
毎年65歳以上のうち、約20%が何かしらの原因により転倒しているといわれています。
骨折に至る転倒になると歩けなくなる・寝たきりになるなど、身体機能にも影響を及ぼします。
今回は理学療法士が転倒予防対策について解説していきます。
この記事のポイント
- 高齢者の転倒は意外な場所で起きている
- 転倒のリスクを減らしていこう
- 転倒予防のためにできること
転倒はどこで起きている?
65歳以上の転倒で圧倒的に多いのが「スリップ、つまずき、よろめき」による転倒で、 階段や不整地でなく屋内外の平らな地面・床面で転倒しているケースが最も多いのです。

高齢になると外出の機会が減り、身体機能や骨密度が低下することから屋内の転倒でも骨折しやすくなります。
特に足の骨折は、車いすや寝たきりの生活につながってしまう可能性が高まります。
転倒リスクを高める要因はなに?
研究報告によれば、「筋力低下」は最も転倒に多く関与しているといわれています。 しかし、転倒には筋力低下だけでなく、多面的な要因が関係しているといわれています。
身体的要因
以下のような高齢者の心身の状態が転倒リスクを高める要因になることがあります。
- 薬の副作用による眠気やふらつき
- 起立性低血圧や不整脈による意識レベル低下
- 排便後の血圧低下
- 白内障や緑内障による視力低下、視野狭窄(しやきょうさく:視野が狭くなること)
- 関節痛よるバランス能力低下
- 筋力・バランス能力の低下による歩行速度の低下
- 自信過剰(転倒したことがあっても「自分は大丈夫、もう転ばない」と思っている)
また、杖や歩行器を使用している人の方が、使用していない人に比べて転倒リスクが高いともいわれています。
これは杖や歩行器が
- 自分の身体機能に合っていない
- 正しい使い方で使っていない
環境的要因
住居内には転倒につながる要因がたくさんあります。 歩幅の小さい高齢者にとっては、敷居などの1~2㎝の小さな段差こそ要注意です。

他にも電気コードやカーペット・滑り止めを敷いていない玄関マットなど、身近にあるもので転倒の要因となるものはたくさん存在しています。
特にスリッパやつま先が空いている履物はすり足になりやすく、小さな段差でもつまずいてしまうなど、転倒のリスクが一気に高まってしまいます。
このような理由から「かかと」と「つま先」がフィットした、足首を安定させられるような履物が室内履きとして安全だといえます。