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【認知症とは】初期症状から予防まで徹底解説|知っておきたい基礎知識

認知症とは初期症状から予防まで徹底解説

高齢化が進む日本で、認知症は「他人事」ではありません。ご自身や大切な人を守るために、この病気の基礎知識、初期のサイン、そして今日からできる予防法について、公的機関の信頼できる情報に基づいて解説します。

認知症の「定義」と「基礎知識」を押さえよう

読書をするシニアカップル

認知症の全体像を把握し、正しい知識で不安を取り除きましょう。

認知症の正式な定義と特徴:「物忘れ」との決定的な違い

認知症とは、「さまざまな原因によって脳の細胞が損傷したり働きが低下した結果、記憶・判断力・言葉の理解などの認知機能が衰え、日常生活や社会生活に支障をきたす状態」を指します。
参考:厚生労働省|認知症の基礎知識

加齢による単なる物忘れとの違いは、体験そのものを忘れるかどうか、そして生活に影響があるかどうかです。
たとえば、食事のメニューを思い出せないのは単なる物忘れですが、認知症の場合は「食事をしたこと自体」を忘れてしまい、繰り返し食事をしようとすることがあります。

認知症の物忘れは進行性であり、体験したという事実そのものが失われていく点が特徴です。

日本における認知症の現状と背景:最新統計と将来予測

厚生労働省の推計によると、2020年時点で国内の認知症患者数は約600万人と推計されています。
さらに、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数が約730万人に達し、65歳以上の高齢者のうち約5人に1人が認知症になると予測されています。
出典:厚生労働省|認知症施策推進大綱

認知症を引き起こす脳の変化とメカニズム

認知症の多くは、脳細胞の変性や脳血管の障がいによって引き起こされます。

• アルツハイマー型認知症:アミロイドβやタウといった異常なたんぱく質が脳内に蓄積し、神経細胞を破壊することが原因と考えられています。
出典:国立長寿医療研究センター|アルツハイマー病の診断と治療

• 血管性認知症:脳梗塞や脳出血といった脳血管障がいにより、脳の一部に血液が行き届かなくなり、認知機能が低下することで発症します。

認知症の種類と特徴 (アルツハイマー型・レビー小体型・血管性など)

認知症は、原因となる病気によっていくつかの種類に分類され、それぞれ異なる特徴を持ちます。

【認知症のおもな種類と特徴】

1. アルツハイマー型認知症
  • 日本の割合 (推定) :約50~60%
  • おもな原因:異常たんぱく質 (アミロイドβなど) の蓄積
  • 初期症状の特徴:新しい記憶の障がいが顕著
2. レビー小体型認知症
  • 日本の割合 (推定) :約10~20%
  • おもな原因:α-シヌクレインの蓄積
  • 初期症状の特徴:幻視、パーキンソン症状 (手足の震えなど)
3. 血管性認知症
  • 日本の割合 (推定) :約10~20%
  • おもな原因:脳梗塞・脳出血などの脳血管障がい
  • 初期症状の特徴:症状が段階的に進行する (まだら認知症)

よくある質問 (FAQ)|認知症は治るのか?若年性認知症とは?

Q: 認知症は治るのでしょうか?
A:
アルツハイマー病など進行性の認知症には、現時点で根本的に治す治療法はありません。ただし、別の疾患が原因で認知機能が低下している場合 (例:正常圧水頭症など) は、治療によって改善する可能性があります。また、薬物療法によって症状の進行を遅らせることも可能です。
出典:厚生労働省|高齢者認知症の薬物療法
Q: 若年性認知症とは何ですか?
A:
65歳未満で発症した認知症の総称です。(※)
単に年齢が若いだけでなく、経済的な問題や生活上の困難が大きいことが特徴です。現役世代での発症となるため、より専門的な社会サポート体制が必要となります。
出典:厚生労働省|若年性認知症支援ガイドブック
Q: 認知症と加齢による「物忘れ」の違いは何ですか?
A:
認知症は体験のすべてを忘れるか、日常生活に支障があるかが決定的な違いです。加齢による物忘れは「体験の一部」 (例:何を言おうとしたか) を忘れますが、認知症は「体験した事実そのもの」 (例:食事をしたこと自体) を忘れ、その結果、生活に大きな支障をきたします。
Q: 認知症は何歳から始めるべきですか?
A:
認知症は高齢になって発症しますが、その原因となる脳の変化は数十年前から始まっていると考えられています。そのため、特定の年齢からではなく、中年期以降からの生活習慣を見直すことが最も重要です。特に、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理は早期から始めることが推奨されます。
認知症はどのくらいの速さで進行するのでしょうか?
A:
進行の速さは、認知症の種類や個人の体質、生活環境によって大きく異なります。例えば、血管性認知症は脳梗塞や脳出血を繰り返すたびに階段状に悪化することが多く、アルツハイマー型認知症は比較的緩やかに進行します。しかし、早期に発見し、適切な治療や生活習慣の改善に取り組むことで、進行を遅らせることは可能です。
どのような症状があれば、すぐに病院へ行くべきですか?
A:
単純な物忘れではなく、日常生活に支障が出始めたときが受診の目安です。 また、他の疾患が原因になっている認知機能の低下である可能性や、軽度認知障がい(MCI)の場合もあるため、ご家族や周りの人から物忘れを指摘されることが多くなったと感じる場合はかかりつけ医や物忘れ外来に受診することをおすすめします。

早期発見の鍵!見逃してはいけない「初期症状」を徹底解説

メモを書くシニア女性

早期の気づきが重要です。見逃されがちな症状と家族が注意すべきサインを解説します。

よく見られる初期サイン|記憶障がい、判断力・時間感覚の混乱

認知症の初期症状は多様ですが、特に注意すべきは以下のサインです。

  1. 記憶障がい:新しい体験や出来事をすぐに忘れ、何度も同じ話をしたり、同じことを聞いたりする。
  2. 見当識障がい:今日の日付や時間が分からなくなる、季節の認識が曖昧になる。
  3. 実行機能障がい:料理の手順や、銀行での手続きなど、順序立てて行うことが難しくなる。

認知症の種類別に見る初期症状の違いと特徴

初期症状は、その後の病気の進行を予測する上で重要なヒントとなります。

  • アルツハイマー型:記憶障がいが圧倒的に早く、目立ちます。
  • レビー小体型:記憶障がいよりも、鮮明で具体的な幻視や、睡眠中に大声を出したりするレム睡眠行動障がいが先行することがあります。
  • 血管性認知症:手足の麻痺や言語障がいなどを伴いやすく、感情のコントロールが難しくなることもあります。

家族が気づくべき変化|初期症状チェックリストと注意点

本人に自覚がないケースが多いため、家族や周囲の気づきが重要です。以下の「意欲・感情・行動」の変化に注意しましょう。

  • 意欲の低下:趣味や外出を面倒がるようになり、閉じこもりがちになる。
  • 抑うつ・不安:抑うつや不安、あるいは無関心になったりする。
  • 被害妄想:財布をしまった場所を忘れて「誰かに盗まれた」と思い込むなど。
  • 金銭管理の失敗:自動販売機やATMの操作に時間がかかったり、高額な買い物が増えたりする。

進行するとどうなる?中核症状と周辺症状 (BPSD) の違い

認知症の症状は、「中核症状」と「周辺症状」に分けて理解されます。

  • 中核症状:脳の病理的な変化によって直接的に起こる認知機能の障がい (記憶障がい、見当識障がいなど) 。すべての認知症の土台となる症状です。
  • 周辺症状 (BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia) : 中核症状に、本人の性格や環境などが絡み合って生じる行動・心理症状 (ひとり歩き、妄想、興奮など) 。これは環境の調整や適切な対応によって軽減や改善が可能です。

今日から実践!効果的な「認知症予防」の具体策

バランスの良い食事をするシニア女性

認知症の発症を防止するために、食事、運動、社会参加など、生活習慣を見直しましょう。

食生活で予防|地中海食と脳に良い栄養素

バランスの取れた食生活は、認知症リスクの低減に役立ちます。

色々な食品 (魚・肉・卵・豆・野菜・果物・乳製品など) を摂取し、食事量をコントロールして痩せすぎや肥満に注意しましょう。

運動習慣と脳機能の関係|推奨される運動

運動は、脳の血流を改善し、記憶や学習に関わるBDNF (脳由来神経栄養因子) の分泌を促進することが分かっています。

推奨される頻度

無理のない有酸素運動 (ウォーキングなど) を継続することが推奨されます週3日以上で合計120分以上を目標にしましょう。

睡眠・ストレス管理が認知症予防に与える影響

  • 睡眠:睡眠中には、脳にたまった老廃物を排出する役割があると考えられています。質の良い睡眠を十分にとることは、脳の健康維持に不可欠です (睡眠時間は1日5~8時間が推奨されます)。
  • ストレス:慢性的なストレスは、脳の機能に悪影響を及ぼし、認知症リスクを高める可能性があります。趣味や人との交流を通じて、適度にストレスを発散させることが予防につながります。

リスク要因の改善:高血圧・糖尿病・睡眠の対策

生活習慣病の適切な管理は、認知症予防の最大の策の一つです。高血圧や糖尿病などは、認知症のリスクを高めることが指摘されています。

出典:厚生労働省|あたまとからだを元気にするMCIハンドブック
  • 対策:定期的に検診を受け、医師の指導のもと、血糖値、血圧、コレステロール値を適切にコントロールすることが重要です。

認知症の「診断方法」と病院へ行く目安

医者と相談をするシニア女性

適切な診断とサポートがカギです。病院へ行く目安と家族ができる対応を解説します。

病院へ行くべき症状ラインと専門医への相談

初期症状に複数当てはまる場合や、日常生活に支障が出始めたら、できるだけ早く専門医に相談しましょう。早期に診断を受ければ、適切な治療やケアを早く開始できます。

  • 相談・受診先:地域の物忘れ外来、神経内科、精神科など、認知症を専門とする医療機関を受診します。

おもな検査方法:心理検査と画像検査

診断は、問診に加え、複数の検査を組み合わせて総合的に行われます。

  • 心理検査:長谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R) やMMSEなどを用い、認知機能 (記憶力、見当識など) を客観的に評価します。
  • 画像検査:MRIやCTで脳の萎縮や脳血管障がいの有無を確認します。

治療の選択肢:薬物療法と非薬物療法

  • 薬物療法:症状の進行を遅らせることを目的とした薬が用いられます。 出典:厚生労働省|高齢者認知症の薬物療法
  • 非薬物療法:薬を使わずに、認知機能の維持や周辺症状の緩和を目指す治療法です。回想法、音楽療法、運動療法などが含まれます。

家族ができる接し方とサポートの工夫

介護者は、認知症の本人を「病気である」と理解し、尊厳を守り、否定しない接し方を心がけることが重要です。

  • 否定せず共感する:本人の言動を否定せず、気持ちに寄り添い、不安や混乱を和らげます。
  • 環境を整える:見やすい時計やカレンダーを置くなど、本人にとってシンプルで安心できる環境づくりを行います。
  • 役割を与える:できることや得意な家事などに役割を持ってもらうことで、自尊心を保ちます。

相談窓口と利用できる社会的サポート体制

認知症介護は家族だけで抱え込まず、専門機関の力を借りることが重要です。

出典|厚生労働省:福祉・介護認知症に関する相談先
  • 地域包括支援センター:65歳以上の高齢者やその家族のための総合相談窓口です。介護保険サービスの申請手続きや、適切な機関の紹介などを受けられます。
  • 認知症疾患医療センター:専門医による正確な診断、治療方針の決定、地域の医療機関との連携を担う拠点です。

まとめ|認知症を理解し、予防と早期対応へ

正しい知識と適切な対応が、より良い未来を築きます。

認知症は早期発見・早期対応が最も重要

認知症は誰にでも起こりうる病気ですが、「年のせいだ」と諦めずに「初期症状のサイン」に気づき、早めに専門医の診断を受けることが、本人と家族のその後の生活の質 (QOL) を大きく左右します。

今日からできる認知症予防の習慣と意識

生活習慣の改善が認知症のリスク低減に有効であることが示唆されています。食事、運動、睡眠、社会参加の4つの柱を意識し、特に高血圧や糖尿病といったリスク要因を管理することが、最も現実的で効果的な予防策です。今日から無理のない範囲で、脳の健康を守る生活を始めましょう。

SONOSAKI LIFEでは、健康づくりに役立つ情報や介護の「お悩み」に寄り添う情報をお届けしております。ほかのコラムもぜひ、ご覧ください。

 記事監修 
  • 監修者写真
    小林 修
    株式会社DIGITAL LIFE
    WEBサービス事業
    理学療法士
    社会福祉主事

     

  • 大学卒業後、理学療法士や介護事業所の管理者としてデイサービス、特別養護老人ホーム、ショートステイなど、10年以上の現場経験があり、介護サービスの運営、スタッフ教育に従事。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、健康増進サービスの企画、開発に携わっている。