【必見!】杖を選ぶための基礎知識
初めて杖を選ぶ方は、「杖にはどんな種類があるの?」
「杖を使うとどんなメリットがあるの?」といった疑問もあるかと思います。杖を選ぶ前にこれらの疑問を解決しておけば、断然選びやすくなるでしょう。
ここでは、高齢の方の体を支える杖を選ぶ上でおさえておきたいことを、ていねいに解説していきます。
杖の構造
初めに、杖の構造について簡単に解説します。
杖の構造は、一般的にグリップ(持ち手)・シャフト(支柱)・杖先に分けられます。
1)グリップ
最近は、単に棒状のものではなく、握りやすいように手の形に合わせたグリップ(以下、機能的グリップ)がスタンダードになっています。
2)シャフト
①シャフトのタイプ
伸縮できないもの・伸縮できるもの・折りたたみができるものの、大きく3タイプに分けられます。
伸縮できないもの
シャフトが一本の棒になっているもので、強度が高く耐久性が高いことが特徴です。
ただし、長さを調節する場合、シャフトをカットする必要があります。そして、カットした後は、その長さから伸ばすことができません。
伸縮できるもの
シャフトの長さが調節できるようになっている杖です。2本のシャフトが重なっていて、ボタン等で長さを調節することができます。
強度は伸縮できないものと比べると劣りますが、歩行するのに十分な強度は確保されています。また、気軽に長さを調節できるのがメリットです。
例えば、杖の長さを一度調節しても「もっと長い方がいいな」とか「もっと短い方がいいな」と感じた場合、簡単に長さを変えることができます。
折りたたみ式
シャフトが折りたたみできるようになっている杖です。折りたたみできない杖に比べて、強度はやや劣りますが、歩行するのに十分な強度は確保されています。
また、折りたたんで外出時にリュックやカバンに杖を入れて持ち運べるのがメリットです。
②シャフトの材質
木材、金属材(アルミ合金、軽金属、ステンレススチール)、高分子材(カーボンファイバー)などがあり、特に最近は、アルミ合金製やカーボンファイバー製のものが多く販売されています。
木材はオシャレなものが多く、ファッションの一部として楽しむこともできます。ただ、高さ調節に手間がかかることや、価格が他の杖に比べると高くなるといった欠点もあります。
アルミ合金製のものは高さ調節が簡単にできることや、木材に比べて軽く、かつ価格も下がるので、どれを購入したらいいか悩む場合には、アルミ合金製のものを選んでいただくといいかもしれません。
3)杖先
杖先には必ず杖先ゴムがついています。杖先ゴムは、靴で言うところの靴底やインソールのようなもので、
地面についた時に滑りにくくしたり、衝撃を吸収したりします。
最近では、以下の商品のように、斜めからつくような時でもバネが角度を補正して、杖先がキッチリと地面につくように動いてくれるゴムもあります。
シャフトの直径と杖先ゴム地面の環境や使用頻度によりますが、杖先ゴムは、交換することが可能です。
杖の種類と特徴
1)T字杖(1本杖)
もっとも一般的なタイプの杖です。折りたたみタイプや伸縮タイプなど種類が豊富です。
【メリット】
●杖の中でも軽量なタイプ
●自然な歩行に近付けることが出来る
●傾斜やデコボコ道でも使えるので、屋内でも屋外でも実用性が高い
【デメリット】
●使い始めは、杖にどれくらい体重をかけていいのか、どのリズムで突いたらいいのか分からず、恐怖感が出たり、力んだりしてしまうことがある
●傘と同様で、外出先で座る時や立ったまま何か手作業をするときに、置き場所に困る
2)3点杖
杖先が3点に分岐している杖を指します。杖先が全方向に可動するようになっているのが特徴です。
T字杖で歩くと不安、つまずくことがある、といった場合は、こちらの3点杖の使用をおすすめします。
介護保険のレンタル対象商品にもなっているので、試してみたい場合は、担当のケアマネージャーに一度相談してみましょう。
【メリット】
●T字杖よりも体重がかけられる
●傾斜でも使いやすいので、屋外である程度長い距離を歩く場合でも使用することは可能
【デメリット】
●デコボコのある道などでは使いづらい
●T字杖に比べると重い
3)4点杖
杖先が4点に分岐している杖を指します。脳卒中の後遺症による片麻痺で、一歩一歩ゆっくり歩く方に向いている杖です。
4点杖も介護保険のレンタル対象商品になっているので、試してみたい場合は、担当のケアマネージャーに問い合わせをしてみてください。
【メリット】
●T字杖、3点杖よりも体重をかけることができる
【デメリット】
●傾斜や砂利道などの不整地では使用困難
●床面に対して垂直方向に体重をかけないと杖がグラグラしてしまうので、ゆっくり歩く必要がある(スタスタ速く歩く場合には向かない)
※4点杖の注意!
杖の足は内側と外側で角度が違います。外側に大きく広がっている方が、歩く際に外側に来るよう調節する必要があります。
①杖を右手でもって歩く場合(杖が右側にくる)
以下の写真のように、外側に大きく広がっている方が右側にくるようにします。
②杖を左手にもって歩く場合(杖が左側にくる)
以下の写真のように、外側に大きく広がっている方が左側にくるようにします
①、②の調整方法は以下をご参照ください。
4)可動式4点杖
先ほど紹介した杖と同じく杖先は4点に分かれていますが、1点大きな違いがあります。
先ほどの4点杖は地面に向かって真下に体重をかけなければ不安定になりますが、可動式4点杖は3点杖と同様に、
杖先が全方向に可動するようになっているので、地面に向かって斜めから体重がかかっても安定して歩くことができます。
3点杖で歩くと不安、つまずくことがある、といった場合は、こちらの可動式4点杖の使用をおすすめします。
こちらも介護保険のレンタル対象商品にもなっているので、試してみたい場合は、担当のケアマネージャーに相談してみましょう。
【メリット】
●T字杖、3点杖よりも体重をかけることができる
●傾斜や砂利道などの不整地でも使用可能
【デメリット】
●デコボコのある道などでは使いづらい
●T字杖に比べると重い
5)ロフストランド杖
カフ(腕を支える部分)とグリップの2ヶ所で体重を支えるので体重を分散させやすいのが特徴です。腕の力や握力が弱い方に向いている杖なので、
T字杖だとすぐに腕が疲れてしまう場合は、こちらの杖がおすすめです。
こちらも、介護保険のレンタル対象商品にもなっています。
6)松葉杖
骨折や捻挫をしている方など一時的に片脚に体重がかけられない、かけにくい状況の場合に有効な杖です。
杖がもたらすメリット
杖は高齢の方の生活を助けてくれるものですが、具体的にどんなメリットを及ぼしてくれるのか、詳しく説明を聞く機会は少ないかと思います。
ここではケース事例を元に、杖が必要になるまでの過程から、杖がもたらすメリット、使用するタイミングを説明します。
事例:左脚に痛みや顕著な筋力低下などの異常が生じているケース
過程①左脚に以下のような症状が出る
・ねんざ、骨折、じん帯損傷などにより片脚だけ長期の安静を強いられることで顕著な筋力低下が生じている
・脚の一部(関節や筋肉)に痛みを感じている
・脳卒中や骨折などの後遺症により麻痺が生じている
過程②歩くスピードやバランスに以下のような支障が出る
過程①の症状により左脚(患側)に体重をかけづらくなることで、歩く際に右脚が出しにくくなります。そうなると、以下のような支障が生じます。
・左脚に体重をかけた時に上半身がふらついてしまう
・右脚がつまずきやすくなる
・歩くスピードが遅くなってしまう(例えば、横断歩道が青信号のうちに渡れなくなる)
この時点で、杖が必要となります。杖は弱った左脚を補強し、上記のような支障を解消してくれます。
もし、この時点で杖を使わないまま生活を続けていると以下の過程に進んでしまう可能性があります。
過程③行動範囲が狭くなってしまう
過程②の影響で、行動することにおっくうになることや、不安感が強くなることで、無意識に行動範囲を狭めてしまいます。
そうなると、筋力低下が進行することで歩く機能もより低下してしまい、大きな転倒につながることも考えられます、
杖を使い始めるタイミングとしては遅いと思いますが、この時点でも杖を使うことで、転倒を防ぐことができます。
杖が必要となるまでの過程の中で、杖がもたらすメリットや杖を使うタイミングについて解説しましたが、実際に杖を選ぶことになった場合、
「杖には様々なタイプがあるので、どれを選んだらいいのかよく分からない」という新たなお悩みが出てくるかと思います。
次では、このようなお悩みを解決できるように、選ぶ目安について解説していきます。