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【歩くことを取り戻す!】再び歩くための脳のメカニズム


高齢な方が肺炎などで数週間寝込んでしまうことで、スムーズに歩けなくなることがあります。 その理由として「足の筋肉が落ちたため」と言われることがよくありますが、実は「歩き方を忘れた」というケースが多いのはご存じでしょうか?
認知症であれば「歩行」を中心とした運動は、症状改善のために欠かせないこととなります。 今回の記事では、「歩行」のメカニズムと、歩けなくなった高齢者が再び歩けるための練習法について解説していきます。




脳が歩き方を忘れる理由

高齢者は病気やケガなどで長期間歩かなくなると、「歩くために体をどう動かせばいいか」を脳が忘れてしまうことがあります。つまり、「歩き方」を忘れてしまうのです。


失敗しながら習得する動作

人間の「歩く」「食べる」「話す」などの動作は、生まれたときには当然できません。 成長の過程で何度も失敗しながら、繰り返し覚えてその動作を習得していきます。
自転車の乗り方やピアノの弾き方、逆上がりや縄跳びなども同様で、複雑な動作を何度も練習・学習することで身に付けていきます。 しかし、学習して身に着けた動作は、ある期間行っていないと忘れてしまいます


自転車に乗る子供

脳が動作を忘れてしまう

例えば自転車に何年も乗らずにいたとしましょう。 久しぶりに乗ってペダルをこぐと、最初はバランスが取れずにフラフラしますが、しだいに滑らかに自転車を扱えるようになります。 これは、自転車に乗るという脳の記録回路が最初はうまく作動しなかったが、しばらくすると徐々に体の使い方を思い出したということです。
地域の運動会で大人がリレーをすると転ぶ姿をみかけないでしょうか。これもしばらく走っていない人が急に全速力で走ったため、脳が体の動かし方を思い出せずに、足がもつれてしまう現象だといえます。


「歩く」動作も歩いていないと忘れてしまう

「歩く」という動作は足を動かし、手を振って、多くの筋肉を動かして全身をコントロールしています。 視覚から得られる情報や足底の感覚、体の傾きなどを瞬時に判断してスピード調整や全身のバランスをとっているのです。
しかし、しばらく歩いていないと、細やかで瞬時に判断していた動作を忘れてしまい、結果うまく歩けなくなってしまうのです。


歩き方を思い出す

歩き方を忘れたならば、思い出すことで再び歩くことができるようになります。 何年も車いすで歩いていなくても、歩く練習を重ねて「歩き方を思い出す」ことで歩行を再獲得できる可能性があるのです。
人間の体は繰り返し動かしていけば動作が滑らかになり、逆に動かさなければその動作はぎこちなくなります。 「歩く」ことも同じで、歩く練習を積み重ねていけば上達する動作となります。


座る高齢者

歩き方を思い出す練習法

歩き方を思い出し、再び歩けるようにするためには、以下の3つを行っていく必要があります。


  • ❶ 歩くこと

  • ❷ 繰り返し練習すること

  • ❸ 練習量を増やすこと

それぞれ詳しく解説していきましょう。


歩くこと

再び歩けるようにするためには、実際に歩くことです。 手すりなどにつかまって5秒間程度立っていられれば、歩く練習を行いましょう。 ただし、歩けない方を急に一人で歩かせるのは怪我のリスクを高めてしまうため、本人に適した歩行器を用意したり、2人の介助者が両脇から支えたりする必要があります。
特にキャスター付き歩行器は、寄りかかると前進し、それに引きずられて自然と足が前に出てくるので、実用性の高い福祉用具となります。

繰り返し練習すること

少しでも足が前に出て歩く動作ができたならば、脳が忘れないように毎日歩行練習を続けていきます。 そうすることで脳は徐々に歩き方を思い出し、筋肉の動きが滑らかになることで、歩行動作が再度身に付いていきます


練習量を増やすこと

歩く練習量を増やし、歩行距離を伸ばしていきます。 家庭内であれば、食卓まで、トイレまで、寝室までなど、小まめに歩く機会を増やしていきましょう。 歩行距離が延びると同時に体力がつき、持久力も向上します。


歩く練習は専門職の力をかりる

数週間の入院などで短期間歩いていないことが原因で歩けなくなっている場合は、家族介護の力で再び歩くことができるかもしれません。 しかし、長期間歩いていない、体に拘縮*(こうしゅく)や痛みがある場合などは、介護保険サービスを使って介護のプロに任せていきましょう。
最近は「歩く」ことに積極的に取り組んでいるデイサービスなどが増えてきています。情報を集めて専門職を頼ることで、歩行の再獲得につなげていきましょう。

※拘縮…関節の動きが制限された状態


歩行練習する人 介助して歩く

認知症の症状改善につながる歩く能力

認知症の方は「歩行」を中心とした運動を日々行うことが重要となります。 歩くことで全身の血流が良くなり、脳や感覚を刺激していきます。
適度な運動負荷もかかるため、体力や筋力も向上していきます。 さらに運動することで便秘の解消や睡眠の質が向上、食欲増進の効果もあり、認知症の症状改善にも大きく影響します。


【歩くことを取り戻す!】再び歩くための脳のメカニズム まとめ

歩けなくなる原因は人それぞれで、回復が難しい場合もあります。 一方、在宅生活者で再び歩ける可能性がある高齢者も多く存在しますが、「年だから」「もう無理」と思い込み、諦めてしまっているケースも目立ちます。


一時的に歩けなくなっても介護のプロに頼りながら、少しずつ「歩く」ことに対する自信を取り戻していきましょう。 介護保険サービスを利用することで、体にあった歩行補助用具の活用や、適切な環境下で歩行練習をすることができます。諦めずにチャレンジし、歩行能力の再獲得に繋げていきましょう。


 記事監修 
  • 監修者写真
    若橋 綾
    株式会社DIGITALLIFE
    管理部
    介護支援専門員

     

  • 介護支援専門員や介護事業所の管理者として10年以上の現場経験があり、家族問題を抱える家族や虐待案件も含め様々なケースを担当。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、企業向けに介護離職予防を目的としたセミナーの開催や介護に関する記事作成を行うなど活躍は多岐にわたっている。