買い物かご

特集から探す

アクティビティ

高齢者の防災対策【第3回 後編】 地震・水害発生時に命を守る具体的な避難行動

命を守る具体的な避難行動

※本記事には災害時の状況を想起させる内容が含まれます。不安を感じる場合は、無理せず閲覧を中止してください。

本記事は【高齢者の防災対策】に関する3回シリーズの「第3回(後編)」です。
本シリーズは、看護師でまちの減災ナース指導者である寺田智美さんに専門的な視点から解説いただきます。第3回は、命を守るための具体的なアクションを「準備編」と「避難行動編」の2回に分けてお届けしています。

災害の特性に応じた適切な避難行動のポイント

避難行動をしている様子

前編では、災害による健康被害を防ぐための「環境整備」や「備蓄」について解説しました。後編では、日本で発生頻度の高い「地震」と「水害」それぞれの特性を踏まえ、命を守るための具体的な行動と避難生活を選択する際の判断基準について解説します。

避難の考え方の基本

雨の中を避難する親子

1)在宅避難について

避難所は、災害によって自宅で生活できなくなった人が避難する場所であり、スペースや支援物資には限りがあります。そのため、自宅に大きな破損や倒壊の危険がない場合には、避難所へ行かず自宅で避難生活を送る「在宅避難」という選択肢があります。

在宅避難とは、自宅に大きな破損や倒壊の危険がない場合に、避難所へ行かず自宅で避難生活を送ることを指します。

在宅避難のおもなメリット

  • 住み慣れた環境で生活でき、精神的ストレスが軽減される
  • プライバシーを確保しやすい
  • ペットと一緒に生活できる
  • 集団生活による感染症リスクを低減できる

在宅避難が可能となる条件については、次に示す図のとおり整理されています(内閣府, 2022b)。

▶避難行動について(屋内安全確保をする条件)

在宅避難の「3つの条件」図解

出典:「避難情報に関するガイドライン(令和3年5月改定)」 内閣府 防災情報のページ
(図を基に加工)

在宅避難の注意点
一方で、在宅避難の準備が不十分な場合には、

  • 被災生活によるストレス
  • 体調悪化

などにより、避難所よりも自宅での災害関連死が多いことが報告されています。また、大規模災害時には、1週間〜10日間ほど支援が入らない可能性もあります。

▶中規模震災と大規模震災との違い

中規模震災と大規模震災との違い

※本表は、災害時における医療・介護提供体制の変化に関する先行研究や実践報告を踏まえ、筆者の視点で再構成したものである。

2)分散避難という考え方

新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、避難の考え方が変化しました。
「避難」とは難を避けることであり、すでに安全な場所にいる場合は無理に避難所へ行く必要はありません。

分散避難とは
避難所だけでなく、親せき・知人宅、ホテル・旅館 など安全な場所へ分散して避難すること

避難形態の整理
立ち退き避難:災害リスクのある場所から離れ、安全な場所へ移動すること
屋内安全確保:自宅や施設の上階に避難、または安全が確保できる部屋に留まること

家族構成、健康状態、介護の有無などを考慮し、災害が起こる前に避難先を具体的に決めておくことが重要です。

▶4つの避難方法

4つの避難方法のイラスト

出典:「避難情報に関するガイドライン(令和3年5月改定)」 内閣府 防災情報のページ
(図を基に加工)

災害前に行う共通の備え

スマホを見る高齢者

災害が発生した際、落ち着いて行動できるかどうかは、事前の備えに大きく左右されます。家族が離れている状況でも互いの安否を確認し、適切な行動を取るためには、普段から共通のルールや連絡方法を決めておくことが重要です。まずは、災害前に家族で確認しておきたい基本的な備えについて整理しておきましょう。

1)家族の連絡先を確認し、連絡方法を普段から練習しておきましょう

災害時は電話がつながりにくくなるので、事前に家族で安否確認の方法や集合場所を決めておきましょう。

災害用伝言ダイヤル(171)
171にダイヤルし、音声ガイダンスに従って操作
録音は30秒以内

伝える内容のポイント

  • 自分の名前
  • 無事であること
  • 現在地
  • 次の連絡予定
  • 必要事項

※要点を簡潔に伝えないと、相手が繰り返し電話をかけ続け、バッテリー切れによる連絡手段喪失のおそれがあります。

災害用伝言ダイヤル(171)の利用方法

災害伝言ダイヤル体験利用
災害用伝言ダイヤルは、決められた期日に体験利用が可能です。1回の伝言は30秒以内で、電話番号1つにつき最大20件まで登録できます。伝言の保存期間は、体験利用期間中のみとなっています(NTT東日本)。

毎月1日・15日 (0:00〜24:00)
1月1〜3日 (1月1日0:00〜1月3日24:00)
1月15〜21日 (1月15日9:00〜1月21日17:00)
8月30日〜9月5日(8月30日9:00〜9月5日17:00)

なお、実際に災害が発生した場合には、体験利用が実施されないことがあります(NTT東日本・NTT西日本,2026)。
災害時同様、NTT東日本、NTT西日本の電話サービスを利用した場合は、通話料は無料ですが、他の通信事業者、携帯電話等を利用する場合は、各種通信事業者に問い合わせてください。

いざという時にスムーズに連絡が取れるよう、平時の体験利用を通して、災害時の連絡方法を家族で話し合い、決めておきましょう。

2)避難場所・避難経路の確認をしましょう

市町村のハザードマップ
※各市町村のホームページで調べることができます。

国土交通省のハザードマップポータルサイト
はこちらからご確認いただけます。
https://www.mlit.go.jp/river/bousai/bousai-portal/

これらを活用し、「自宅周辺の災害リスク」「自宅が危険区域かどうか」を確認します。
自宅が危険区域にある場合は、「実際に避難所まで歩き」「安全な避難経路を2通り以上」を家族で確認しておきましょう。家族でどうしたら安全に避難できるかを考えることは非常に重要です。

地震への対応:災害発生前の準備

本棚を固定する女性

地震による被害は、事前の対策によって軽減できることが分かっています。

1)自宅、部屋やベッドの耐震化をしましょう

防災戦略について研究している目黒公郎(2017)*は、自宅の耐震化が進まない理由として、「国民の災害イマジネーションの不足」「技術」「制度」の問題を挙げています。
※目黒公郎:防災工学・都市防災を専門とする研究者。災害対応や防災政策に関する研究・提言を行っている。

耐震化が進まないおもな背景

  • 災害の前・最中・後の生活を具体的に想像できないため、事前対策の必要性が実感されにくい
  • 耐震補強や耐震診断に関する技術の信頼性が十分に理解されていない
  • 耐震化にかかる費用が高額であり、その費用対効果に疑問を感じる住民が多い

これらの理由から、耐震化の必要性は理解されていても、実際の行動(耐震改修)に踏み切れない状況が生じています。
こうした課題を踏まえ、自宅の耐震化を推進するために、国および都道府県では、住宅の耐震化にかかる費用の一部を補助する制度が進められています(国土交通省,2026)。

▶住宅・建築物の耐震改修の支援策(令和8年度)

住宅・建築物の耐震改修の支援策

出典:「住宅・建築物の耐震改修の支援策(令和8年度)」 国土交通省(2025)

新潟県の例
新潟県(2026)は積雪量が多い地域特性があり、他県よりも自宅の耐震対策に費用が掛かります。そのため、一部屋から取り組める耐震化として、以下の設備を対象とした補助金制度が設けられています。

  • 耐震シェルター
  • 耐震ベッド
  • 耐震テーブル

これらの対策は、住宅全体の耐震改修と比べて、比較的安価に導入できます。ほかの市町村にも類似した制度はありますが、購入費用や設置費用の全額が補助されるとは限りません。
一部屋、ベッド周辺、浴室など、自宅内に安全な場所を確保し、災害時にそこへ避難できる場所をつくる方法もありますので、ご家族で可能な方法を検討してください。
※補助制度の内容や条件は自治体ごとに異なるため、詳細はお住まいの市町村窓口で確認してください。

耐震シェルター・ベッド・テーブル

出典:「一部屋からできる耐震化」 新潟県
(図を基に加工)

2)家具の配置や固定をしましょう

家具の転倒防止や電気火災対策は、自宅で命と生活を守るための重要な備えです。

家具の固定
自宅に問題がなくても、家具が倒れて入り口をふさぎ、ガラスが割れて自宅で生活ができなくなります。入り口をふさがないような家具の配置を考え、家具の固定をしましょう。

感震ブレーカーの設置
停電後の漏電により火災が発生していますので、大規模地震が発生したら自動的にブレーカーが落ちる感震ブレーカーの設置をするとよいでしょう。

日本政府の方針により、市町村では、家具固定用器具の購入や設置、感震ブレーカーの設置に対して、器具代や設置費用の補助が行われています。
※補助制度の内容や条件は自治体ごとに異なるため、詳細はお住まいの市町村窓口で確認してください。

在宅避難では、日頃からの備蓄が重要です。横浜市の資料では、「在宅避難では最低3日、可能であれば7日分の備蓄が望ましい」と記載されています。

出典:「広報よこはま磯子区版(2022年1月号)」 横浜市磯子区

3)地震発生後:避難時の行動

地震発生直後は、揺れによる被害だけでなく、火災やけがなどの二次被害が起こりやすい状況になります。安全に避難するためには、自宅を出る前や避難時に、可能な範囲で適切な行動を取ることが重要です。

自宅を出る前の確認

  • ガスの元栓を閉める
  • 不要なコンセントを抜く
  • ブレーカーを落とす

自分の安全を第一に考え、問題がなければ、上記を実施してから避難しましょう。
災害後の火災は、電気復旧後の漏電によるものが多いため、被害を防ぎます。

避難時の服装

  • 長袖・長ズボン
  • スニーカー
  • ヘルメット
  • 水害時は傘で足元を確認
  • 軍手
  • 非常用持ち出し袋

自分に必要な物は自分で持つ
必要に応じて支援者に運搬を依頼

水害への対応

冠水した道路・アンダーパス

水害は地震と異なり、気象情報によって事前にある程度予測できる災害です。そのため、災害が発生する前から備えを進め、状況に応じて早めに行動することが被害軽減につながります。

1)災害前の準備

ここでは、水害に備えて災害発生前にできる準備について説明します。

家族で話し合い、マイ・タイムラインをつくりましょう
大雨や台風の場合、天気予報により、いつから強い雨が降るのかを事前に知ることができます。ハザードマップで浸水被害が想定されている地域にお住まいの方は、事前に「いつ」「どのような行動を取るか」を決めておき、計画的に避難することが重要です。

マイ・タイムラインとは
マイ・タイムラインとは、台風や大雨による水害に備え、災害発生までの行動を時系列で整理した、自分・家族・地域に合わせた避難計画のことです。

国土交通省では、マイ・タイムライン検討ツール「逃げキッド」を作成し、マイ・タイムラインの作成動画や資料を紹介しています。

出典:「マイ・タイムライン検討ツール『逃げキッド』」 国土交通省

※国土交通省関東地方整備局 下館河川事務所のホームページで、「逃げキッド(マイ・タイムライン検討ツール)」を活用したマイ・タイムラインの作成動画を紹介しています。
動画もあります。こちらからご覧ください。
※Part1〜Part5の動画(1本2、3分)が特に参考となります。

出典:「マイ・タイムライン動画紹介」 国土交通省 関東地方整備局 下館河川事務所

各都道府県・市町村でも、

  • タイムライン用紙
  • 作成例
  • 作成研修
  • スマートフォン用アプリなどが紹介されています。

実際に作成する際は、お住まいの市町村のホームページで用紙や作成方法を確認し、自分や家族、地域の特性を考慮したタイムラインを作成してください。

現時点での作成時の注意
▶ 令和8年5月29日に新しい防災気象情報に変更になりました。各都道府県、市町村のタイムライン上の防災気象情報が古いバージョンで記載されている可能性があります。最新の防災気象情報に沿っているかを確認し作成をしてください。
*国土交通省で紹介されている「逃げキッド」は最新の防災気象情報に沿って作成できるようになっています。

行動計画の具体例
1階が浸水する可能性がある場合

  • 大切な物は事前に2階へ移動しておきましょう
  • 自宅での避難生活が可能な準備ができていれば、2階で生活することも一つの選択肢です

ただし、安全を考慮すると、

  • 浸水の可能性がない避難場所
  • 避難を支援してくれる人

を事前に決めておき、雨が降る前に避難することが望ましい場合もあります。

水害時の注意点
水害の場合、水が引けば自宅に戻ることが可能です。
しかし、雨が上がった後も

  • 地盤の緩み
  • 土砂災害

の危険が残ることがあります。
避難指示が解除されるまでは、市町村の指示に従って行動してください。

行動のポイント
上記の内容を、自分や家族、地域の状況に合わせて「わたしの計画」に記載をしておきましょう。ただし、これはあくまでも計画です。実際の災害時には最新の災害情報を確認し、その時の状況に応じた避難行動を取ることが重要です。

▶マイ・タイムライン作成シート

マイ・タイムライン作成シート

出典:「小中学生用逃げキッド汎用型ダウンロード資料」 国土交通省
*小中学生用と記載がありますが、大変わかりやすく、大人の方も活用できます。

その他にも、デジタル・マイ・タイムラインといい、携帯電話からアクセスし、指示された操作をすることで、マイ・タイムラインが作成できるものもあります。アプリ開発会社等から提供されていますので、ご自身で選択ができます。

アプリ開発会社等から提供されているアプリ等の例
・Yahoo!防災速報 防災タイムライン(ヤフー株式会社)
・サトモリ(NTTデータ株式会社)
・そんぽデジタル・マイ・タイムライン(一般社団法人日本損害保険協会)

出典:「デジタル・マイ・タイムライン」 国土交通省

2)災害後の対応

災害が発生した後は、正確な情報をもとに、状況に応じた適切な行動を取ることが重要です。そのためには、警戒レベルや防災気象情報などを正しく理解し、活用しましょう。

災害時における警戒レベル・防災気象情報・キキクル(危険度分布)の活用
警戒レベルを用いた避難情報は(政府広報オンライン,2025)、避難に向けた心構えや、避難を開始するタイミングの判断に活用できます。警戒レベルは、数字が大きくなるほど災害の危険度が高いことを示しています。

警戒レベルごとの行動の目安

■ 警戒レベル1(早期注意情報)
気象庁から「早期注意情報」が発表されます
災害に関する情報を収集し、今後の状況に備える心構えをしましょう

■ 警戒レベル2(注意報)
「大雨注意報」「氾濫注意報」などが発表されます
災害発生の可能性が高まり始めている段階です
ハザードマップ等を確認し、

  • 危険な地域
  • 避難場所
  • 避難経路

など、避難行動の確認をしましょう

■ 警戒レベル3(警報)高齢者等避難
市町村から「高齢者等避難」が発令されます
高齢者や障がいのある人など
土砂災害の危険性や急激な水位の上昇の恐れがある河川沿いの住民
避難に時間がかかる人、危険な箇所の住民は安全な場所へ避難しましょう

■ 警戒レベル4(危険警報)避難指示
市町村から「避難指示」が発令されます
危険な地域の住人は、全員速やかに避難してください
避難は、警戒レベル4までに完了することが重要です

■ 警戒レベル5(特別警報)緊急安全確保
市町村から「緊急安全確保」が発令されます
すでに災害が発生している、または直前の状況です
この段階で屋外へ避難することは非常に危険です
自宅や建物内の

  • 上の階
  • 崖や川から離れた部屋

など、少しでも安全な場所で身を守ってください

警戒レベル時間推移イメージ

出典:「防災気象情報を活用する組織向けのご案内〜施設・学校・自治体等の防災担当者の方へ」 気象庁(2026)

警戒レベルとあわせて、避難の判断に活用できる情報として、防災気象情報(警戒レベル相当情報)とキキクル(危険度分布)があります(政府広報オンライン,2025)。
防災気象情報とは、気象庁や国土交通省が発表する、浸水、河川、土砂災害などに関する注意報・警報・特別警報等の情報です。これらの情報は、市町村が避難情報を発令する際の判断材料となるとともに、住民が自ら避難行動を判断するための重要な情報でもあります。

参考:「防災気象情報と警戒レベル」 首相官邸

これまで、警戒レベルと防災気象情報が活用されていましたが、警戒レベルと防災気象情報の対応関係が分かりづらく、防災行動の判断が難しい状況でした。そこで、令和8年5月29日より、レベル3大雨警報等、「警戒レベル+現象名+警報等」に統一されて防災気象情報が発表されます。
これにより、一目見て警戒レベルと気象現象が分かるようになり、防災行動の判断がしやすくなりました。

その他の変更点は以下になります。

  • 警報レベル4の情報は、「危険警報」へ統一
  • 洪水警報、洪水注意報が廃止され、レベル3氾濫警報、レベル4氾濫危険警報へ変更
  • 河川の氾濫は、レベル5氾濫特別警報へ変更
  • 顕著な大雨に関する気象情報は、気象防災情報(線状降水帯発生)へ変更
  • 記録的短時間大雨警報は、気象防災情報(記録的短時間大雨)へ変更
  • 天候の変化によっては、警戒レベル3を飛ばして警戒レベル2から警戒レベル4が発令する可能性もある

以前の防災気象情報と比べ、災害発生までの時間推移が早まっています。特に警戒レベル3からレベル4へ移行する猶予はわずか1時間ほどしかありません。警戒レベル3が発令された時点で、まもなくレベル4になることを見越し、すみやかに避難できる準備を整えてください。(あくまでも時間推移のイメージのため、気象の変化によりイメージと異なる可能性もあります)

*注意!
防災気象情報で発表される「氾濫に関する情報」は、「一級河川」の情報です。自宅近くの中小河川の情報は含まれていません。お近くの中小河川の状況については、キキクル(危険度分布)で確認をしてください。
気象庁 | キキクル(危険度分布)

新たな防災気象情報について

出典:「新たな防災気象情報について(令和8年〜)」 気象庁

近年は、線状降水帯の発生などにより、短時間に集中的な大雨が降るケースが増えています。このような状況では、市町村からの避難指示を待っていると、避難のタイミングを逃してしまうおそれがあります。
警戒レベルと、それに相当するキキクル(危険度分布)を確認し、危険が高まっていると判断される場合は、避難指示を待たずに、自らの判断で早めに避難行動を取ってください。

キキクル(危険度分布)とは

キキクル(危険度分布)とは

出典:「キキクル(危険度分布)」 気象庁
(図は同庁資料を基に加工)

キキクル(危険度分布)とは、気象庁が提供している情報で、雨による浸水害・洪水・土砂災害の危険度を、警戒レベルと同じ色分けで地図上に示したものです。
キキクルは10分おきに更新され、

  • 土砂災害は 2時間先まで
  • 浸水害は 1時間先まで
  • 洪水は 3時間先まで

の危険度が予測されています。避難指示が出ていない場合でも、キキクルや河川の氾濫情報などを確認し、自らの判断で避難行動につなげてください。

3)床上浸水の可能性がある地域では、雨が降る前に早期避難をしましょう

浸水とは、大雨や雪解けなどによって川の流量が増し、川があふれることで、住宅や田畑などが水に浸かることをいいます。このうち、住宅が水に浸かることを「浸水」、田んぼや畑、道路などが水に浸かることを「冠水」と呼びます(国土交通省中部地方整備局,2005)。

浸水には、おもに次の2つの種類があります。

  • 洪水(外水氾濫):川の水が堤防を越えたり、堤防が決壊したりして、住宅や田畑が水に浸かること
  • 内水氾濫:大雨により下水や側溝からの排水が追いつかず、水があふれること(例:マンホールから水が噴き出す など)
外水氾濫と内水氾濫の違い

浸水の深さは浸水深(地面から水面までの高さ)と呼ばれ、

  • 地面から 50cm未満 を「床下浸水」
  • 50cm〜1m を「床上浸水」と区分されています。

過去の災害では、浸水深が膝の高さ(約50cm)を超えると、ほとんどの人が避難できませんでした。(国土交通省水管理・国土保全局,2013)。

▶水の高さと避難が困難な人の割合

水の高さと避難が困難な人の割合

また、車での移動も、浸水深が50cmを超えるとエンジンが停止し、水圧によってドアが開かなくなる危険があります(千葉県,2025;国土交通省,2018)。さらに、水の流れが速い場合には、車が流されるおそれもあります。
車で避難する場合は、アンダーパス、川沿いの道路、田んぼの近く、浸水の危険がある場所などは通行を避け、できるだけ早い段階で、雨が降る前に安全な場所へ避難することが重要です。

車の浸水深と危険性

4)避難所に情報と物資を取りに行きましょう

地域の被災状況を知りたい場合や、自宅の備蓄が不足してきた場合は、避難所で情報や支援物資を受け取ることができます(在宅避難の方も対象です)。
ただし、個人がばらばらに避難所へ行くと混雑を招き、運営の負担になってしまいます。ご自身で動ける方は、状況に合わせて以下のように行動しましょう。

【自分で動ける場合】
町内会・自治会に所属している方:基本的には、班長などの代表者がまとめて物資を受け取りに行きます。人手が必要な場合は、班のメンバーで協力して手伝いに行きましょう。
町内会に所属していない・地域のつながりがない方:自身で避難所へ物資を取りに行く必要があります。その際も、周囲で声をかけ合って可能な限りまとまって行動するなど、避難所のスムーズな運営にご協力ください。

災害情報は、ラジオやテレビなどから得ることもできますが、地域ごとの詳しい被害状況や支援情報は避難所に集まることが多いため、情報収集のためにも避難所へ行くことが重要です。

【自分で動けない場合】
自分で情報や物資を取りに行くことができない場合は、次のような地域の支援を活用してください。

  • 町内会に加入している場合→ 班長などの役員に支援物資が必要であることを伝え、代わりに受け取りを依頼しましょう。
  • 町内会に加入していない場合→ 地域に自主防災組織があれば、その方に相談してください。
  • それ以外の場合→ 民生委員に連絡を取り、支援を求めましょう。

5)在宅避難が難しいと感じたら、ためらわずに避難所に避難をしましょう

自宅が被災した場合や、電気・水道・ガスが停止した状態が長期間続くと、自宅での生活は不便になり、介護の負担や生活上のストレスから健康を損なうおそれがあります。
「自宅での生活がつらい」「在宅避難は難しい」と感じた場合は、ためらわずに避難所へ行きましょう。避難所では、避難所運営委員に状況を相談し、支援を求めてください。運営委員が、市町村の職員や医療関係者と連絡を取り、必要な支援につなげてくれます。

また、次のような方に相談することもできます。

  • 担当のケアマネジャー
  • 親せき、友人、知人
  • 民生委員

困りごとを家族だけで抱え込まず、周囲の人や支援者に相談することが大切です。早めに支援を求めることで、心身の負担を軽減し、安全な生活につながります。

大規模水害時の過酷な生活イメージ

出典:「大規模水害対策に関する専門調査会報告 参考資料1-2」 内閣府
(資料を基に作成)

おわりに

災害時には、災害による直接死よりも、その後の環境悪化による災害関連死の方が多く、その犠牲者は高齢者が多くを占めています。高齢者の死亡数を減らすためにも、事前に防災対策を行い、被災後はできるだけ早く生活環境を整えて、健康への影響が出ないようにしていくことが重要です。

自宅で避難するメリットもありますが、デメリットもあります。自宅で避難をする場合には、被災後自宅で生活できるだけの準備が必要です。食料や生活用品の備蓄、期日が迫ったら使用し購入する(ローリングストック)、家具の固定や転倒防止を行い、安全に生活できる部屋を用意しましょう。指定避難所(地域防災拠点)の防災訓練に参加し、地域の方とのつながりをつくっておくことも、災害後に支援が必要な状況に気づいてもらうことにつながります。

住宅の耐震化、家具の固定、感震ブレーカーの設置、家庭での備蓄や迅速な避難行動の取り組みを実施することで、被害の防止や軽減につながります。ご自宅の防災対策を普段から見直し、災害の被害を最小限にできるようにしていきましょう。

SONOSAKI LIFEでは、健康づくりに役立つ情報や介護の「お悩み」に寄り添う情報をお届けしております。ほかのコラムもぜひ、ご覧ください。

 記事執筆 
  • 監修者写真
    寺田 智美
    認知症キャラバンメイト
    まちの減災ナース指導者

     

  • 看護師14年、看護教員として14年勤務し、家族が認知症を発症したことを機に、「認知症高齢者とその家族を災害から守り、被災生活を支援したい」と考え、福祉施設で看護師として勤務をしながら、千葉大学大学院看護学研究科博士課程で、「認知症高齢者とその家族の災害への備え」について研究をしている。
    認知症キャラバンメイト、まちの減災ナース指導者として、企業、自治体、地域防災拠点リーダー等と協力して、防災イベントや認知症サポーター養成講座を開催し、認知症高齢者とその家族の理解と災害時対応について地域住民、企業の職員等へ講演を行い、防災知識の普及と防災人材の育成に努めている。