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認知症の症状を改善する 「噛む」食事

高齢になったからとやわらかいものばかり食べていないでしょうか。歯が悪い、あるいは「むせる」からといってお粥やペースト状(ミキサーなどで液状にしたもの)にした食事を食べていると、噛む力が低下していきます。 噛む力が衰えると、認知症の症状改善からも遠ざかり、低栄養や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)にもつながります。


噛む食事は低栄養を予防する

近年の研究で噛むことで脳内に刺激が伝わり、脳が活性化することがわかってきました。認知症であればしっかりと噛む食事を摂ることで脳の血流も良くなり、意識もしっかりしてきます。 噛んで食べる食事は、認知症の人にとって多くのメリットがあります。


1回の食事でどのくらい噛んでいる?

戦前は食事1回につき約1,400回噛み、食事時間は約20分程度だったのが、現代の食事は約600回で約11分と噛む回数や食事時間が少なくなっているそうです。
食事がさらにお粥やペースト状になれば、ほとんど噛まない食事となっていきます。噛まない食事は意識をぼんやりさせ、食べ物が気管支に入ってしまうことでむせることが増えてしまいます。


ごはんとおかゆの噛む回数の違い

お粥やペースト状の食事は低栄養になる

お粥を食べると考えたとき、おかずは何を思い浮かべるでしょうか。梅干し、漬物、鮭、菜っ葉類…と、あっさりになることが多いのではないでしょうか。お粥に天ぷら、お刺身、焼き肉ということはまずありません。
ミキサーなどでおかずをペースト状にする場合は、水分を多く含ませることになります。「かぼちゃの煮物」であれば、割と多くの水分を含ませないとペースト状にはなりません。水分を加える分、かぼちゃは減らすことになるため、エネルギーも栄養素も低下します。


ごはんとおかゆのカロリーの違い

食べ物は形状がやわらかく変化していくと、「量は食べているのに低栄養」となってしまいます。ふつうの食事をしっかり噛んで食べるということは、エネルギーや栄養を十分にとるために大切なこととなります。


食べて飲み込む、驚きの連動運動

普段の食事では、無意識に口を動かしてご飯などを食べていますが、「噛む」「飲み込む」などの一連の動きはとても繊細で複雑な動きをしています。1回の飲み込みまでの動作はどのような段階を踏んでいくのか、分解して考えてみましょう。

※ ここからはぜひ、飲み物と一緒に何かを食べながら読んでみてください。理解が深まります。


  • 🍙 噛み砕き

口に食物を含むと、舌や頬などを連動させて動かして奥歯に運び、噛み砕かれます。


  • 🍙 だ液とまぜる

噛み砕かれた食物は舌によってだ液と混ぜ合わせていきます。このときの舌の動きに注目です。舌はだ液を「舌の下」から汲み上げて、食物と混ぜ合わせているのです。


  • 🍙 飲み込みに適した塊に分けていく

飲み込みやすいように食物を、舌や頬を使って小さな食塊(しょっかい)に小分けにし、舌を丸めてのどの奥に運びます。


  • 🍙 食物が気道に入らないように嚥下反射を作動

飲み込むときは食物が誤って気道に入らないように、喉頭蓋(こうとうがい)が気管口を閉鎖します(同時に声帯も閉鎖されます)。そして、舌の付け根を上顎につけて食物のある場所を密封して飲み込みます。


正常な飲み込みと誤嚥の図解

飲み込む瞬間は呼吸をしない

食物を飲み込むまでの過程で驚きなのが、飲み込む直前に息を止めていることです。そしてゴクンと飲み込んだ後に、少し息を吐いているのです。 例えばビールを飲むときに「ゴクゴク」と息を止めて飲んでから、「プハァー」と大きく息を吐き出しています。つまり、飲み込むときは「息をすって→止めて→ゴクンと飲み込み→息を吐く」という呼吸リズムを繰り返しているのです。
呼吸は肺を中心に胸筋・背筋・腹筋も動員して行われます。食事中の1回の飲み込みは全身を使った協調運動ともいえます。 水分不足や低栄養などで意識がぼんやりしていると、この複雑な動きを十分に行えないことから誤って食べ物が気管や肺に入り、重篤な症状を引き起こすことがあります。


しっかり噛むことが誤嚥性肺炎を予防

食物や唾液が誤って気管に入ることを「誤嚥(ごえん)」といいます。誤嚥すると気管から出そうとする「せき反射」が働きますが、高齢者はこの機能の衰えから食物を出すことができない場合があります。 誤嚥したものが気管を通って肺に入り、食べ物や唾液に含まれる細菌が炎症を起こすと「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」となります。


誤嚥性肺炎の症状

このような症状がある場合は、早めに医療機関へ受診する必要があります。


  • ✅ 熱が出る
  • ✅ 激しくせき込む、黄色い痰がでる
  • ✅ 呼吸が苦しくなる
  • ✅ 肺雑音がする

誤嚥を防ぐためにも、しっかり噛んで飲み込みやすい食塊(しょっかい)に口の中で形成していく過程は重要となります。 認知症であれば水分をしっかり摂り、意識を良い状態に保ちながら食事ができるようにしましょう。歯や義歯に問題があれば、治療や調整をして噛める状態にしておくことも大切です。


噛む食事

認知症の症状を改善する「噛む」食事 まとめ

ふつうの食事を噛んで食べることで、脳も活性化します。「噛めば噛むほど味わいがでる」といわれるように、噛むことは味を感じるための必要な要素です。噛んで味わう食事は美味しく、生活も豊かに感じられるようになります。
食事は「視覚・味覚・触覚・嗅覚・聴覚」の5感で味わっているといいます。認知症の人にとってこの5感をフル活用する食事は、症状を改善させる欠かせない刺激となります。



 記事監修 
  • 監修者写真
    若橋 綾
    株式会社DIGITALLIFE
    管理部
    介護支援専門員

     

  • 介護支援専門員や介護事業所の管理者として10年以上の現場経験があり、家族問題を抱える家族や虐待案件も含め様々なケースを担当。
    現在は介護現場で培った経験を活かし、企業向けに介護離職予防を目的としたセミナーの開催や介護に関する記事作成を行うなど活躍は多岐にわたっている。