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【事故から振り返る】高齢者にとって安全な手押し車・シルバーカー利用法

シルバーカーを押して散歩をする高齢者の女性

2024年6月、東京都西東京市のスーパーで、高齢女性がシルバーカー利用中にエスカレーターで転倒する事故が発生し、尊い命が失われました。

このような事故は、他人事ではありません。

シルバーカーは高齢者にとって大切な歩行補助具ですが、使用方法や場面を誤ると重大な事故につながる可能性があります。

本記事では、事故を教訓に「どうすれば防げたのか」「安全にシルバーカーを使うための基本」について詳しく解説します。家族や友人にもぜひ読んでいただき、大切な方が安全に日常生活を送れる手助けになれば幸いです。

1. 事故の概要

2024年6月12日午前10時20分頃、東京都西東京市東伏見のスーパー「オーケー東伏見店」で、80代の女性がシルバーカーを利用しながら下りエスカレーターを使用中に転倒し、左側の手すりと床の間に首を挟まれてしまうという悲惨な事故が発生しました。 女性はすぐに搬送されましたが、搬送先の病院で約1時間後に死亡が確認されました。 この女性は、歩行を補助するためにシルバーカー(手押し車)を使用していました。

事故が発生したのは、店舗の1階と地下1階を結ぶエスカレーターでした。警視庁の発表によれば、女性はシルバーカーを1段下のステップに置いて自分もエスカレーターに乗っていましたが、地下1階に到着して降りようとした際に転倒し、首が動いているエスカレーターの手すりと床の間に挟まれてしまいました。警視庁は、シルバーカーの車輪がエスカレーターの降り口で引っかかり、そのために女性がバランスを崩して転倒した可能性が高いとみています。

日本エレベーター協会(東京)によると、2018年から2019年の間に全国で1,550件のエスカレーター事故が発生しており、このうち転倒事故が963件、靴や衣服などが挟まれる事故が448件に上ります。同協会は、 「エスカレーターのステップ上では歩いたり走ったりせず、またベビーカーやカート、シルバーカーなどを載せないように利用してほしい」と呼びかけています。

この事故は、高齢者がシルバーカーをエスカレーターで使用する際に潜在的な危険があることを浮き彫りにしました。シルバーカーは、高齢者にとって生活の支えになる歩行補助具ですが、エスカレーターのような動きがある場面では不安定になり、事故につながる可能性があり、注意が必要です。

参考:読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/national/20240613-OYT1T50028/

2. どうすれば手押し車・シルバーカーでの事故は防げたのか?

エレベーターホール

今回の事故を防ぐためには、どうすればよかったのでしょうか?ここでは今回のような事故を防ぐための具体的な対策についてみていきましょう。

エスカレーターの利用における注意点

エスカレーターはシルバーカーを使用するには不安定で危険な場所だと言えるでしょう。シルバーカーには車輪が付いているため、エスカレーターの動くステップに対して滑りやすくなっています。また、ステップが上下に動くことで段差が生じ、その段差にシルバーカーの車輪が引っかかる可能性が高くなります。

今回の事故でも、シルバーカーがエスカレーターの降り口で引っかかり、女性が転倒したと考えられています。このような引っかかりやすい場所でシルバーカーを利用するのはリスクが高いです。できるだけエスカレーターの利用は避けた方が良いでしょう。

エレベーターを優先する重要性

シルバーカーを利用する際には、できるだけエレベーターを優先的に利用するようにしましょう。

エレベーターは動きが水平であり、エスカレーターと異なり段差が生じないため、転倒のリスクは比較的小さくなります。特に、重い荷物を積んだシルバーカーを押す場合などは、よりその傾向が顕著になります。

今回のような事故を防ぐためにも、シルバーカー利用者にはエレベーターの優先利用を強くお勧めします。

家族やサポートの必要性

エレベーターがない場所もあるかもしれません、そのような場合は、周囲のサポートを求めることが非常に重要です。

例えば、家族や友人が一緒であれば、エレベーター利用を促してもらったり、シルバーカーを押してもらったりといった支援が得られます。また、店舗や施設のスタッフにサポートをお願いすることも一つの方法です。

自分だけで対応するのが難しいと感じた場合、周りの方々に協力を求めるようにしましょう。

3. 手押し車・シルバーカーの安全な利用方法

シルバーカー

シルバーカーを安全に利用するためには、事前の準備や適切な選び方、操作方法の理解が欠かせません。また、周囲の環境に配慮し、自身の身体状況に応じて使用方法を見直すことも重要です。シルバーカーは基本的に、お一人で歩くことができる方が荷物を載せたり、座って休憩をすることで活動範囲を広げるための道具です。そのため、歩行に不安がある方や歩行のサポートが必要な方には、シルバーカーではなく歩行車などの歩行補助具の使用をおすすめします。詳細はこちらの記事をご覧ください。

ここでは、シルバーカーを安全に使用するために最低限知っておきたいポイントについて解説します。

適切な選び方

シルバーカーは利用者の体に合ったものを選ぶことが大切です。

ハンドルの高さは、「身長÷2+5~15cm」が理想とされ、この高さに調整することでブレーキ操作がしやすくなり、安定して歩行ができます。また、シルバーカーには様々なタイプがあるため、軽量で持ち運びがしやすいものや、荷物を入れても安定して押せるものを選ぶことがポイントです。実際に使用するシーンや、自身の体力に合わせて選ぶと快適に利用できます。

使用前の点検

シルバーカーを使用する前には、取扱説明書をしっかり読み、機能や操作方法を確認しておきましょう。

取扱説明書には、安全に使うための注意点や、故障時の対応方法などが記載されていますので、きちんと理解しておくと安心です。また、毎回の使用前にはシルバーカー本体に異常がないかを簡単に点検し、特にブレーキや車輪の状態を確認することが大切です。ブレーキがしっかり効くか、車輪にひび割れや変形がないかをチェックすることで、予期せぬ事故を防げます。

安全な操作方法

シルバーカーを安全に操作するためには、ブレーキの使い方や正しい押し方を理解することが必要です。

ブレーキの操作性は非常に重要で、レバーで操作するタイプや、ペダル式などさまざまなタイプがあります。
実際に試して自分が使いやすいものを選ぶと、いざというときにしっかりと制御できるので安心です。

また、ブレーキをかけた状態でシルバーカーを押すと、タイヤが摩耗してブレーキが効かなくなる恐れがあるため、ハンドブレーキを握ったまま移動しないよう注意しましょう。

環境への注意

シルバーカーを使用する際には、周囲の環境に対する注意も欠かせません。

例えば、段差や踏切、電車のホームと列車の隙間など、移動の妨げになる場所では無理にシルバーカーを持ち上げようとせず、周囲の助けを求めるよう心がけましょう。踏切を横断する場合は、線路に対して直角に渡ることでスムーズに進むことができ、転倒のリスクを軽減できます。

4. 高齢者の方にお伝えいただきたいポイント

散歩中の高齢者

ここでは、ご家族やサポートされる方がぜひ高齢者ご本人に伝えてほしいポイントをまとめました。大切な方を守るために、ぜひ真摯にお伝えいただきたいです。

1)エレベーターの積極的な利用

エスカレーターでの事故は一瞬の不安定な動きで発生しやすく、シルバーカーを使用する方にとっては特に危険であることを伝えましょう。

エレベーターであれば、安定した足元と安全な環境で安心して移動できるため、ぜひエレベーターの利用を意識的に選ぶようにお伝えください。

2)一人で乗らない

皆さんと一緒に行動される場合は特に問題ないかと思いますが、どうしてもエレベーターがない施設でひとりでエスカレーターに乗らなければいけない時もあるかと思います。

そのような時は、恥ずかしがらずに周りを頼るように伝えてください。サポートをお願いすることは決して恥ずかしいことではなく、むしろ安全な生活を守るための大切な選択です。無理をして一人で行動することで、転倒や転落といった大きな事故につながってしまう可能性があります。

また、エスカレーターは安全装置が働き緊急停止することもあり、転倒を防止するために手すりにつかまって乗ることが推奨されています。シルバーカーに限らず両手が塞がっている状態での利用は避けるようにしましょう。

3)シルバーカーの正しい使い方を抑える

特に「使用前にブレーキチェックする」と「隙間に対しては垂直に」という点を強調して伝えるようにしてください。

また、シルバーカーを選ぶ際には、利用者の身体に合ったものを選ぶことも重要です。ハンドルの高さや操作性が合っていないと、長時間の使用で負担がかかりやすくなります。身長に合わせた高さに調整できるものや、軽量で押しやすいタイプを選ぶことで、安心して日常生活で活用できるようになります。家族やご自身のためにも、安全で使いやすいシルバーカーを選んであげましょう。

4)「自分だけは大丈夫」と思わない

自分だけは大丈夫、と思ってる方って結構いませんか?

日常生活の中で「自分は大丈夫」という油断は、事故の大きな原因となり得ます。特に慣れた道や普段よく使う場所での移動中には、気を緩めがちです。しかし、事故は意識が少しでも途切れた瞬間に起こりやすいため、「いつでも安全第一で」と意識してもらう必要があります。

また、「シルバーカーを使っていないから大丈夫」と思うことも危険です。シルバーカーに限らず、高齢者のエスカレーターでの転倒・転落事故が多いです。油断しないよう、ぜひ大切な方にお伝えいただけたらと思います。

参考:国民生活センター https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen488.html

【事故から振り返る】高齢者にとって安全な手押し車・シルバーカー利用法 まとめ

本記事では、シルバーカーの安全な利用方法やエスカレーター利用時のリスク、そしてエレベーターの活用と周囲のサポートの大切さについて再確認しました。これらのポイントを日常生活の中で意識することで、事故を未然に防ぐことが可能です。高齢者の方自身だけでなく、周囲の方も安全への意識を高めることが大切です。

また、ご家族や知人の高齢者にも、この情報をぜひ共有してください。「自分は大丈夫」という油断が事故を招くこともあるため、日頃から気をつけるべきポイントを一緒に確認し、安全な生活を見守りましょう。ちょっとした心がけが、日々の安心につながり、重大な事故を防ぐ一歩となります。

 記事監修 
  • 監修者写真
    小林 修
    株式会社DIGITAL LIFE
    WEBサービス事業
    理学療法士
    社会福祉主事

     

  • 大学卒業後、理学療法士や介護事業所の管理者としてデイサービス、特別養護老人ホーム、ショートステイなど、10年以上の現場経験があり、介護サービスの運営、スタッフ教育に従事。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、健康増進サービスの企画、開発に携わっている。