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高齢者の食事で気を付けたいこと|低栄養の改善策について解説!

低栄養を改善

低栄養とは必要な栄養素やエネルギーが不足した状態を指します。 高齢者は食欲の低下や噛む力が弱まると、低栄養のリスクが高まっていきます。 今回の記事では母親を介護している息子さんの相談事例を交え、低栄養のリスクから改善方法までを解説していきます。


この記事の注目ポイント

  • ・ 高齢者は低栄養のリスクが高い
  • ・ 低栄養の判断基準
  • ・ 低栄養が疑われたら、早めに改善しよう


母の食が細くて心配です

80代の母親(ミツ子さん)を介護する息子さんから、食事について相談がありました。


数か月までは普通の食事を3食きちんと摂っていた母親が、最近は朝食を食べず、夕食もおかずを少量で済ませてしまうことが増えています。 体力も落ちたのか「疲れた」が口癖になり、このまま衰弱していくのではと不安に感じています。


話を聞いていくと、母親であるミツ子さんは低栄養の疑いがあると考えられました。
低栄養とはどのような状態なのか、どのようなリスクがあるのでしょうか。


低栄養のリスク

高齢になるほど低栄養のリスクは高まる

厚生労働省が公表した令和元年「国民健康・栄養調査」では、低栄養傾向にある65歳以上の高齢者は、男性12.4%、女性20.7%となっています。 85歳以上では、男性17.2%、女性27.9%となり、年齢が上がるにつれ低栄養のリスクが高まることが分かります。


低栄養の症状は主に体の変化

低栄養は以下のような症状がみられます。


  • ・ 体重の減少
  • ・ 筋力が低下する
  • ・ 免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすい
  • ・ 傷や褥瘡(じょくそう)が治りにくい、皮膚が炎症をおこしやすい
  • ・ 下半身や腹部がむくみやすい

その他、転倒やふらつきが増えることで骨折に至る場合もあり、多くの問題が表面化してきます。


低栄養を改善するには早期発見、早期対応がカギ

低栄養は自覚症状を認識しにくく、本人や周囲も気づかずに悪化していくことがあります。 全身が衰弱していくので、気付いたときには筋力や体力がかなり低下し、回復までに時間が掛かってしまうこともあります。 低栄養が疑われたら、早めに対応していく必要があります。

体重を測ったら46kgに

冒頭の相談者である息子さんに、ミツ子さんの状況を詳しく確認してみました。


  • ・ 起床時間が遅く、朝と昼の食事が一緒になっている
  • ・ 昼食は柔らかいカステラや菓子パンなどを食べている
  • ・ 免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすい
  • ・ お茶などをあまり飲まなくなった
  • ・ 体重が6ヶ月前に比べて4kg減っていた

最近は認知症?と思われるような「物忘れ」や「反応の鈍さ」もみられるので専門病院を受診した方がいいのか迷っているそうです。


専門家に相談する男性

ミツ子さんの状態が低栄養なのかも含め、まずは医療機関を受診しました。
低栄養は体重変化・BMI・血清アルブミン値を調べることで判断することができます。


体重変化

以下のいずれかに当てはまる場合は、低栄養が疑われます


  1. 体重が6ヶ月間に2~3kg減少した
  2. 1~6ヶ月間の体重減少率が3%以上※1

※1 体重減少率=(通常の体重-現在の体重)÷通常の体重×100


体重減少率別の低栄養リスクの表

ミツ子さんは(50kg-46kg)÷46kg×100となり、6ヶ月前の体重の減少率は8%でした。 「1」「2」ともに該当し、低栄養中リスクの状態です。


BMI

BMI※2とはBody Mass Indexの略で体格を示す指数のことです。 高齢期ではBMIが20以下の場合は低栄養のリスクが高まるため注意が必要です。
※2 BMI=「体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))」
ミツ子さんは身長が158cmなので「46kg÷(1.58m×1.58m)=18.4kg/m²」となります。BMIが20以下でしたので、低栄養のリスクが高い結果でした。


血清アルブミン値

血清アルブミン値※3とは血液中に含まれる主要なタンパク質で栄養状態の指標となり、3.8g/dl以下だと低栄養と判断されます。
※3 血中コレステロール値や血中ヘモグロビン値なども参考にする場合があります
ミツ子さんのアルブミン値は3.5g/dlで、基準以下でした。


ミツ子さんが低栄養になった原因は?

これらの結果を見て、医師からもミツ子さんは低栄養と判断されました。では、ミツ子さんはなぜ、低栄養に陥ったのでしょうか。


横になる高齢女性

食事回数の低下と摂取量の減少

ミツ子さんは起床時間が遅いため、朝食を摂っていませんでした。 昼食は菓子パンやカステラなどで済まし、夕食は息子さんがスーパーで購入したお惣菜やお弁当を食べていました。 1日2食となり、偏食・食事量低下から栄養・エネルギー不足となっていました。


対 策

ミツ子さんは息子さんの起床時間に合わせて起きることにしました。 息子さんの仕度した朝食を摂り、昼食は菓子パンでなくサンドイッチ、夕食は栄養バランスの良い配食サービスをしばらく利用することにしました。


義歯の不具合

ミツ子さんの食事内容を知る中で、噛む力が弱くなっていることに気づきました。 体重の減少から義歯が合わなくなり、ミツ子さんはうまく噛めなくなっていたのです。


対 策

すぐに歯科を受診し、義歯の調整をしてもらいました。


低栄養と同時に脱水も起こしていた

ミツ子さんはトイレが近くなるからと、水分を控えていました。 1日の摂取量を測ると平均800ml程度、食事から摂る水分も足りないことから、脱水状態であることがわかりました。 低栄養で見落としがちなのが水分不足で、同時にケアしていく必要があります。


水分の出入り表

対 策

ミツ子さんは1日に水分を1,500ml摂ることを目標としました。



低栄養改善に栄養補助食品を取り入れる

ミツ子さんの低栄養が改善するように様々な手立てを整えました。しかし、1回の食事量を急激に増やして短期間で改善していくのはなかなか困難です。


そんな時に役立つのがカロリーの高い栄養補助食品です。タンパク質などの必要な栄養素も含まれているので、補食として取り入れると改善効果を早めてくれます。
ミツ子さんの場合は、1日に2本の栄養補助飲料を食事とともに摂取し、食事量が増えてきたら1日1本に減らしていきました。


低栄養が改善すると、認知症のような症状も消失

ミツ子さんは相談当初、「物忘れ」や「反応の鈍さ」が見られましたが、その症状はなくなりました。 認知症と思われていた症状は、脱水と低栄養が原因だったのです。ぼんやり感がなくなり、顔つきもしっかりしてきました。


地域の介護予防教室にも月2回通うことになり、体力も徐々に回復している様子でした。ある日、友人と楽しそうに電話で話す様子を見て、息子さんは心底ホッとしたそうです。


「高齢者の食事で気を付けたいこと|低栄養」 まとめ

高齢者の低栄養は気づきにくく、症状が表面化したときにはかなり衰弱化し、そのまま介護が必要な状態に発展することもあります。 定期的に体重を測り、血液検査を受けたときにはアルブミン値を確認するなど、早期発見できるようにしていきましょう。
食事量が気になる場合は日常的に栄養補助食品を活用し、低栄養を予防していくのも良い方法です。


SONOSAKI LIFEでは、健康づくりに役立つ情報や介護の「お悩み」に寄り添う情報をお届けしております。他のコラムも是非、ご覧ください。

 記事監修 
  • 監修者写真
    若橋 綾
    株式会社DIGITALLIFE
    管理部
    介護支援専門員

     

  • 介護支援専門員や介護事業所の管理者として10年以上の現場経験があり、家族問題を抱える家族や虐待案件も含め様々なケースを担当。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、企業向けに介護離職予防を目的としたセミナーの開催や介護に関する記事作成を行うなど活躍は多岐にわたっている。