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地域包括支援センターとは? 役割から活用方法までわかりやすく解説

高齢になった親の介護について考えたとき「どこに相談すればいいのか」「具体的に何をしていけばいいのか」解らないことが多々あるかと思います。そんなときに頼りになるのが地域包括支援センターです。

今回は、介護の心配や不安を感じたとき、あるいは介護について考え始めた際に、地域包括支援センターとどう関わっていけばよいのか、 その役割から活用方法までを分かりやすく解説します。

地域包括支援センターの役割とは


地域包括支援センターは高齢者を介護・保健・医療・福祉などの側面から支える「総合相談窓口」です。 全国の市区町村に設置されており、2020年4月時点で5,221か所あります。 設置主体は各市区町村で、直営が21.2%、社会福祉法人や民間企業などの委託運営が78.9%となっています。 設置区域は各市区町村の判断に委ねられていますが、ほとんどの場合は人口2~3万人程度(中学校区域)に1か所設置されています。

少子高齢化対策として国が実施している「地域包括ケアシステム」は2025年をめどに整備が進められています。 「地域包括ケアシステム」とは、高齢者が介護を必要とするようになっても、住み慣れた地域で生活し続けられるように、必要な介護・医療・介護予防・生活支援などの サービスを地域が一体となって提供できるような体制です。 このような「地域包括ケアシステム」を支える拠点が地域包括支援センターとなります。

域包括支援センターを利用できる方


地域包括支援センターの利用対象となるのは「対象地域に暮らしている65歳以上の高齢者またはその支援者」になります。 支援者というのは高齢者に関係するご家族も含まれ、実際に介護が必要でない段階からでも相談に応じてくれます。 地域住民の方でも近隣の高齢者への心配やトラブルが生じた場合にも相談することができます。

地域包括支援センターの利用に関しては2つほど注意点があります。

支援や介護を必要とする方と、相談したい方が離れて暮らしている場合

例えば離れて暮らす親の介護について相談したい場合は「親が住んでいる場所の地域包括支援センター」に問い合わせが必要となります。

地域包括支援センターの呼び名が異なる場合がある

どの市区町村でも正式名称は「地域包括支援センター」ですが、身近な相談窓口になるように愛称(通称)を設けている場合があります。 例えば苫小牧市「とまほっと」、静岡市「まるけあ」、京都市「高齢サポート」、佐賀市「おたっしゃ本舗」など、いろいろな呼び方がありますので、HPなどで調べておくとよいでしょう。

地域包括支援センターに在籍している職種と担っている業務


地域包括支援センターでは保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)などの専門家が所属しており、それぞれの専門性を活かして連携しながら業務を行っています。

それぞれの職種が対応する内容は下表になります。

※成年後見制度とは…認知症などで判断能力や意思能力が衰えた状態がある程度の期間続いている場合に、本人の判断を他の者が補うことで法律的に支援する制度です。


地域包括支援センターに在籍している職員が専門性を発揮し、さまざまな外部機関とも連携しながら地域で暮らす高齢者を支えています。



地域包括支援センターには「総合相談支援業務」「権利擁護義務」「介護予防ケアマネジメント」「包括的・継続的ケアマネジメント」の4つの業務があります。

総合相談支援

一人暮らしの高齢者や認知症への不安や悩み、身体機能の低下など、幅広い相談に応じています。行政や医療、介護保険サービスなどの垣根を超えて、必要なサービスや制度の紹介も行います。介護保険制度の申請窓口も担っています。

権利擁護

高齢者が安心して生活できるように、あらゆる権利を守る取り組みをしています。具体的には詐欺や悪徳商法の被害、高齢者虐待の防止や早期発見などの対応です。 認知症を発症し、金銭管理や必要な手続きを高齢者自身で行うことが困難になった場合に「成年後見制度」や「※地域福祉権利擁護事業」を紹介し、利用のサポートも行います。
※「地域福祉権利擁護事業」は社会福祉協議会が福祉サービスの利用援助、日常的金銭管理サービス、書類などの預かりサービスを行います。

介護予防ケアマネジメント

介護保険の要介護認定で「要支援」と判定を受けた方に対し「介護予防ケアプラン」を作成しています。「介護予防ケアプラン」は介護予防サービスを利用するための計画で、利用状況を確認しながら適宜見直しを行います。 また、要支援や介護状態になる可能性が高い高齢者に対して、運動機能や体力の向上、栄養状態改善のために教室を開催、介護予防に関するサービスの紹介なども行っています。

包括的・継続的ケアマネジメント

高齢者が暮らしやすい地域にするため、医療・保健・介護分野の専門家から地域住民まで幅広いネットワークをつくり、高齢者の課題解決や調整ができるような体制を構築します。 具体的には※地域ケア会議の開催 、ケアマネジャーへの相談やアドバイス、支援困難な事例への指導やサポートを実施しています。 ※地域ケア会議とは他職種の専門家が協働して、地域包括ケアシステムの実現に向けて地区町村や地域包括支援センターが開催する会議体です。

介護や高齢者に対して不安があれば地域包括支援センターに相談を


地域包括支援センターは高齢者に対しての不安や悩みなどを幅広く相談できる機関です。 高齢者本人やそのご家族、全く関係のない方でも高齢者に対して少しでも不安を感じることがあれば、相談に応じています。 避けたいのは、不安をそのままにすることで大きな問題に発展してしまうことです。 「こんな相談しても大丈夫かな?」と思うこともあるかもしれませんが、地域包括支援センターは高齢者の生活を支えて守る機関なので、真摯に対応してくれます。

さらに、高齢者が介護状態になることを遠ざけるためにも、介護予防の観点で地域包括支援センターを利用していきましょう。 介護に直面する前に、高齢者本人ができること・介護に関わる家族ができることを知り、さまざまな地域のサービスを活用していきましょう。

地域包括支援センター相談事例


地域包括支援センターは実際にどのような相談に応じているのか、事例をみていきましょう。

1.介護が必要になったが、どうすればいいのか分らない

相談者は55歳のAさんです。
一人暮らしの母親が大腿骨骨折で入院し、手術・リハビリを行いましたが、退院後は家事を一人で行うことが難しくなってしまいました。 Aさんは車で2時間の距離に住んでおり、平日は仕事もあるため手伝うことができません。 そこで地域包括支援センターに相談しました。
●地域包括支援センターの対応
職員は現状を把握した上で介護保険サービスの利用を提案しました。 Aさんはサービスが利用できるように申請を行い、翌週からはホームヘルパー(訪問介護)が入るようになりました。 日常家事をホームヘルパーに支援してもらい、安定した生活を過ごせるようになりました。
地域包括支援センターは介護保険の申請など、介護をするうえで必要な手続きについて教えてくれます。
 

2.介護予防と高齢者の交流づくり

相談者は45歳のBさんです。
同居している義母が体力の衰えから外出が億劫になり、買い物や散歩に出かけなくなりました。 好きだった庭の手入れもしなくなり、毎日をぼんやり過ごすことが増えてきました。 引きこもった生活を心配したBさんは地域包括支援センターに相談しました。


●地域包括支援センターの対応
職員はBさんの話を聞き取り、高齢者向けの体操教室を紹介しました。 地域のカルチャーセンターで実施されており、3ヵ月に1回のペースでガーデニング教室があることも知りました。 義母にすすめると興味を持ち、さっそくガーデニング教室に参加しました。 義母はそこで知り合った同年代の女性と仲良くなり、体操教室にも定期的に参加するようになりました。
高齢者が要介護状態にならないように地域で取り組まれている介護予防教室などを案内しています。

3.近隣の高齢者が心配

相談者は35歳のCさんです
近隣に真冬なのに薄着で出歩く高齢者が気になっていました。 ある日「寒いですね」と声を掛けると話がかみ合わず、不明瞭な返答が返ってきました。 心配なので地域包括支援センターへ相談しました。
●地域包括支援センターの対応
職員はすぐに高齢者の自宅を訪問すると、認知症を患っている疑いがあることが解りました。 親族や介護サービスを提供している事業者と連絡を取り、連携して解決に向けて対応しました。
地域包括支援センターは「近隣に心配な高齢者がいる」という相談にも応じています。

4.介護がはじまる前の不安や悩み

58歳のDさんは遠方に暮らす両親の家に帰省したときに、将来の介護について不安になりました。
兄弟全員が遠方に暮らしているので、何かあったときにどうすればいいのか、今からできる準備はあるのかを知りたくて、地域包括支援センターに相談しました。
●地域包括支援センターの対応
将来介護が必要になったときに備えて、介護保険制度のパンフレットや近隣の施設について情報を提供。
地域の民生委員と連携して、月1回程度の頻度で両親に「困りごとはないか」声を掛けるようにしました。
まだ介護が始まっていない状況でも、不安や心配があれば地域包括支援センターに相談することができます。

5.高齢者虐待にストップを

マンション住まいの50歳Eさんは、隣の家からときどき大きな怒鳴り声が聞こえ、気になっていました。
高齢な方とその息子さんが住んでいることは知っていました。Eさんは心配なので地域包括支援センターに相談しました。

●地域包括支援センターの対応
すぐに職員が隣の家を訪問すると、介護ストレスで息子さんが虐待していることが解りました。
すぐに※居宅介護支援事業所のケアマネジャーが決められ、介護サービス事業者と連携して介護に介入し、地域包括支援センターを中心に関係者が集まり会議が開かれました。
※居宅介護支援事業所:ケアマネジャーが常駐している事業所
高齢者虐待は介護疲れや介護ストレスが原因となることが多々あります。地域包括支援センターは行政や地域の専門職と連携し、解決に向けて先導していく役割があります。

地域包括支援センターは、介護保険サービスについての申請手続きから具体的な利用案内も行っています。介護は多くの方にとって初めて直面する問題です。 家族だけで解決することは非常に難しいので、地域包括支援センターを活用して、介護負担を軽くしていきましょう。
 記事監修 
  • 監修者写真
    若橋 綾
    株式会社DIGITALLIFE
    管理部
    介護支援専門員

     

  • 介護支援専門員や介護事業所の管理者として10年以上の現場経験があり、家族問題を抱える家族や虐待案件も含め様々なケースを担当。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、企業向けに介護離職予防を目的としたセミナーの開催や介護に関する記事作成を行うなど活躍は多岐にわたっている。