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認知症の改善に必要な「水分」量とは



暑さが厳しい夏は、屋内でも脱水や熱中症になり救急搬送される高齢者が数多く報告されます。高齢者の脱水は認知症にも大きく影響するため、気温が上がる時期は水分を必要以上に意識する必要があります。


逆に冬場であれば脱水の危険がないと思いがちですが、実は冬の脱水も少なくないのを知っておきましょう。空気の乾燥と暖房の使用から意外と体内から水分が失われていきます。
さらに夏場のように水分を意識しないことから、摂取量も減ってしまうことが原因として考えられます。


認知症の徘徊や強い拒否、暴言やイライラなどの落ち着かない症状は、水分不足と関係しています。1年を通じて認知症高齢者は水分の摂り方に注意が必要です。


高齢になると体内の水分量が減っていく

人間の体は半分以上が水分です。体の機能を良い状態で維持するためには、1日の中で取り入れる水分量と失われる水分量のバランスを整えることが大切です。
 
このバランスが重要なポイント
 
失われる水分量(排出量)=取り入れる水分量(摂取量)

体内の水分蓄積量

体内の水分量は年齢によって変化していきます。


新生児・・・80%
成人 ・・・60%
高齢者・・・50%

新生児は身体の約80%が水分とは驚きですね。確かに赤ちゃんの肌はみずみずしく、艶があります。成人では約60%、高齢になると50%と、体内に蓄積される水分は徐々に減っていきます。
なぜ、高齢になると体内の水分量が減っていくのでしょう?


高齢者になると体内の水分が減る理由1


筋肉量の減少

筋肉には水分を溜め込むダムの役割があります。高齢になると、若いころと比較して筋肉が生成されにくくなり、体内の筋肉量が低下していきます。つまり、筋肉量が減るということは、水分を貯水するダムが減るということです。
また、閉じこもりの生活などで活動量が減ると、ますます筋肉量は減少していきます。健康な成人であれば20~30代が筋力のピークとなり、高齢になることで2~3割の筋力が失われます。

高齢者になると体内の水分が減る理由2


腎機能の低下

腎臓の機能は主に2つあります。


主な腎臓の機能
機能その1 ろ過
機能その2 再吸収

血液を「ろ過」して老廃物や毒素を尿として体外へ排出します。そして、ろ過された液体からさらに必要な水分・栄養分を「再吸収」します。これは体内の水分量を調整する重要な役割になります。加齢によって腎機能が低下すると再吸収する力が衰え、体内の水分量が減少してしまうのです。

高齢者になると体内の水分が減る理由3


感覚機能の低下

高齢者は「喉の渇きを感じにくくなる」ため、水分補給に意識が向かない特徴があります。人の体は汗や呼吸から常に水分を排出しています。高齢者が喉の渇きを感じていなくても、水分はどんどん失われているのです。


体内の水分が減る理由
喉の渇きを感じる機能の低下
体内の水分不足に気付かない
水分を摂ることに意識が向かない

体内の水分が足りないと認知症の症状が悪化する

「筋肉量の減少」「腎機能の低下」「感覚機能の低下」などが重なり、体内の水分量が不足していきます。その他、嘔吐や下痢、発熱や利尿剤(尿の排出量を増やす薬)などが原因で、体水分量を維持できない場合もあります。
体内の水分が不十分になると以下のような悪影響が生じてきます。


歩行が不安定になることで転倒リスクが高まる

倦怠感や頭痛を感じる

意識がぼんやりする

徘徊や強い拒否、抑うつ、暴言など落ち着かない症状が現れる

判断力や注意力、認知力が低下する


特に認知症の方は認知力が低下することで混乱が生じ、「落ち着きがなくなる」などの症状が出てきます。場合によっては介護者の手に負えず、本人も家族も疲弊してしまうこともあります。
※認知力…物事を認識できる能力


認知症でない方も、体内の水分が足りなくなることで「物忘れ」や「会話がかみ合わない」など、認知症と似たような症状が出てきます。脱水の症状なのに認知症だと思い込み、慌てて医療機関の認知症専門外来を受診してしまうケースもあります。
特に暑い時期は「あれ?おかしいな」と思ったら、まずはしっかりと水分摂取を促しましょう。

水を飲む認知症高齢者

高齢者に必要な1日の水分量

高齢者は1日にどのくらいの水分を摂る必要があるでしょう?その問いに答えるには、体の仕組みから水分の出入りを考える必要があります。体内から排泄される量(排泄量)と取り込むべき量(摂取量)につてい、詳しく説明していきましょう。
 

1日に排泄される水分量

体内の水分は常に出入りを繰り返しています。
排泄される水分は「尿」「便」「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」で、その総量は1日に2,400~2,800mlになります。
体から出ていく水分

尿

1日に排泄される尿量は約1,500mlです。腎臓は多くの水分を摂取したときは尿量を増やし、水分が不足してくると尿量を減らす機能があります。そうすることで体内の水分量を一定に保っています。

便

便にも水分が200~300ml含まれています。体内の水分が不足すると便にまで水分が行きわたらず、硬い便となってしまいます。便秘には水分をしっかり摂ることが特効薬となります。

不感蒸泄

「不感蒸泄」とは皮膚や粘膜、呼吸から蒸発する水分のことで、1日に700~1,000ml排泄されます。
これは体温を調整している重要な機能となり、水分が不足すると熱を放出できなくなります。熱中症は体温を調節する水分が足りなくなることで、体温が急激に上昇して起こります。


排泄される水分量は合計2,400~2,800mlとなるので、失われた分を体内に取り込まなくてはなりません。では、どのくらいの水分量をどうやって摂取していけばいいのでしょうか。

1日に取り入れるべき水分量

排出された水分量を補うために、1日に2,400~2,800mlの水分が必要となります。

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食事

食事には多くの水分が含まれています。ご飯やサラダ、煮物や炒め物など、あらゆる食事から日々、水分を吸収しています。食事から摂れる水分量は700~1,000ml程度になります。
朝食を食べない習慣がある人や、夏場などで食欲が低下した場合は、食事から摂れる水分量が低下するため、注意が必要です。

代謝水

代謝水は燃焼水とも呼ばれています。食事などから摂った栄養素を分解してエネルギーに変えていますが、そのときに化学反応で水分が作られます。これが「代謝水(燃焼水)」といわれるもので、200~300mlとなります。

飲水

食事で700~1,000ml、代謝水で200~300mlの水分を摂ることができます。残りの不足した水分1,500mlは飲水として摂取します。注意すべき点は食事として摂る水分と分けて計量することです。例えば味噌汁やスープは「飲水」としての水分に含まず、食事から摂る水分としてカウントします。コップで飲む水分を飲水量として捉えていきます。

認知症の改善に必要な「水分」量 まとめ

気温が上昇する夏や暖房を使う冬は、思った以上に水分が必要となります。特に高齢者は体内に蓄積できる水分量が減少するので、1日を通して小まめに水分補給をしていきましょう。
 
体型や活動量、季節、疾患などによって水分の必要量は変わっていきます。1,500mlは目安となり、高齢者自身が一番元気でいられる水分量を見極めることが大切です。人によっては2,000ml以上の水分を必要とする場合も少なくありません。

ペットボトルの水分

特に認知症の方は水分不足をきっかけに徘徊やイライラなどの症状が出やすくなるので、積極的に水分を摂りましょう。認知症の症状を落ち着かせるには、水が一番の解決策となります。
日々の水分管理は認知症予防にもつながるので、意識していきたい習慣です。

 記事監修 
  • 監修者写真
    若橋 綾
    株式会社DIGITALLIFE
    管理部
    介護支援専門員

     

  • 介護支援専門員や介護事業所の管理者として10年以上の現場経験があり、家族問題を抱える家族や虐待案件も含め様々なケースを担当。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、企業向けに介護離職予防を目的としたセミナーの開催や介護に関する記事作成を行うなど活躍は多岐にわたっている。