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【理学療法士監修】 メジャーな2種類の 認知症検査について | 長谷川式とMMSEの違いとポイント

長谷川式とMMSEの違い使い分けのポイント

この記事では、認知症スクリーニング検査の代表格「長谷川式 (HDS-R) 」と「MMSE」の違いを、理学療法士が分かりやすく解説します。

長谷川式とMMSEの違いは、評価の重点と実施方法にあります。
長谷川式は記憶力重視で身体機能の影響を受けにくく、すべて口頭で完結します。一方、MMSEは多領域を評価し、視空間認知も含む図形模写などの動作性課題があります。どちらも30点満点ですが、カットオフ値 (長谷川式20点以下、MMSE23点以下で認知症疑い) や質問内容が異なるため、対象者の身体状態や評価目的に応じた使い分けが重要です。

x点数基準 (カットオフ値) や評価項目の違い、身体状況に合わせた使い分けのポイントを比較表でまとめました。

認知症検査の代表格「長谷川式」と「MMSE」とは?

診断をするシニア女性

認知症の早期発見において、簡便で信頼性の高いスクリーニング検査は重要な役割を果たします。現在、日本の医療・介護現場で最も広く使用されているのが「改訂長谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R) 」と「ミニメンタルステート検査 (MMSE) 」です。

日本神経学会の「認知症疾患診療ガイドライン2017」においても、両検査は標準的なスクリーニングツールとして推奨されています。どちらも30点満点ですが、評価内容や実施方法には明確な違いがあります。

出典:日本神経学会 認知症疾患診療ガイドライン2017

長谷川式認知症スケール (HDS-R) とは

1991年に加藤伸司氏らによって開発された日本発の認知機能検査です。アルツハイマー型認知症の早期発見を主眼に、特に「記憶力」中心の認知機能障がいを捉えます。

長谷川式 (HDS-R) の特徴

  • すべて口頭で完結
  • 動作性課題なし
  • 5〜10分で実施
  • 手指の麻痺や視覚障がいでも実施可能
  • カットオフ値:20/21点で感度93%、特異度86%

検査内容 (全9項目・30点満点)

  1. 年齢 (1点)
  2. 日時の見当識 (4点) :「今年は何年ですか?」「今日は何月何日ですか?」
  3. 場所の見当識 (2点) :「ここはどこですか?」
  4. 即時記憶 (3点) :「桜、猫、電車」の3つの言葉を復唱
  5. 計算 (2点) :「100から7を引くと?」「それから7を引くと?」
  6. 逆唱 (2点) :「6-8-2」を逆から言う
  7. 遅延再生 (6点) :先ほどの3つの言葉を思い出す
  8. 物品記銘 (5点) :5つの物品を見せて隠し、何があったか答える
  9. 言語流暢性 (5点) :「野菜の名前をできるだけ多く言ってください」
出典:加藤伸司ほか 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の作成.老年精神医学雑誌1991; 2(11):1339-1347

MMSE (ミニメンタルステート検査) とは

1975年にアメリカのFolstein夫妻が開発した世界標準の認知機能検査です。日本では2006年に杉下守弘氏による日本語版 (MMSE-J) が作成され、妥当性が検証されています。

MMSEの特徴

  • 見当識、記憶、計算、言語や図形模写など多領域を評価
  • 動作性課題を含む
  • 10〜15分で実施
  • カットオフ値:23/24点 (認知症) 、27/28点 (MCI)

検査内容 (全11項目・30点満点)

  1. 時間の見当識 (5点) :年、季節、月、日、曜日
  2. 場所の見当識 (5点) :国、都道府県、市区町村、建物、階数
  3. 即時記憶 (3点) :3つの単語を復唱
  4. 注意と計算 (5点) :「100から7を5回引く」または「WORLD」を逆から綴る
  5. 遅延再生 (3点) :先ほどの3つの単語を思い出す
  6. 物品呼称 (2点) :時計と鉛筆を見せて名前を言う
  7. 文章復唱 (1点) :「みんなで力を合わせて綱を引きます」を復唱
  8. 3段階口頭指示 (3点) :「紙を右手で取り、半分に折り、膝の上に置く」
  9. 読字理解 (1点) :「目を閉じてください」と書いた文を読んでその通りに行動
  10. 自発書字 (1点) :意味のある文章を書く
  11. 図形模写 (1点) :重なった2つの五角形を描く
出典:FolsteinMF,et al.Mini-mental state.J Psychiatr Res1975;12:189-198 / 杉下守弘ほか MMSE-J原法の妥当性と信頼性に関する再検討.認知神経科学2018;20(2): 91-100

【監修者解説】なぜ違いを正しく理解する必要があるのか

専門職として最も注意しているのは、「身体機能による測定誤差」を防ぐことです。
脳梗塞で手に麻痺がある方にMMSEを実施すると、「図形が描けない」「字が書けない」ために減点されます。逆に、長谷川式は記憶力に特化しているため、レビー小体型認知症などの初期症状を見落とすリスクもあります。両者の特性を理解し、適切に使い分けることが「正確なアセスメント」の第一歩です。

長谷川式とMMSEの違いを徹底比較 (比較表あり)

検査結果を記入する女性

どちらも満点は30点ですが、評価する領域には大きな隔たりがあります。その決定的な違いを一覧表で分かりやすく整理しました。

【一覧表】評価項目・点数・実施方法の違い

項目 長谷川式 (HDS-R) MMSE
開発国 (年) 日本 (1991年改訂) アメリカ (1975年)
評価項目数 9項目 11項目
カットオフ値 20/21点 (認知症) 23/24点 (認知症)
27/28点 (MCI)
所要時間 5〜10分 10〜15分
回答方法 すべて口頭 口頭+記述+図形模写
評価の重点 記憶力 多領域の総合力
身体機能の影響 受けにくい 受けやすい
出典:加藤伸司ほか 老年精神医学雑誌1991; 2(11):1339-1347
杉下守弘ほか認知神経科学2018; 20(2):91-100

評価項目と質問内容の決定的な違い

  • 長谷川式:30点中11点が記憶力の評価 (遅延再生6点+物品記銘5点) に配分。アルツハイマー型認知症で早期から障がいされるエピソード記憶を鋭敏に検出します。
  • MMSE:「3段階口頭指示」「自発書字」「図形模写」といった動作性課題を含む。重なった2つの五角形を描く「図形模写」は、視空間認知能力の評価に不可欠です。
出典:加藤伸司.改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の理解と活用.老年臨床心理学研究2023;4:47-55

点数基準 (カットオフ値) の根拠と解釈

スコアカードを選択する男性の手

「カットオフ値」は非常に重要ですが、数字だけに囚われてはいけません。厚生労働省の資料でも強調されている通り、これらの点数はあくまで「認知機能低下の疑いの有無」を判断する参考指標です。

出典:厚生労働省 認知機能の評価表検証調査 実施要領 (令和5年度)
  • 長谷川式 (20/21点) :20点以下を認知症の疑いとします。開発者の加藤氏は得点による重症度分類は行わないよう明記しており、どの項目を間違えたかの分析を重視しています。
    出典:加藤伸司ほか 老年精神医学雑誌1991; 2(11):1339-1347
  • MMSE (23/24点・27/28点) :一般的に23点以下を認知症の疑いとします。杉下氏らの研究では、健常者とMCIの弁別には27/28点が最適と報告されています。
    出典:杉下守弘ほか 認知神経科学2018;20(2):91-100

それぞれのメリット・デメリットを解説

現場で実際に使用しているからこそ分かる、各検査の強みと弱点を詳しくお伝えします。

説明をする医師

長谷川式 (HDS-R) のメリット・デメリット

  • メリット:道具不要でベッドサイドでも実施可能/身体障がいの影響を受けにくい/年齢や教育歴の影響が少ない
  • デメリット:視空間認知機能の評価なし/記憶障がいが目立ちにくいタイプ (前頭側頭型認知症など) の早期発見には不向き
  • 出典:加藤伸司ほか 老年精神医学雑誌1991;2(11):1339-1347

MMSEのメリット・デメリット

  • メリット:多領域をバランスよく評価世界標準でデータ蓄積が豊富、国際比較が可能
  • デメリット:筆記用具等の準備が必要手指の麻痺や視覚障がいがある場合、認知機能とは無関係に点数が下がる可能性
  • 出典:日本神経学会 認知症疾患診療ガイドライン2017

【状況別】どちらを使うべき?使い分けのポイント

考えるシニア夫婦

目の前の対象者に対してどちらの検査が最適か、判断に迷った際の指針を状況別にまとめました。理学療法士が現場で行う判断基準を参考にしてください。

身体機能に合わせて選ぶ

長谷川式を選ぶべきケース

  • 脳卒中後遺症で片麻痺
  • パーキンソン病で手の震え
  • 関節リウマチで手指の変形
  • 白内障や緑内障で視力低下

MMSEを選ぶべきケース

  • 身体機能に問題なく、空間認識 (道に迷う、道具が使えない等) の評価が必要
出典:厚生労働省.認知機能の評価表検証調査 実施要領 (令和5年度)

評価目的と現場で選ぶ

検査実施時の注意点と家族への伝え方

女性へ説明をする医者

検査は単に数字を出すだけのものではありません。本人の自尊心を守りつつ、ご家族に安心と正しい理解を届けることが大切です。

本人の自尊心を守る環境づくり

落ち着ける個室で実施/「テスト」という言葉を避ける/難聴がある場合は事前確認/意識がはっきりしている時に実施

出典:厚生労働省 認知機能の評価表検証調査 実施要領 (令和5年度)

家族への適切なフィードバック

  • ✗ 避けるべき:「20点以下なので認知症です」
  • ◯ 推奨:「記憶の項目で気になる点があったので、一度専門医に詳しく診てもらいましょう」

点数は目安であり、日常生活での本人の「強み」や「工夫できる点」に焦点を当てることが大切です。

出典:厚生労働省 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン (平成30年6月)

よくある質問 (FAQ)

考えるシニア女性

医療・介護の現場や、実際にご家族から寄せられる「よくある疑問」をまとめました。日々のケアの参考にしてください。

Q1. 2つの検査を同時に行う必要はありますか?
A. 必須ではありませんが、日本神経学会のガイドラインでは「複数の検査の組み合わせ」が推奨されています。長谷川式で「記憶力」を、MMSEで「視空間認知」を評価するなど、併用することで見落としを防ぎます。
出典:日本神経学会.認知症疾患診療ガイドライン2017
Q2. どのくらいの頻度で再検査をするのが適切ですか?
A. 一般的には半年〜1年程度の間隔が標準的です。頻繁に行うと「学習効果」が出てしまい、正確な評価ができなくなります。ただし、急激に症状が進んだ場合や薬の調整時には、医師の判断で数か月後に行うこともあります。
Q3. 本人が検査を嫌がる場合、どのように誘えば良いですか?
A. 「認知症の検査」と伝えると自尊心を傷つけるため、「健康診断の一環」や「体調確認のお話し合い」としてお誘いします。現場では「最近の体調についてお聞きしたいので、少しお話ししましょう」とお声がけすることもあります。
Q4. 自宅で家族が実施しても正確な結果が出ますか?
A. 家族が実施すると、本人が甘えたり緊張しすぎたりすることがあります。また、無意識に「誘導」が起きやすいため、第三者の専門職による客観的な評価が推奨されます。
Q5. 点数は良いのに、日常生活でのおかしな行動が目立つのはなぜですか?
検査の点数はあくまで「目安」です。記憶力は保たれているものの「判断力」や「空間把握能力」だけが低下しているタイプ (レビー小体型など) の場合、点数が高く出ることがあります。「日常生活で何に困っているか」という観察結果を専門医に伝えることが、正しい診断への近道です。

まとめ|補完的な活用で質の高いケアへ

長谷川式 (HDS-R) とMMSEは、どちらか一方が優れているのではなく、それぞれが異なる役割を持つ「補完関係」にあります。

  • 長谷川式:簡便・高精度 (記憶重視) ・身体機能に強い
  • MMSE:多面的・世界標準・MCIの検出に有効

大切なのは、点数という数字に振り回されず、本人がどのような生活のしづらさを抱えているかを読み取ることです。専門職と連携し、これらの検査を「本人らしい生活を支えるためのヒント」として活用してください。

SONOSAKI LIFEでは、健康づくりに役立つ情報や介護の「お悩み」に寄り添う情報をお届けしております。ほかのコラムもぜひ、ご覧ください。

 記事監修 
  • 監修者写真
    小林 修
    株式会社DIGITAL LIFE
    WEBサービス事業
    理学療法士
    社会福祉主事

     

  • 大学卒業後、理学療法士や介護事業所の管理者としてデイサービス、特別養護老人ホーム、ショートステイなど、10年以上の現場経験があり、介護サービスの運営、スタッフ教育に従事。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、健康増進サービスの企画、開発に携わっている。