
「最近、階段の上り下りがしんどい」、「床から立ち上がるのが大変」「買い物の際に荷物を持ちながら帰るのがきつい」など、
筋力の低下を実感することはありませんか。実感している場合は、筋力低下が進んでいるサインかもしれません。
ここでは、ご自身の身体にあった筋トレを始められるように筋力低下が進んでいるのかをチェックする方法や、筋トレ内容を紹介します。
「最近、階段の上り下りがしんどい」、「床から立ち上がるのが大変」「買い物の際に荷物を持ちながら帰るのがきつい」など、
筋力の低下を実感することはありませんか。実感している場合は、筋力低下が進んでいるサインかもしれません。
ここでは、ご自身の身体にあった筋トレを始められるように筋力低下が進んでいるのかをチェックする方法や、筋トレ内容を紹介します。
2019年の国民生活基礎調査によると、介護が必要となった主な要因は、下記のグラフの通り、「認知症」が最も多く約17.6%を占めています。 次いで多いのが「脳血管疾患」で16.1%、以降は「高齢による衰弱」が12.8%、「骨折・転倒」が12.5%、「関節疾患」10.8%と続いています。
これだけみると、介護予防には認知症予防、脳血管疾患の予防がまずは大事と思う方がいるのではないでしょうか。
しかし、3位から5位に位置している「高齢による衰弱」、「骨折・転倒」、「関節疾患」も見過ごすことはできない原因です。
その理由を解説します。
加齢とともに日常生活の活動量・運動量は減少しやすく、食欲も低下する可能性が高まります。 その影響から、栄養状態は悪くなり、筋肉量は減りやすくなり、筋力低下が進み、活動量・運動量がより低下していくという悪循環を「高齢による衰弱」といいます。 この衰弱により、外出や自宅での日常生活動作に介助が必要になっていくといわれています。
厚生労働省「平成29年患者調査」によると、骨折患者の約6割が60歳以上と報告されています。 これは、骨粗鬆症、筋力低下による転倒、皮下脂肪の減少などが影響しているといわれていますが、 骨粗鬆症や皮下脂肪の減少があったとしても、筋力低下による転倒を防ぐことができれば、骨折する可能性は下げることができます。
関節疾患の中で最も多いのが、変形性膝関節症です。 50代以降で発症率が高まり、特に女性に多く発症するのが特徴です。 この変形性膝関節症は大腿四頭筋(太ももの筋肉)の筋力低下が原因の一つになります。 大腿四頭筋が筋力低下を起こすと、立ち上がったり歩いたりする際に膝にかかる衝撃を十分に吸収する事ができず、より一層膝への負担が掛かってしまいます。 衝撃を受けた膝は時間の経過とともに変形していき、最終的には変形性膝関節症になってしまいます。
以上から、「高齢による衰弱」・「骨折・転倒」・「関節疾患」は、筋力低下と密接に関係していることがうかがえます。
この筋力低下が関係している3つの要因の割合をすべて足すと、36.1%となり、1位の認知症を大きく上回ります。
このことから、筋力低下をいかに予防するか、いかに遅らせることができるかは、介護予防を図る上では欠かすことはできないこと、であることが分かります。
では、筋トレはどのくらいの年齢から取り組んだ方がいいのでしょうか。
筋トレといっても、身体には640もの筋肉が存在しているため、どの筋肉から鍛えたらいいのか分からない人も多いと思います。 ここでは、筋力と相関する筋肉量に焦点を当て、腕、体幹、下半身、それぞれの筋肉量の変化をもとに、50代から意識したほうがいい筋肉の順番を解説します。
下半身の筋肉は20代頃より減少しはじめ、腕や体幹の筋肉は50代~60代頃から緩やかに減少していくといわれています。
下半身は、50代、60代ですでに20代の頃の筋肉量の約20%が、80代では40%近くが減少するといわれています。
腕、体幹、下半身で比べた時に、一番減少率が高いのが下半身です。
以上から、50代からまず筋力低下を意識したほうがいいのは、下半身の筋肉です。
腕の筋肉は、スポーツを行っていなければ、筋肉量が減少してもさほど困ることはないと思います。
ただ、減少率が大きくなると、ペットボトルや缶ジュースの蓋や、食品の袋が開けられない、立ち上がる時に手すりを強く握ることができない、などの支障が出てきてしまうので、
筋肉量の減少が始まる50代頃から、早めに予防策をとっておくことをおすすめします。
ちなみに、腕の筋肉量は、体幹の筋肉量と正比例するといわれています。
つまり、腕の筋肉量を減らさないようにするための取り組みが、体幹の筋肉量の減少予防にもつながるので、一石二鳥になります。
全身の中では一番減りにくい筋肉ですが、体幹の筋肉量減少は、姿勢の崩れ(反り腰や猫背)を招きやすく、腰痛の重度化にもつながりやすくなります。 また、体幹の筋肉量は多い方が、基礎代謝率や脂肪燃焼率の向上につながるため、メタボリックシンドロームの予防やダイエットのためには減らしたくない、むしろ増やしたい筋肉です。
以上から、50代以降に筋力低下をより意識したほうがいい順番は、下半身の筋肉、腕の筋肉、体幹の筋肉に、なります。
筋力低下に早く気付く方法は、筋肉量を測定することです。 筋肉量を測定する方法を解説します。
身体に微弱の電流を流し、抵抗値によって測定します。
骨密度の計測でも用いられている方法であり、X線を生体に照射し測定します。
CTやMRIで筋肉の断面積を計測し、筋肉量を求める方法。検査の侵襲が大きく検査費用も高額で、計測も煩雑ですが、より正確な測定が期待できます。
以上のような方法は医療機関やスポーツクラブなどで、専門家同席のもと有料で測定しなければならないものばかりであるため、実用的ではありません。
そこで、日常生活の中で筋肉量や筋力をセルフチェックする方法をいくつか紹介します。
正確性は劣りますが、筋肉が増えているか、減っているか、筋力低下が進んでいるかどうかの判断ができますので、是非試してみてください。
下記の写真のように両手で輪っかをつくり、その輪っかをふくらはぎの一番太い部分にあてはめます。
もし、下の写真のように指と指が重なってしまう場合は筋肉量の減少が進んでいる、というサインになります。
①下の写真のように、椅子に座り、両手を胸の前で組み、片側の足を床から浮かせます。
②その状態から立ち上がり、3秒間立った状態を保持します。
60代以下の方でこれが実施できない場合は、下半身の筋力低下が進んでいる可能性があります。
※すでに、足に痛みを抱えている場合は、実施を控えてください。
腕全体の筋力を評価する方法は握力を測定することが一番望ましいですが、握力計が手元になければ測定できません。
そこで、100円ショップでも販売されている「ハンドグリッパー」を使って、チェックする方法を紹介します。
例えば、男性は30㎏、女性は20kgのグリッパーを購入してみてください。
そのグリッパーを1回でも握れれば、握力が30㎏、20㎏あるということになります。
介護予防の観点からすると、男性では28㎏以上、女性では18㎏以上の握力があれば問題ないとされているので、
上記の方法でそれを確認することができます。
片足立ちをする時には、下半身だけでなく体幹の筋肉が使われています。 体幹の筋力が低下していると、上半身が前後左右にぐらついてしまい、片足立ちができなくなっていきます。
国立長寿医療研究センターによる推定年代別数値では、このように報告されています。
この数値を目安に、ご自身の状態を確認してみましょう。まずは、下の写真のように、左右交互に何度か片足立ちを行ってみてください。
もし、上半身がぐらぐらしてしまい、ご自身の年代の数値よりも短い時間しか片足立ちができなかった場合は、 体幹の筋力低下が進んでいる可能性があります。
もし以上のセルフチェックの中で、筋力低下に該当する項目があった場合には、今日から筋力トレーニングを始めることをおすすめします。
下半身、腕、体幹、それぞれにおいて、日常生活で簡単にできる負荷トレーニングをご紹介します。
①仰向けになり、片足は伸ばし、もう一方の足は曲げておきます。
②伸ばしている方の足をそのまま床から30㎝ほど浮かし、10秒~20秒保持します。
③終わったら足を入れ替えて行います。
①椅子の前に立ち、腰に手をあてます。
②ゆっくり座面に座るようにお尻を下げます。座面につく手前で止まり、ゆっくり元の姿勢に戻ります。
階段を上り下りする際は、太ももの筋肉をよく使います。特に階段を下りる際により太ももの筋力が必要になります。
階段を上り下りする際に、足音をできるだけ立てずに行ってみてください。それだけでも十分良い筋トレになります。
壁を使って、立った状態で腕立て伏せを行うイメージです。回数は、8回から10回程度行ってください。
① 壁の前に立ち、胸のあたりの高さで手をつきます。
② 肘が伸びるように後方に下がります。
③ 肘をゆっくり曲げながら壁に額を近づけていき、壁につく手前で元の姿勢に戻ります。
①掃除機を使って掃除を行う際に、足を前後に開き腕を曲げ伸ばししながら掃除機をかけるだけで、二の腕の筋トレになります。
②食器洗いの際に、汚れをとろうとして強くこするだけで握力を鍛えるトレーニングになります。
③洗濯物を干す際に、腕を肩よりも高い位置まで上げて洗濯物を干すと、二の腕の筋トレになります。
①椅子に座った状態で背もたれから少し背中を離します。
②できるだけ上半身が背もたれにつかないように足を持ち上げます。難しければ背もたれに寄りかかりながら行ってください。
①椅子に座った状態で上半身の姿勢を伸ばし、頭の後ろで手を組みます。
②上半身を前方に傾けた後、ゆっくり上半身を元に戻します。
筋力低下は、身体の部位によって進み具合が異なります。また、それぞれに日常生活の習慣によっても違いが出てきます。
まずは、ご自身の身体のどこに筋力低下がみられるのかを確認し、それに応じたトレーニングを始めることが健康寿命の延伸、介護予防への第一歩になります。
とりあえず、何でもいいから筋トレを始めてみるでは効果も分かりにくく、モチベーションを保つことも難しいと思います。
まずは、本記事のセルフチェック方法を参考に、下半身、腕、体幹の中で筋力低下が進んでいないかを確認していただき、ご自身の身体にあった筋トレを始めていただくきっかけになれば幸いです。