
トイレ介助では、便座への乗り移り介助の他に、ズボン・下着の上げ下ろし介助、お尻を拭く介助、便座からの立ち上がり介助など、あらゆる場面で頻繁に前かがみ、中腰、体幹のひねりなど、腰に負担のかかりやすい姿勢を取ってしまいがちです。
特に自宅のトイレはスペースが限られているため、無理な動きをせざるを得ないことがあるかと思います。
本記事では、トイレ介助の際に介助者の腰への負担を少しでも軽減できるように、理学療法士が福祉用具や介助技術について解説します。ぜひ参考にしてください。
トイレ介助では、便座への乗り移り介助の他に、ズボン・下着の上げ下ろし介助、お尻を拭く介助、便座からの立ち上がり介助など、あらゆる場面で頻繁に前かがみ、中腰、体幹のひねりなど、腰に負担のかかりやすい姿勢を取ってしまいがちです。
特に自宅のトイレはスペースが限られているため、無理な動きをせざるを得ないことがあるかと思います。
本記事では、トイレ介助の際に介助者の腰への負担を少しでも軽減できるように、理学療法士が福祉用具や介助技術について解説します。ぜひ参考にしてください。
トイレ介助を行う際に、介助者は場面に応じて介助を受ける方(被介助者)の前方、側方、斜め後方から介助できると負担軽減になりますが、
自宅のトイレではスペースが限られているので、前方からの介助が中心になってしまうと思います。
そこで、負担軽減を図るためには手すりの力を借りることが大切になります。ここでは、自宅のトイレで使用できる手すりを紹介します。
下記の写真のように、トイレの側壁にI字型やL字型の手すりをつけることで、方向転換や立ち座りの際に、介助量軽減を図ることができます。
下記の写真に写っている突っ張り棒のような手すりをベストポジションバーと言います。
こちらの手すりはトイレ内にも設置可能です。この手すりを使うことで立ち座りや方向転換の際に、介助量軽減を図ることができます。
下記の写真のように、スイングする手すりがあります。 便座に背を向けて立つ際に、この手すりをおろし、手すりの手をつきながら方向転換すると介助量の軽減が図れます。
また、お尻を拭く際にこのスイング手すりに腕を載せて、上半身を前にできるだけ傾けた方が拭きやすくなるので、介助者の腰への負担軽減も図れます。
また、この姿勢の方がお腹に力が入りやすく便も出やすくなります。
下記の写真のように、便座の両脇に手すりを設置することができます。 工事を必要とするものではなく、トイレの後方に置くだけでいいものもあります。 トイレでの排泄中に、自身で座位姿勢を安定させるのが難しい場合、こちらの手すりを使うことで介助量軽減が図れます。
手すりを設置したい場合、要介護認定を受けていれば、介護保険制度の中でレンタルや改修費の補助が受けられますので、まずはケアマネージャーに相談することをおすすめします。 要介護認定を受けていない場合は、こちらの記事を参考に介護認定の申請を行ってからケアマネージャーにご相談ください。
手すりの設置や段差の解消、扉の取替えなど、安全な自宅環境にするための改修工事費用の9割~7割を介護保険から支給されるサービスです。 トイレの壁に手すりをつける場合、こちらのサービスを利用することで費用面の負担を軽減できます。 支給限度額は20万円までで、工事前の事前申請が必要となります。
介護者の負担軽減や、要介護者・要支援者の日常生活をサポートするために、介護保険が適用された価格で福祉用具を提供するサービスです。 このサービスを利用すれば、(壁に設置する手すりではなく)置くだけの手すりやベストポジションバーであれば、購入せずに安価にレンタルすることが可能です。
トイレ介助の中で、特に腰に負担がかかりやすい場面を取り上げ、介助者の身体の負担を軽減するためのポイントをお伝えします。
下記の写真のように介助者が中腰姿勢のまま上げ下げ介助を行うのはできるだけ避けた方がよいと思います。 こういった中腰姿勢の積み重ねが急性腰痛(ぎっくり腰)につながってしまいます。
中腰姿勢を避ける介助方法として下記に2つ紹介します。
写真のように足を前後に広げて片膝をついて行います。
※お仕事で介護に従事されている方は、衛生面の観点からトイレで膝を床につくことを職場で禁止されている場合がありますので、職場の方針に沿って床面が汚れていないか事前に確認してください
※ここでは、腰を痛めないことを最優先に考えた時の方として紹介しています。
写真のように介助者は足を横に開いて、お尻を下げます。この姿勢でズボンの上げ下げを行うと、下半身の力を要しますが、腰への負担軽減が図れます。中腰姿勢に比べ腰への負担が50%も軽くなるといわれています。
この場面はトイレ介助の中で一番羞恥心 が出やすいところでもあるので、介助者は、下げる前に「ズボン下げますね」など、一声かけることが大切です。
便座に座る際に、下の写真のように相手の体重が後方に偏ったまま介助を行うと、介助者の腰への負担が増します。
座る際には、下の写真のように介助者は前後に足を広げ、右の写真のように被介助者の上半身を前に傾けながら行うと、腰への負担軽減が図れます。
お尻を拭く場合に、スペース上、前方からしか介助できない場合があると思います。 その際には、下の写真(悪い例)のように膝が伸びたまま介助をすると、腰を痛めてしまいます。
下の写真のように足を前後に開いて、膝を曲げた状態でお尻に手を伸ばすと、腰への負担軽減が図れます。
便座から立ち上がる際に、下の写真のように介助者の足が揃っていると力ずくで持ち上げるような介助になってしまいます。
下の写真のように介助者は前後に足を開いて、被介助者の上半身の前かがみを誘導しながら立ち上がり介助を行うと腰への負担軽減が図れます。
トイレでの介助で腰を痛めないためには、介助者が足を広げて、膝を曲げて介助することがポイントになっています。 介助者が足を揃えると、足を広げた状態に比べて介助者の身体全体を支える面積(支持基底面)が狭くなり、体勢が不安定になることで腰周辺の筋肉に負担が集中します。 また、膝を伸ばした状態で前かがみになると、腰の骨(腰椎)に負担が集中してしまいます。
以上から、足を揃えて立った状態、膝を伸ばして立った状態から前かがみで介助することは避けた方がよいです。 上記の方法を参考に、腰に負担がかからないようなトレイ介助を行ってみてください。
トイレ介助を少しでも楽に行うためには、まずは手すりの力を存分に借りることをおすすめします。
手すりは介助負担軽減だけでなく、ご本人の持っている力(残存能力)を引き出してくれることもあります。
ご自宅のトイレには、最近は壁にすでに手すりがついている場合が多いと思いますが、被介助者の状態によって、必要となる手すりの種類は変わってきます。
トイレ介助に身体的負担を感じている方、また今後トイレ介助を行う上で不安を抱えている方は、まずはケアマネージャーにその旨を伝えていただき、
手すりのレンタルや改修について相談されることをおすすめします。
他にも、介助者は足を揃えて介助をしないことが大事です。足を前後、左右に広げ重心を下げながら介助を行うと、腰への負担軽減が図れます。
介助者の体への負担になりがちな日頃のトイレ介助について、少しでも負担軽減に役に立つよう、ぜひ今回紹介したコツを取り入れてみてください。