買い物かご

特集から探す

アクティビティ

認知症の症状を落ち着かせる特効薬は【水分】

前回の記事では高齢者には1日1,500ml以上の水分が必要だとお伝えしました。特に認知症の方は水分をしっかり摂らないと、不安感やイライラなどが強まり「落ち着かない」状態になっていきます。



では、水分がどのくらい足りなくなるとどんな悪影響が生じてくるのでしょうか。今回は体内の水分が不足することで起こる問題について、具体的にお伝えしていきます。

軽度でも怖い脱水症状

認知症の症状で、夕方になると「不機嫌になる」「拒否が強くなる」「外へ出ようとする」「怒りっぽくなる」など、落ち着かない状態になることがあります。なぜ、夕方になるとそのような症状が出てくるのでしょう。


夕暮れ症候群の原因は【脱水】!

例えば日が暮れてくると荷物をまとめて、家族に向かい「お邪魔しました。そろそろ家に帰ります」と丁寧に頭を下げて家を出ていこうとする。

あるいは夕暮れ時にイライラして怒り出す、興奮して落ち着かない状態になる。本人に理由を聞いてもよくわからず、家族がなだめたり説得したりしてもらちが明かない。


夕暮れ症候群

このように夕方になると不穏になる特徴から「夕暮れ症候群」と呼ばれています。


この症状の原因は【脱水】です。体内に蓄積されていた水分が皮膚からの蒸発や尿などで排せつされ、夕方には枯渇してしまい脱水を起こしているのです。そのために認知力が低下し、さまざまな症状が出てきます。


「家に帰る」というケースでは「ここは自分の家だ」という認知ができなくなっている状態です。「怒り出す」「イライラして落ち着きがなくなる」のは、さまざまな状況を認知できないために混乱状態にあるのだと考えられます。軽度の脱水でも認知症の症状に悪影響を及ぼします。

水分欠乏で起こること

体内から水分が足りなくなることで、さまざまな症状がおこります。段階に分けて説明していきましょう。


1~2%の水分が不足することで起こること

体重50㎏の人にとって、体内水分の1%とはどのくらいの量でしょう。

高齢者は体の50%が水分です。体重50㎏の人であれば25㎏が水分となります。25㎏を容量にすると25,000mlとなり、その1%は250mlです。


50㎏÷2=25㎏
25㎏を容量にすると25,000ml
25,000mlの2パーセント 25,000×0.01=250ml

1~2%は250~500mlとなり、500mlのペットボトルの半分~1本分となります。たったこれだけの量が欠乏するだけで「疲労感」を感じやすくなり、「ぼんやり」した状態となります。つまり、意識障害を起こすのです。


水分不足

1~2%の水分が不足

  •  疲労感

  •  ぼんやり、うとうと

  •  イライラ

  •  落ち着きがなくなる


2~3%の水分が不足して起こること

体から2~3%(体重50㎏であれば500~750ml)の水分が欠乏すると体温が上昇してきます。
体の核心温度は37℃です。その熱を効率よく体外に棄てるために「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」として、皮膚や呼吸から水分を蒸発させています。この蒸発させる水分が不足することで体温が上昇してしまうのです。


さらに血液が濃縮されることでドロドロの血液となり脳梗塞を起こす危険性が高まってきます。


2~3%の水分が不足

  •  体温の上昇

  •  血液がドロドロ

  •  脳梗塞など循環器に影響


5%の水分が不足して起こること

体から5%(体重50㎏であれば1,250ml)の水分が欠乏すると「ふらふら」して転倒しやすくなるなど、運動機能が低下していきます。持久力もなくなり、普段なら何でもない距離を歩けなくなります。循環機能にも影響を及ぼしているので「息切れ」や「動悸」を感じることもあるかもしれません。


5%の水分が不足

  •  ふらつく

  •  転倒のリスクが増える

  •  動悸、息切れ

  •  持久力の低下


7%の水分が不足して起こること

体から7%(体重50㎏であれば1,750ml)の水分が欠乏すると「幻覚」が生じます。認知症であれば「せん妄」とも呼ばれ、興奮を伴うこともあります。


7%の水分が不足

  •  幻覚、幻聴

  •  意識混濁


10%の水分が不足して起こること

体から10%(体重50㎏であれば2,500ml)の水分が欠乏すると意識を消失してしまい、臓器が機能を停止して「死」に至ります。


10%の水分が不足

  •  死に至る


猛暑の時期に熱中症で亡くなるのは、10%の水分が欠乏した状態なのです。年齢に関係なく熱中症も意識障害から起こります。1人のときに熱中症になると、意識障害を起こしているので助けを求めることができません。そのため、死に至りやすいのです。


その他の症状

認知症の人にとって水分不足は、軽度でも多くの症状をもたらします。


  •  尿意が鈍くなる、失禁が増える

  •  注意力の低下

  •  活動性や意欲の低下

  •  歩行や立つことができない、あるいは不安定

  •  食欲低下

  •  唾液が減る、咽(むせ)やすくなる


家族の介護負担が増し、水分を補わないことでさらに状態が悪化していきます。
逆に、常に水分を意識して1日を通してしっかりと摂取していけば、良い状態が維持できるようになります。


水分と室温

認知症を落ち着かせる特効薬は【水分】 まとめ

認知症を落ち着かせる特効薬は「水」となります。1日に1,500ml以上の水分を摂ることを習慣にしていきましょう。季節や室温・湿度などで必要量は変わってきます。1,500mlを最低ラインと考え、体内の水分が不足しないよう管理しましょう。
次回は効率よく水分を摂る方法についてお伝えしていきます。



 記事監修 
  • 監修者写真
    若橋 綾
    株式会社DIGITALLIFE
    WEBサービス事業
    介護支援専門員

     

  • 介護支援専門員や介護事業所の管理者として10年以上の現場経験があり、家族問題を抱える家族や虐待案件も含め様々なケースを担当。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、企業向けに介護離職予防を目的としたセミナーの開催や介護に関する記事作成を行うなど活躍は多岐にわたっている。