンB1不足など栄養面の問題も考えられます。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変えるのを助ける栄養素で、不足すると疲れやすくなるため、夏場は意識してとりたいところです。
栄養不足が続くと筋力も落ち、フレイル(虚弱)状態に陥るリスクがあります。「フレイル」とは加齢によって筋力や体力が衰え、活動量や社会とのつながりが減少した状態のことで、夏バテがそのままフレイルにつながってしまうケースも少なくありません。
このような悪循環を防ぐには、バランスの良い食事で必要なエネルギー・たんぱく質をしっかり補給することが重要です。とくに暑い時期でも肉や魚、大豆製品など良質なたんぱく質を意識的にとり、ビタミン・ミネラルも不足しないよう野菜や果物を組み合わせましょう。食が細い場合は一日3食にこだわらず間食で補ったり、冷たい麺類だけで済まさずタンパク源のおかずを添える工夫も大切です。食事だけで賄いきれない栄養素は、市販の栄養補助飲料などを利用して補給するのも効果的です。後述する介護食品の中には、高齢者の栄養補給に役立つ商品が多数ありますので活用しましょう。
夏の健康維持に役立つ介護食品
