
離れて暮らす高齢な親のことが心配になることは誰にでもあります。特に帰省した際には、普段見えない親の生活や健康状態を目の当たりにし、介護の不安がよぎることがあるかもしれません。
そんなときは、親の生活環境や健康状態を確認し、必要なサポートを考える良い機会と捉えましょう。この記事では、帰省時にチェックしておきたいポイントや、介護の備えについて具体的なアドバイスを紹介します。
帰省したときに親の様子をチェックしてみよう

親が高齢になると、介護が必要になるのではないかと心配になることがあります。電話で話していると元気そうに感じても、実際に会ってみると不安になることもあるでしょう。そんなときに役立つポイントをお伝えします。
親を観察してみよう
久しぶりに帰省すると、親が以前より老け込んだように見えることがあります。今までと様子が違うと感じたら、さりげなく観察してみましょう。
例えば、食事の量が減っていないか、歩行や立ち上がる様子に変化がないか、家の中が散らかっていないかなどを確認します。また、痩せてきていないか、腰や膝を痛がっていないか、体に変形がないかなど、外見からわかる情報も多くあります。ポイントは「以前と違うことや変化がないか」を見ることです。
最近の体調や病気について聞き出してみよう
親の今の体調や、かかりつけ医がいるかどうか、飲んでいる薬や治療中の病気について聞いてみましょう。離れて暮らしていると、親がどんな病気にかかっているか把握するのが難しくなります。
例えば、糖尿病の薬を飲みはじめた、過去に転倒して腰を痛めていた、などの知らなかった変化があるかもしれません。将来のリスクを見越すためにも、これらの情報を確認しておくことが大切です。
もし病状や薬について曖昧な返答があれば、お薬手帳を確認するか、通院に付き添うと良いでしょう。また、かかりつけ医がいない場合は、近隣のクリニックで健康診断を受けることも検討してみてください。
生活で困っていることはないか聞いてみよう
日常生活で困っていることや心配なことがないかを聞いてみましょう。質問する際には、具体的な例を挙げることで、より詳細な情報を引き出すことができます。
例えば、「最近、買い物に行くのが大変になっていない?」や「掃除や料理で困っていることはない?」といった聞き方です。さらに、移動や外出についても、「外出するのが億劫になっていない?」や「病院への通院が大変じゃない?」と尋ねることで、具体的に把握することができます。
趣味活動や外出の頻度を確認してみよう
趣味活動や外出の頻度が減っている場合、体力や気力の低下、あるいは社会的な孤立が進んでいる可能性があります。例えば、「最近、趣味の○○は続けている?」や「友達と会う機会はある?」といった質問をしてみてください。
親の活動範囲や交友関係を知ることは、どれだけ社会的に活発であるかを理解するのに役立ちます。孤立していないか、精神的な健康状態が良好であるかを判断するための良いヒントとなります。
介護の備えを考える

親の様子をチェックしたら、次に考えるべきは「介護の備え」です。親が安心して生活できるように、現在や将来にどのようなサポートが必要かを具体的に考えましょう。
地域包括支援センターの場所と連絡先を確認
地域包括支援センターは、高齢者やその家族が介護や福祉に関する相談をするための総合相談窓口です。介護保険の利用方法や介護サービスの紹介・手続き、健康や生活に関するアドバイスなど、さまざまな支援を受けることができます。地域ごとに設置されており、その地域の特性に応じたサービスを提供しています。
地域包括支援センターの場所や連絡先を知っておくと、急に介護が必要になった場合でも迷わず相談できます。高齢な親について不安や心配事があれば、介護が始まる前でも相談に応じくれます。電話での相談も可能なため、遠距離介護が見込まれる場合は心強い相談窓口となります。
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターでは、地域で行われている健康体操などの情報も提供しています。多くの地域では、高齢者が参加できる健康体操や運動教室が開催されており、これらの活動に参加することで体力を維持し、社会的なつながりを保つことができます。
住環境の確認
親の住環境を確認し、危険な暖房器具や古い家電、転倒につながりそうな家具や物の位置、滑りやすい場所がないかなどをチェックしましょう。特に浴室やトイレなど、転倒のリスクが高い場所は注意して確認しておきましょう。
また、照明の明るさや配置の見直しも重要です。高齢者は視力が低下しやすいため、十分な明るさが確保されているか、夜間の移動が安全に行えるかを確認します。さらに、火災報知器やガス漏れ警報器の設置状況も確認し、必要に応じてメンテナンスや交換を行いましょう。
携帯電話の活用を考える

携帯電話は、親の見守りや連絡手段として非常に有効です。すでに持っている場合はどの程度使えるか確認し、持っていない場合はこの機会に購入して使い慣れてもらうとよいかもしれません。
見守りアプリやテレビ電話を活用することで、外出中でも連絡が取れる環境を整えられます。また、緊急連絡先を登録しておき、すぐに連絡できるようにしておくと安心です。
近隣や民生委員に挨拶しておく
可能であれば親が親しくしている人や近隣の方、民生委員に自分の連絡先を伝えておくのも良い方法です。「(親について)何か気になることがあれば電話してください」と連絡先を知らせておけば、親の異変や変化を早く察知できる可能性が高まります。
親が孤立しないように、さらに「見守る目」を増やすためにも、地域のコミュニティとのつながりを大切にしましょう。
必要な書類の保管場所を確認
親が重要な書類をどこに保管しているかを確認しておきましょう。例えば、マイナンバーカードや年金手帳、医療記録、財産に関する書類などです。これらの書類がすぐに見つかるように整理しておくことで、緊急時にも迅速に対応できます。親と一緒に書類の整理を行い、保管場所を共有しておくと安心です。
親の要望を聞いておく
介護について親の要望を少しずつ聞いておきましょう。介護の話題は聞きにくく、話しにくい内容ですので、一度に多くを聞かず、普段の会話の中で徐々に把握していくことがポイントです。以下の注意点も参考にしてください。
リラックスした雰囲気で聞く
親が緊張せずに話せるように、自然な会話の流れの中で質問をしてみましょう。例えば、食事中や散歩中など、親がリラックスしているときに話を切り出すと良いでしょう。
共感を示す
親の話に対して共感を示すことも重要です。「そうなんだね」「わかるよ」といった言葉を使って、親の気持ちを理解していることを伝えましょう。これにより、親が安心して自分の意見を話しやすくなります。
ときには具体的な質問をする
場合によっては具体的な質問をすることで、親の要望をより詳しく把握することができます。「どんなサポートがあれば安心できる?」や「どのような生活を送りたい?」といった質問をしてみてください。親の意見を尊重し、否定せずに受け入れることも大切です。
メモを取る
親の要望や意見は忘れないようにメモを取っておくと良いでしょう。後で見返すことで、具体的なサポート計画を立てる際に役立ちます。
兄弟姉妹で相談しておく
兄弟姉妹がいる場合は、介護について話し合う機会を持つようにしましょう。それぞれの立場や気持ち、家庭状況などを率直に伝え、役割分担や協力体制を考えておくことが大切です。緊急時の対応方法や定期的な連絡手段などを具体的に話し合っておくと良いでしょう。
また、介護にかかる費用や時間についても話し合い、負担を公平に分担する方法を考えておくことが重要です。兄弟姉妹間で協力体制を整えることで、介護の負担を軽減し、親に対するサポートをより効果的に行うことができます。
介護をする自分自身の準備

介護は介護者側の準備も必要です。以下のポイントを参考に、自分自身の準備を進めましょう。
介護保険制度について調べておく
介護が必要になった場合、介護保険の利用が必須となります。申請手続きの方法やどんなサービスがあるのか、おおざっぱで構わないので知っておきましょう。
仕事と介護の両立支援制度について調べる
働いている場合は、勤め先の仕事と介護の両立支援制度について確認しておきましょう。相談窓口があるのか、どのような支援があるのかを把握しておくと、介護が始まった場合の計画も立てやすくなります。勤め先に制度の定めがなくても、育児・介護休業法として法律で定められた権利となります。
参考:育児・介護休業法について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
自分はどうしたいかを考える
介護が始まったら、自分がどの程度介護できるのか、どんなバランスで生活したいのかを考えておきましょう。重要なのは、自分ができる介護の範囲を見極めることです。
高齢者を支える現役世代が減少しているため、家族だけで介護を行うのは難しい時代です。介護保険サービスや多くの介護関係者の助けを借りることを当たり前と考えましょう。また、介護によって仕事のキャリアや趣味などの楽しみを失わないようにすることも大切です。これらのことを考えておくことも、介護の備えとなります。
離れて暮らす高齢の親に不安を感じたら|帰省したときに考える介護のこと まとめ
遠距離介護はどうしても物理的な距離が生じるため、親の様子を直接確認することが難しくなります。実際に介護が始まっても、全面的に介護を行うのが難しい状況でもあるので、介護の備えはとても大切です。
さらに、介護は初動によってその後の大変さが大きく左右されます。地域包括支援センターへの相談方法や介護保険制度の概要を知っておくだけでも助けになるので、帰省したときには介護について考える時間を持つようにしましょう。
帰省時に親の様子を観察し、必要な準備を進めることで、安心して親の生活をサポートできるようになります。