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ベッド上の移動・介助をもっと楽にする|理学療法士が教える自宅介護のコツ

ベッド上での移動介助

自宅で家族の介護をしている際に、ベッドの奥の方に寄った状態で寝ていた。 その状態のまま無理にベッドから起こそうとしたら「腰がグキッ!」そんな経験はありませんか?


ベッドで寝られている方(被介護者)が、ベッドの左右や足元に寄った状態で寝ている事は実際によくあるケースです。 しかし、無理な方法で元の位置(ベッドの中央)に戻そうとすると介助者の腰を痛めてしまいます。 かといって、元の位置に戻さないまま、起き上がり介助を行うのも危険です。 そのため、ベッド上での移動介助を行い、寝ている位置を戻すことは、介助者の身体を痛めないためにとても大切です。


この記事では、介助者と被介護者の双方がより楽になるような、ベッド上の移動介助のコツやアイテムを理学療法士がお伝えしていきます。

ベッド上での移動介助がなぜ大事?

ベッド上で寝ている方を適切な位置に戻すための移動介助を省いてしまうと、実は色々な危険が高まってしまうのをご存知でしょうか。その例を紹介します。


起き上がる側に寄った状態の場合

ベッド上 寝ている位置

この写真の状態のまま起き上がり介助を行おうとすると、下の写真のように被介助者のお尻がベッドからずり落ちてしまう可能性が高まります。


ベッド 移動介助 お尻 落ちる

起き上がる側と対側に寄った状態の場合

ベッド上 寝ている 位置

この写真の位置のまま起き上がり介助を行おうとすると、下の写真のように介助者と被介助者との距離ができ、被介助者の腰に負担がかかりやすくなってしまいます。


ベッド上 座る位置 お尻 ずらす

足元に寄った状態の場合

ベッド上 寝ている位置 足元

この写真のまま起き上がり介助を行おうとすると、下の写真のように、起き上がった際に、手すり(ベッド柵)と距離ができてしまい、座っている位置を手すりの方にずらす必要が出てきてしまいます。


ベッド上 起き上がる ベッド柵から遠い

また、足元に寄った状態のままベッドの頭側を上げようとすると、下の写真のような姿勢になってしまいます。この状態で食事介助、飲水介助を行うと誤嚥やムセ、食べこぼしを誘発しやすくなってしまいます。


ベッド上 足元 ギャッチアップ

以上のように、ベッド上の移動介助を省くと、その後の介助場面で被介助者に危険が生じやすくなってしまったり、介助者の身体的負担を増大させてしまったりする可能性があります。 起き上がり介助やベッド上でのケアを行う際には、寝ている位置の確認、そして必要に応じて移動介助を行うことが、その後の介助を楽にするコツなのです。

これが移動介助技術の基本

日頃、ベッド上で移動介助を行う場合には、時間がなく力に頼って行ってしまうこともあるかと思います。 そのような時にぜひ実践して欲しい 「ベッド上で上方へ移動する場合の手順」「左右へ移動する場合の手順」を示しましたので、介助の参考にしていただければと思います。


上方へ移動する

① 介助者は被介助者の肩のあたりに立ちます。


介助者 ベッド上 移動介助 立ち位置

② 介助者は被介助者との距離を出来るだけ近づけます。


介助者 位置 ベッド上 移動介助

③ 被介助者の肩甲骨の真下に手を入れ、指先が足側を向くように手首を曲げます。


介助者 ベッド上 移動介助 手の入れ方

④ 被介助者の骨盤の真下にもう一方の手を入れます。

ベッド上 移動介助 介助者 手の入れ方

⑤ この状態で、真上ではなく、斜め上方(介助者の方へ引き寄せるイメージ)へ移動させます


ベッド上 移動介助 上方移動介助


左右へ移動させる場合

① 介助者は被介助者の胸のあたりに立ちます。


ベッド上 移動介助 横移動 立ち位置

② 介助者は被介助者との距離を出来るだけ近づけます。


ベッド上 移動介助 横移動 介助者 立ち位置

③ 被介助者の骨盤の真下に手を入れます。


ベッド 移乗 介助 手の入れ方

④ 被介助者の肩甲骨の真下にもう一方の手を入れます。


ベッド 移乗 介助 手の入れ方

⑤ この状態で、介助者側へ引き寄せながら移動させます。
※…必ず、引き寄せてください。遠くへ押すような介助は絶対に避けてください。

ベッド上 移動介助 横移動

【必見!】ベッド上での移動介助をさらに楽にする2つのポイント

介助技術のほかにも、ベッド上での移動介助をより楽にするための重要なポイントがありますので、以下で解説します。


あわてずにベッド上を観察

ベッド上で過ごす時間が長い被介護者は、リモコンや薬など、日常的に手に取る物をベッド上に置いている場合があります。 しかし、ベッド上に物があると、上記のように被介助者が左右や下方へ寄ったまま、起き上がり介助をしようとしてしまい、 介助者だけでなく被介助者への負担増大につながってしまいます。


まずは落ち着いてベッド上の物を移動し、スペースを作ってください。スペースがあると被介護者の体が上下左右に寄ってしまっていた場合でも身体を適切な場所に戻しやすくなり、その後の起き上がり介助も行いやすくなります。 単純な作業ですが、ベッド上の移動介助の負担を軽くするためには、絶対に欠かせない技となります。


理学療法士が解説

動画を参考に、ベッド上にスペースがあるか確認してみましょう。




  • 普段からベッドの横にサイドテーブルを置き、そこに物をまとめて置くようにしておくことをおススメします


アイテムを使って、移動介助を楽にする

スライディングシートをご存知でしょうか。スライディングシートは、すべりやすい素材でできており、背中とベッド面の摩擦を減らすことで小さな力で移動介助が行えるアイテムになります。
背面にシートを挟む必要はありますが、使い慣れれば、ベッド上の移動介助が楽になるでしょう。


理学療法士が解説

動画をご覧いただき、使用方法を確認してみてください。




  • 被介助者が要介護認定を受けている場合は、ケアマネジャーに「スライディングシートを使ってみたい」とご相談ください。要介護認定を受けていない場合は、通販サイトから購入することができます。

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ベッド上の移動・介助をもっと楽にする まとめ

本記事では、被介助者がベッドの足元や左右どちらかへ寄った状態で寝ている状態のまま介助を行おうとすると、被介助者の危険や介助者の負担を招いてしまうことを解説しました。


  • 🛏 起き上がり介助では転落の危険が高まったり、起き上がってからの介助負担が増加します。

  • 🛏 ベッド上で食事介助を行おうとしても、姿勢が悪くなってしまい誤嚥やムセを招いてしまいます。

  • 🛏 移動介助の際は、手の入れ方によって負担が大きく変わります。

また、さらに移動介助を楽にする2つのポイントをお伝えしました。


  • 🛏 ベッド上を観察、ベッド上にスペースを作ることが大事。

  • 🛏 移動介助を楽にするアイテム、トランスファーシートの活用

今回お伝えした内容は、ベッド上での移動介助だけでなく、日頃の起き上がり介助や移乗介助など他の介助場面の負担軽減にも活用できるので、本記事を参考に日頃の介助の際にご活用いただけると幸いです。


 記事監修 
  • 監修者写真
    林 悠太
    株式会社ツクイ
    理学療法士、社会福祉士
    介護支援専門員

     

  • 専門学校卒業後、株式会社ツクイ入社。従業員向けに機能訓練に関する教育研修に従事。 仕事の傍ら、筑波大学院にて修士課程を修了し、その後信州大学大学院の博士課程へ進学し、高齢者の重度化予防、要介護度の改善をテーマに研究活動にも取り組んでいる。
    現在は同業他社様ほか、一般市民向けや企業向けに介護予防や介助技術に関する研修・セミナーを多数担当している。