60代を迎えると、筋力や体力の低下が加速し、「フレイル (虚弱) 」のリスクが急増します。しかし、適切なウォーキング習慣により、フレイルは予防でき、健康な状態に戻すことも可能です。
この記事では、フレイル予防に効果的なウォーキングの方法、1日に必要な歩数、継続するコツを、科学的根拠に基づいて解説します。
なぜ60代に「フレイル予防」が必要なのか? ウォーキングがもたらす効果
60代は健康寿命を左右する重要な分岐点です。フレイルを放置すると要介護状態へ進行しますが、早期対策により健康な状態に戻ることができます。
フレイルとは? プレフレイルのうちに対策すべき理由
フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間段階にある「虚弱状態」です。厚生労働h4省の定義によると、加齢に伴い筋力や心身の活力が低下し、生活機能障がいや要介護状態に陥りやすくなった状態を指します。
フレイルの特徴
- 可逆性 : 早期対策により健康な状態に戻れる
- 要介護リスクが2倍 : 東京都健康長寿医療センターの研究で、フレイル高齢者は4年後に要介護状態になるリスクが約2倍
- プレフレイルから対策 : 完全なフレイル状態になる前の段階で介入することが最も効果的
科学的根拠が証明!ウォーキングが筋肉・脳・骨に効くメカニズム
国立長寿医療研究センターの研究によると、定期的なウォーキングには以下の効果が実証されています。
ウォーキングの5つの効果
- 筋力維持・向上 : 下肢筋力の低下を防ぎ、転倒リスクを軽減
- 心肺機能の改善 : 心臓や肺の機能が向上
- 骨密度の維持 : かかとからの着地による骨への刺激で骨粗鬆症を予防
- 認知機能の向上 : 脳への血流が増加し、認知症リスクが低減
- 食欲増進 : 適度な運動により低栄養を予防
外出がもたらす精神的・社会的効果
フレイルには「身体的」「精神的」「社会的」の3つの側面があり、ウォーキングによる外出はすべてに効果をもたらします。日光を浴びることでセロトニンが分泌されうつ症状を軽減し、地域での交流により社会的つながりを維持できます。活動的な生活が意欲を高め、さらなる活動につながる好循環が生まれます。
【結論】1日何歩歩くのが正解? フレイル予防に効果が出る歩数
「1万歩は歩かなきゃ」と思われがちですが、実は歩数 (量) よりも、効果の出る「質」とのバランスが重要です。最新データから、60代が本当に目指すべき「正解の歩数」をわかりやすく解説します。
目標は「8,000歩のうち速歩20分」が黄金比 (中之条研究)
群馬県中之条町で15年間行われた「中之条研究」は、ウォーキングと健康の関係を明らかにした画期的な研究です。
中之条研究の知見
- 8,000歩のうち中強度(※1)活動を20分で生活習慣病予防効果が最大化
- 段階的効果 : 5,000歩で認知症・心疾患予防、8,000歩でがん・動脈硬化予防
- 歩数だけでなく「中強度」の活動時間が重要
5,000歩でも効果あり!無理なく続ける方法
8,000歩が理想ですが、最近の研究では5,000歩以上でもフレイル予防効果があることが明らかになっています。
段階的なステップアップ法
- 第1段階 (1〜2か月) : 5,000歩。東京都健康長寿医療センターの研究で、1日5,000歩以上でフレイルリスクが約50%低減
- 第2段階 (3〜6か月) : 6,000〜7,000歩へ。週に500〜1,000歩ずつ増やす
- 第3段階 (6か月以降) : 8,000歩。体調に合わせて無理なく調整
1日8分以上の速歩でもフレイル予防効果あり
スマートフォンのアプリや活動量計で記録することで、モチベーション維持と目標達成率が向上します。
歩数より重要な運動強度
フレイル予防では、歩数だけでなく「運動の強さ」が重要。
「WHO 2020」推奨量
- 週に150〜300分の中強度(※1)、または週に75〜150分の高強度(※2)、組み合わせでも可
- 筋力トレーニングを週2日以上を推奨
例 : 速歩・軽めの自転車・ラジオ体操 (第1) など、できる範囲から始め、段階的に増やす (※2) 高強度の目安:「息が大きく弾み、会話が数語しか続けられない」程度の運動のこと
例:ジョギング・水泳・重い荷物を持っての階段昇降など。心臓への負担も大きいため、ご自身の体調に合わせて無理なく取り入れましょう
国内ガイド (厚労省 2023) の補足
- 成人は「少し息が弾む」強さの活動を毎日60分を目安
- 座りっぱなしを減らす + 筋力トレーニング週2〜3日を推奨
『少し息が弾む』強さの活動を、週に150分を目安にコツコツ行う。これがフレイル予防の近道です。
効果的なウォーキング方法と正しいフォーム
ただ歩くだけでは十分な効果は得られません。フレイル予防に効果的な正しいフォームをマスターしましょう。
60代の正しい歩き方5つのポイント
「ただなんとなく歩く」のと、「姿勢や足の運びを意識して歩く」のとでは、使われる筋肉や関節への負担のかかり方が変わり、運動効果にも違いが生まれます。
ウォーキングフォームの5つのポイント
- 目線は遠くを見る
目線は自然な高さで遠くを見るように意識します。下を向くと背筋が丸まってしまうため、前方を見ることで姿勢が整います。 - 肘を後ろに引く
腕は肘から直角になるように曲げ、後ろに引くように動かします。これにより上半身の筋肉も使われ、運動効果が高まります。 - 背筋を伸ばす
頭上から吊り上げられているような感覚で背筋を伸ばします。姿勢が良くなると自然と歩幅も広がります - かかとから着地する
かかとから着地し、足裏全体、つま先へと体重を移動させます。この動作が骨への適度な刺激となり、骨密度維持にもつながります。 - 理想の歩幅は「身長 ✕ 0.45」
普段より広めの歩幅を意識しましょう。身長160cmの方なら約72cmが理想の歩幅です。
インターバル速歩のやり方
インターバル速歩は、信州大学の能勢博特任教授らによって開発された、高い体力向上効果が期待できるウォーキングメソッドです。最新の研究 (信州大学 増木静江教授ら) では、体力維持だけでなく「骨密度の向上」にも効果があることが新たに実証されています。
【実践方法】- 速歩3分 : 「ややきつい」と感じる、息が弾む程度の速度で歩く
- ゆっくり歩き3分 : 呼吸を整えながら、リラックスして歩く
- 1〜2を交互に5セット繰り返す : 1日の合計「速歩」時間を15分にする)
- 頻度 : 週4日以上を目安に行います (週の速歩合計が60分以上で効果が最大化します) 。
- 数回に分けてもOK : 朝2セット、夕方3セットのように、1日のうちで分けて行っても効果は変わりません。
- 日常への取り入れ方 : 「信号から信号まで」「電柱2本分」など、身近な目印を決めて速歩に切り替えると、買い物や通勤時でも無理なく続けられます。
靴選びと靴底チェック
適切な靴選びは転倒リスクを減らし、膝や腰の痛みを予防します。国立長寿医療研究センターが推奨する、靴選びのポイントをご紹介します。
安全で歩きやすい靴の条件
靴選びで最も大切なのは、軽くて脱ぎ履きしやすく、足をしっかり保護できることです。重い靴は足への負担が大きく、疲れやすくなります。マジックテープやファスナーで調節できるタイプなら、着脱が簡単で毎日のウォーキングも続けやすくなります。
足の甲からかかとまでしっかり覆われ、かかと部分が包み込まれるようにフィットする靴を選びましょう。足の指が自由に動かせる程度のゆとりがありながら、靴の中で足が上下・前後・左右にずれないものが理想です。
靴底は接地面積が広く滑りにくいものを選び、足の指の関節部分で曲がる柔軟性があることも重要です。これにより、自然な歩行動作がしやすくなり、転倒リスクを軽減できます。
ウォーキング効果を高める+α習慣
栄養と補助運動を組み合わせることで、フレイル予防の効果はさらに高まります。
たんぱく質摂取で筋肉を守る
運動だけでは筋肉は増えません。たんぱく質が不足していると、運動により筋肉が分解されるリスクがあります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準 (2020年版) 」によると、65歳以上は体重1kgあたり1.0〜1.2gのたんぱく質摂取が推奨されています (体重50kgの方 : 50〜60g/日、体重60kgの方 : 60〜72g/日) 。
運動後30分以内が最も効果的 (ゴールデンタイム) です。肉類、魚類、卵 (1個約6g) 、大豆製品を毎食に取り入れましょう。
脳トレ「コグニサイズ」
コグニサイズは、国立長寿医療研究センターが開発した認知症予防運動プログラムです。運動と認知課題を組み合わせることで、脳と体を同時に鍛えます。
ウォーキング中の実践例
- 100から7を引き続ける暗算
- しりとり
- 川柳を考えながら歩くなど
自宅でできる簡単トレーニング
週2〜3回、自宅で簡単なトレーニングを取り入れましょう。
推奨される3つのトレーニング
- スクワット : 10回 ✕ 3セット (いすを使った「いすスクワット」から)
- かかと上げ : 20回 ✕ 2セット (壁に手を添えて)
- 膝伸ばし : 左右各10回 ✕ 2セット(5秒かけて上げ、5秒かけて下す)
安全に楽しく続けるために|60代が知っておくべき注意点
フレイル予防は継続が大切です。安全に、楽しく続けるための実践的なコツをお伝えします。
運動前の準備運動とアフターケア
- ウォーミングアップ (5分) : 足首回し、膝の屈伸、股関節回し、腕回し各10回
- クールダウン (5分) : ふくらはぎ伸ばし、太もも前後伸ばし各30秒
- 水分補給 : 運動前にコップ1杯、運動中は15〜20分ごとに一口、運動後にコップ1〜2杯
- 医師に相談すべき症状 : 歩行中の胸の痛み、息切れ、持続的な膝・腰の痛み、頻繁なめまい
アプリ活用と社会参加
- アプリ・デジタルツールの活用
歩数の自動記録とグラフ表示、目標達成時のバッジ機能、友人との歩数競争など。東京都健康長寿医療センターの研究によると、記録を「見える化」することで継続率が約1.5倍向上します。 - 社会参加による継続効果
地域のウォーキングイベント参加、友人・家族と歩くことで継続率が単独の約3倍に向上します。
よくある質問 (FAQ)
- Q1. 雨の日が続いて歩けない場合、効果は失われますか?
- A. 2〜3日お休みしても、これまでの効果がすぐになくなることはありません。厚生労働省の指針でも、無理のない範囲での継続が推奨されています。天候が回復したら再開すれば問題ありません。
- Q2. 膝が痛いのですが、ウォーキングは続けてもよいですか?
- A. 軽い違和感程度なら、歩幅を狭め、ゆっくりしたペースで継続できます。ただし、歩行中や歩行後に痛みが増す場合は、整形外科医に相談してください。
- Q3. 1日何回かに分けて歩いても効果はありますか?
- A. はい、効果は変わりません。東京都健康長寿医療センターの研究でも、1日の合計歩数が重要であり、朝の散歩20分、買い物往復20分のように分割してもフレイル予防効果は得られます。
- Q4. 何歳から始めても遅くないですか?
- A. 何歳からでも遅くありません。国立長寿医療研究センターの研究では、70代、80代から運動習慣を始めた方でも、筋力向上や転倒予防効果が確認されています。ただし、開始時は医師に相談し、無理のないペースで始めることが大切です。
まとめ | 60代の今こそ正しいウォーキングでフレイル予防を
フレイル予防のウォーキングは、完璧を目指す必要はありません。大切なのは、今日から始めて、無理なく続けることです。あなたのペースで、あなたらしい健康づくりを始めましょう。
まずは10分、少し早歩きから始めよう
今日から始める5つのステップ- まずは5,000歩から : 1日2〜3回に分けてもOK
- 正しいフォームで : 目線は前方15m先、かかとから着地
- たんぱく質+トレーニング : 毎食20g以上、週2〜3回の自宅トレーニング
- 仲間と歩く : 継続率が3倍に向上
- 今日の一歩が未来の健康を作る : 60代は健康寿命の分岐点
フレイル予防は特別なことではありません。毎日の小さな積み重ねが、10年後、20年後の「自分らしい生活」を守ります。今日から、あなたのペースで始めてみませんか?
SONOSAKI LIFEでは、健康づくりに役立つ情報や介護の「お悩み」に寄り添う情報をお届けしております。ほかのコラムもぜひ、ご覧ください。




