
圧迫骨折は、患者の多くが高齢者といわれているほど、高齢になると誰にでも起こる可能性のある外傷です。特に、再発性が高い外傷でもあるので、せっかく手術などで治療しても、再び圧迫骨折を起こしてしまい、さらに重い症状に苦しんでしまうリスクがあります。
本記事では、圧迫骨折の治療後、退院してからの生活で気をつけるべきポイントを解説します。圧迫骨折の原因や再発防止のためのリハビリについて詳しく説明するので、圧迫骨折の経験がある方はもちろん、予防に関心のある方もぜひ参考にしてください。
なぜ圧迫骨折が起きるのか

圧迫骨折は、外部からの衝撃によって、背骨(腰椎)などが押しつぶされるように骨折する外傷のことです。高齢者の圧迫骨折の主な原因は、骨粗しょう症です。
骨粗しょう症とは、加齢や生活習慣の乱れなどによって、骨の内部がスカスカになってしまう病気です。特に閉経後の女性は、ホルモンバランスの変化によって骨粗鬆症になりやすいとされています。骨粗鬆症になると骨がもろくなり、転倒や尻もちをつくなどの軽度な衝撃でも圧迫骨折が起こりやすくなります。
さらに、高齢になると身体機能が衰え、バランス感覚や筋力が低下したり、姿勢が悪くなったりします。その結果、若い頃よりも転びやすくなり、骨に衝撃が加わりやすい状態になっています。
つまり、高齢者は「骨粗鬆症」と「身体機能の衰え」という、圧迫骨折を引き起こす2つの要因を併せ持っています。過剰な運動など、特別なことをしなくても圧迫骨折をするリスクを有しているため、日常生活の中でも骨折しないようにする対策が必要です。
コルセットの正しい使用と管理

圧迫骨折は連鎖して起こる場合があり、1箇所の骨折から2箇所、3箇所と続けて骨折してしまうことがあります。そこで、圧迫骨折の治療では、骨折の連鎖を防ぐために数カ月間コルセットを着用することがあります。
コルセットは骨折部位を固定することで、骨折箇所の拡大を防ぎ、痛みを軽減させます。そのため、退院後もしばらく着用が必要なことが多く、自分で着脱ができるようになる必要があります。
圧迫骨折時のコルセットの正しい装着方法は以下の通りです。
- コルセットの下側が腰骨に当たる位置を探す
- コルセットの上側の先端が肋骨の下にくるよう押し下げながら装着する
- ベルトは苦しくない程度に締める
- 深呼吸や食後でも苦しくない程度に、締め付け具合を調整する
コルセットは骨折部分を固定する役割がある一方、強く締めすぎると血流が悪くなるなど、不具合が生じる可能性があります。強く締め付けすぎないよう注意し、適度なタイミングで締め直して、最適な強度でコルセットを着用しましょう。
自宅でのリハビリと機能訓練

圧迫骨折を招く大きな要因は、骨粗鬆症と筋力低下の2つです。保存療法や手術などで骨折箇所が癒合(ゆごう)しても、これらの要因を改善できなければ、再度圧迫骨折を招く可能性があります。
特に筋力低下によって姿勢が悪くなると、背中や筋肉の痛みを引き起こし、症状を悪化させるリスクもあります。そこで、安静に過ごすだけでなく、自宅でのリハビリや機能訓練を通して、筋力の維持や増強に努めることが重要です。
ただし、圧迫骨折のリハビリや機能訓練では、体幹をひねったり重いものを持ち上げたりするなど、症状を悪化させる運動もあります。必ず医師や理学療法士、作業療法士など専門家の指示に基づいて、正しい方法で身体を動かしましょう。
リハビリと機能訓練の違い
リハビリと機能訓練は、身体を動かして筋力の増強・維持を行い、身体機能を向上させるという点では同じです。しかし、厳密には異なる方法のため、その違いを理解しておくことも大切です。
項目 | リハビリ | 機能訓練 |
---|---|---|
実施者 | 理学療法士、作業療法士など | 機能訓練指導員、看護師など |
医師の指示 | 必要 | 不要 |
目的 | 身体機能の維持・回復 | 機能の減退防止・改善 |
リハビリと機能訓練の大きな違いは、医師の指示が必要かどうかです。より身体の状態に合わせた安全な運動を行いたいなら、医師が運動内容を指示するリハビリを選ぶのが良いでしょう。
ただし、介護業界ではリハビリと機能訓練は同一視される傾向があります。そのため、介護サービスの場合は、「通所(訪問)リハビリ」という名称のサービスが上記のリハビリに該当し、それ以外のサービスは機能訓練に該当すると考えておきましょう。
※介護保険を利用して、リハビリや機能訓練を行いたい場合はケアマネージャーにご相談ください
また、圧迫骨折後は骨の癒合を第一に、骨折した部位が安定するまでは、コルセットなどで骨折部位を固定して安定して過ごします。ただ、安静期間中であっても筋力は低下してしまうため、癒合の進行具合や痛みの程度に応じて、筋力低下を防ぐためのリハビリを並行して行います。
骨の癒合が確認された後は、骨折部位周辺の筋力を回復させることを目的としたリハビリが始まります。その後、医師の判断に基づき、機能訓練へと段階的に移行します。機能訓練では、引き続き筋力向上を目的にストレッチを行い、やや負荷の高い運動やウォーキングなども取り入れながら、再発を防ぎ、健康的な日常生活を取り戻すことを目指します。
日常生活での注意点

自宅で圧迫骨折を引き起こした場合、今までと同じ生活をしていると再び圧迫骨折を起こす可能性があります。再発を防ぐために、次のようなことを意識して日常生活を送りましょう。
- 室内の段差や滑りやすい場所を減らし、転倒の原因を減らす
- 身体を反らしたりひねったりするような、無理な姿勢・体制をしない
- 重いものを持たないようにする
- コルセット着用時は、定期的に肌の状態をチェックする
- 疲労を感じたら無理に身体を動かさない
- 入浴時やトイレ時などには、家族や介護サービスのサポートを受ける
圧迫骨折から適切に回復するためには、骨折後の患部を悪化させない、再発させないことが重要です。圧迫骨折の痛みなどで長く苦しまないためにも、これらの点に注意して生活しましょう。
栄養と骨の健康

圧迫骨折を再発させないためには、骨の健康維持も重要です。そのため、栄養バランスに配慮した食事と、必要な栄養素の摂取が不可欠です。特に、骨の健康維持に効果的な栄養素には、次のようなものがあります。
- カルシウム:牛乳・乳製品、小魚、大豆製品など
- ビタミンD:魚、きのこ類など
- ビタミンK:緑黄色野菜、納豆など
- タンパク質:肉、魚、卵、大豆製品など
これらの栄養素は骨の形成に関わっており、積極的に摂取することで骨密度を高められます。骨粗鬆症の予防だけでなく、骨折からの回復にも有益な栄養素のため、普段よりも意識して摂取しましょう。
特にカルシウムとビタミンDは、同時に摂取すると腸でのカルシウム吸収率が高まるため、「きのこのお味噌汁」など、メニューを工夫して効率よく摂取するのがおすすめです。また、ビタミンDは日光浴びることでも分泌されるので、ウォーキングのように外出する機会を増やすことも有効です。
食事量が落ちて多く食べられない場合は、栄養補助食品を活用して、食事以外から必要な栄養素を摂取することも検討しましょう。一人ひとりの食欲や食事状況に合わせて、最適な方法で栄養素を摂取できる環境を整えることが、圧迫骨折からの回復と再発防止に役立ちます。
圧迫骨折で退院した後の生活で気をつけたいこと まとめ
圧迫骨折は、骨粗鬆症と筋力低下という、高齢による身体の変化が主な原因です。元気に過ごしていると思っていても、知らず知らずのうちに骨折しやすい状況に陥っていることがあります。そのため、圧迫骨折の治療後も同じような生活を続けていると、再び圧迫骨折を引き起こし、より重い症状に苦しむ可能性があります。
そこで、治療が済み退院した後は、自宅内の環境整備や食事内容に今まで以上に気を配り、骨折しにくい生活へと改善していきましょう。さらに、リハビリなどを通して定期的に身体を動かす習慣を身につけることも大切です。圧迫骨折の治療をサポートしながら、これからも健やかに過ごせるよう、本記事を参考に健康的な生活を実現してください。
SONOSAKI LIFEでは、健康づくりに役立つ情報や介護の「お悩み」に寄り添う情報をお届けしております。 他のコラムもぜひ、ご覧ください。