あの伝説の歌姫ホイットニー・ヒューストンの没後10年を迎えた今年、「ボヘミアン・ラプソディ」の脚本家が彼女の半生を描く「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」
名曲誕生の瞬間、歌うことに命を燃やした彼女の魂の物語
ビートルズの記録を破り、シングル「Saving All Love For You」以降7曲連続で全米シングルチャート1位を獲得! その圧倒的な歌声は“THE VOICE”と称され、アルバムやシングルなどこれまでのトータル・セールスは2億枚を超える。
さらにグラミー賞6冠など400を超える受賞歴はギネス世界記録に認定されるなど、音楽史に残る大偉業を成し遂げたホイットニー・ヒューストン。 本作はそんな彼女の、ジャンルも人種も超えた<グレイテストソング>誕生の瞬間や、「歌いたい曲を、自分らしく歌う」ことに命を燃やした栄光の半生を、数々の№1ヒットソングとともに臨場感たっぷりに描ききる。

12月23日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国の映画館にて公開
- 監督:ケイシー・レモンズ
- 脚本:アンソニー・マクカーテン
- 出演:ナオミ・アッキー、スタンリー・トゥッチ、アシュトン・サンダース
- 上映時間:2時間24分
【見どころチェック!】圧巻の歌声に心が震える
注目すべきは数々の名曲シーン。懐かしい曲がパワーに満ちた映像とともに観るものを惹きつけます。感動的で偉大な歌姫の歌声にどっぷりと浸れる、とても贅沢な作品です。

1990年頃に洋楽に溺れていた世代にはたまらない時代背景と劇中にセリフとして出てくるアーティスト名。 そうそう、そんなアーティストが活躍している時代だった、最高の名曲がたくさん生まれていた時代だった、 音楽が今みたいに簡単にネットから手に入るものではなく、ラジオから流れる曲を録音したり、親に怒られながら夜中にテレビから流れるミュージックビデオにかじりついたり、 音楽を手に入れるには少し苦労が必要な時代だった。
そんな時代にホイットニー・ヒューストンは常にヒットを飛ばし、その歌声に多くの人が圧倒されました。 日本でも一大ブームとなった1992年公開の大ヒット映画「ボディガード」はリアルにホイットニー・ヒューストンの時代を経験した人であれば、誰もが主題歌「I Will Always Love You」を耳にしたと言っても過言ではありません。 そんな数々のヒット曲が全編を通して堪能することができます。

ホイットニー・ヒューストンの知られざる姿
本作は1980年代半ばからの名声とともに歩んだホイットニーの私生活も丁寧に描いています。 母親であるシシー・ヒューストンは彼女の歌声を基礎から作り上げた人物であり、その愛情に満ちた存在感は映画の重要なアクセントになっています。

実業家でもあった父親のジョン・ヒューストンとの関りは危うさを感じさせ、気持ちがざわつく展開に。 ボビーブラウンとの結婚が破綻していく様子や薬物に手を出してしまう姿など、ホイットニーの影の人生についても、美化することなく描いています。

そして、ホイットニーの友人であり恋人でもあった、一番の理解者といえるロビン・クロフォードの存在にも焦点をあてています。 当時は同性愛であることを公表すれば好奇の目にさらされ、シンガーとして活躍できなかったかもしれない。 今の時代に二人が出会っていれば、公然と愛し合うことができただろうにと、そんな切ない思いを感じてしまいます。

圧巻の演技と音楽のすばらしさ
ホイットニー・ヒューストンを演じるのは2019年に英国アカデミー賞の助演女優賞を受賞したナオミ・アッキー。 大物アーティストを演じるプレッシャーを見事に跳ね返し、素晴らしい表現力をみせてくれます。 ボビーブラウンや娘であるクリスティーナの口調や仕草も俳優陣が見事に再現した演技だとか。この辺りも見逃せません。

熱唱する姿はまさにホイットニー・ヒューストンそのもので、圧巻のステージをみせてくれます。
音楽もただ映画上にトラックを重ねただけではありません。
ステージでのパフォーマンスを高めるためにソフトウエア上で個々の要素を分離して映画用にリミックスしています。
だからこそ、ホイットニーの歌がアッキーの口から発せられているような、全く違和感のない完成度に仕上がっています。

ミュージックシーンの見どころは1991年1月27日の第25回スーパーボウルにおけるアメリカ国家「星条旗」独唱、そして1994年2月7日の第21回アメリカン・ミュージック・アワードの授賞式で披露した3曲のメドレー(これは素晴らしい!)、 同年の11月の南アフリカ共和国でのコンサート。

特に南アフリカ共和国でのコンサートはアパルトヘイト撤廃を祝う意味合いがあり、ネルソン・マンデラからの直接オファーで実現したという歴史的背景があります。
このコンサートの6年前には、当時まだ獄中にあったマンデラの釈放を求める「フリー・マンデラ」のライブにホイットニーが出演したことも知ると、さらに意味深いシーンとなります。
これらのステージは音楽の持つパワーに感動し、心が震えて自然に涙がこぼれてきます。音楽がこの世に必要不可欠で、心を豊かにする最高のアイテムなのだと実感します。

【感想】音楽好きにはたまらない映画
コンサートやライブに行ったとき、一番興奮する時間はいつでしょうか? それはステージが始まる直前、舞台上にバックミュージシャンが準備をはじめたときではないでしょうか。 期待と興奮が最高潮に達するこの瞬間、この時間が筆者はたまらなく好きです。 「ボヘミアン・ラプソディ」もそうでしたが、本作も幕開けはそんな興奮に包まれます。
そして映画冒頭の「Greatest Love of All」が一番感激しました。 この曲は多感な高校時代に、何度も勇気づけられた思い入れのある曲。筆者、しょっぱなから涙腺崩壊しました。 2時間24分という長尺ですが、あっという間…それほど引き込まれる素晴らしい映画です。ぜひ音楽を堪能し、気持ちの良い涙を流してください。